Dirty Hitとの出会い、日本のカルチャーへの共感—話は変わりますが、Dirty Hitと契約したきっかけについても知りたいです。サヤ:ジェイミー・オボーンとは、現在のマネージャーでもあるチェリッシュ・カヤ(Cherish Kaya)を通じて知り合いました。もともと、私はレーベルと契約することに対してあまり前向きではなかったんです。クリエイティブな自由を持ち続けることが難しいから。でも、ジェイミーは私と同じモラルを持っているように感じたんです。彼はとても誠実で、アーティストの考えを理解してくれる。現在のレーベルシステムの中で、彼のような存在は非常にレアだと思いますね。これまでの経験でトラウマがあったから、私自身が作品に対してコントロールを持ち続けるのは何よりも大切で、彼はそのことを本当に理解してくれた。
—レーベルの所属アーティストに対して、何か共感みたいなものを抱いていますか。サヤ:私がDirty Hitを好きな理由の一つでもあるのですが、どのアーティストもまったく異なる個性を持っている。例えば、エレクトロニックレーベルなんかは似たようなアーティストが多かったりもしますよね。でも、このレーベルのアーティストはみんな自分たちの主張があり、それぞれが放っている独自のカラーがある。
—リナ・サワヤマは今年のコーチェラに出演したとき、「自分がクィアの日本人で、イギリス人で、アジア人であることは誇り」とMCで話してました。サヤさんはご自身のルーツやアイデンティティについて、いま現在はどのように受け止めているのでしょう?サヤ:自分の中ではカナダ人という認識が強いんですが、私のルーツである日本について、もっと知りたいとも思っています。間違えるのが怖くて自分では話せないけど、日本語にも興味があります。家族と一緒に日本で過ごしたいし、レコーディングやパフォーマンスもしたい。今まで以上に日本のルーツについて向き合いたいと思っているんです。
Photo by Kazushi Toyota—日本のカルチャーについて、これまでどんな繋がりを感じてきましたか?サヤ:日本のファッションには絶対的な影響を受けてきました。ミニマルでありながら豊かな美しさ、技術と精神性が入り交ざった不完全な美しさがある。
—川久保玲、ISSEY MIYAKEがお好きだとか。サヤ:そうなんです。子供の頃に日本的なカルチャーのもとで育てられたから、西洋の文化より日本の文化が染みついているといってもいいかもしれない。武道や音楽にも見られる、そういった日本の美意識に共感しています。とにかく、いろんな面から影響を受けているんです。今すぐにでも日本に引っ越さないと!
—日本のアーティストでコラボレーションしたい人を挙げるとすれば?サヤ:まふまふ! 彼は全てセルフプロデュースしていて、音楽の作り方についても気になるところが本当にたくさんある。あまり表に出てこなくて謎めいているところも大好き!
—『19 MASTERS』はサヤさんにとって、一つのシーズンの終わりを意味する作品なのかなとも思いました。これからミュージシャンとして、どんなことをやっていきたいですか。サヤ:たしかに。あのアルバムを制作していたときの私はかなり辛い状況だったけど、今は違います。これから作る音楽やコラボレーションが本当に楽しみなんです。新しい音楽はきっとエネルギー溢れるものになると思う。セルフプロデュースは続けるけど、自分自身を追い込んで、どこまでいけるか試してみたい。いま作っている新曲では、自分とベースとの関係性をより意識しています。ベースの可能性についてもっと実験したいんですよね。
あとは音楽以外にも、服を作ったりしてみたいし、新しい楽器にトライしたり、他のアーティストのプロデュースにも興味がある。新しいフェーズを迎えることに、今はとてもワクワクしています。
Photo by Kazushi Toyota
サヤ・グレー
『19 MASTERS』
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