ポリフィアが明かす、スティーヴ・ヴァイらとの共演秘話「あらゆる音楽を網羅したかった」

 
「過去最高にポップな楽曲」の裏側

ーでは、ここからは楽曲単位で話を聞きたいのですが、まず「ABC feat. Sophia Black」はネット上でもバズっているようで、あなたたちの持ち曲の中でも過去最高にポップな楽曲であり、かなり振り切ってますよね。

ティム:まったくその通りだね(笑)。



ーポリフィアをまだ知らない人に届けたいんだ!という意図も感じましたが、いかがでしょう?

ティム:それができる曲であるのは間違いないよ。それと同時に評価が大きく分かれる曲だと思う。去年まで3年間LAに住んでいたんだけど、テキサスに帰ってきたんだ。帰る3カ月くらい前にTwitterで「あと3カ月でLAを離れるから、セッションしたかったら、今のうち」とマスツイートしたんだ、プロデューサーとか友人とか全員に対して。それから山ほどセッションをスケジューリングしたんだ。ソフィアはその話に乗ってくれたひとりで、そのうち1回のセッションに参加してくれた。スタジオに着いて、僕があの曲のリフを弾き始めたんだ。「ABC」のあのリフができたばかりだったから、彼女に弾いて聴かせて、一音ずつ歌ってほしいと頼んだ。そうしたら「あの速い部分は何音あるの?」と訊いてくるから、数えたら26音だった。「アルファベットみたい!」と言われて、それが歌詞の由来になったんだよ。

ーはははは、それは面白いですね。

ティム:「ポップな曲を作ろう!」という感じではなくて「曲を作ろう」という感じだったね。

ーそうだったんですね! 彼女は日本語のアルファベット(五十音のこと)も歌っていますよね?

ティム:そう! 彼女は日本人とのハーフなんだ。日本語も流暢だからね。意図的という部分で言えば、僕が以前「Lost Umbrella」という曲のTikTok動画を作ったことがあってね。日本のボーカロイドの曲なんだけどさ。あの雰囲気みたいにキュートなものを作ろう、という意図があったんだ。そして彼女には1音1音、歌ってほしかった。ボカロのプログラミングみたいにね。


ソフィア・ブラックとポリフィア

ー彼女が間奏で何を歌っているかご存じですか。MVではティムがちょうどギターソロを弾いているパートで、「イケメンじゃない?」みたいなことを言っていますが。

ティム:ああ、知ってるよ(笑)。ソフィア本人に訊いたからね。「何を歌ってるの?」ってね。彼女に説明してもらって、とてもクールだと思ったよ(笑)。ストーリーも筋が通っているからね。

ー10代の女の子が、恋している感じがよく出てます。

ティム:そうだよね。彼女は英語と日本語で話すときの声が全然違うのも興味深かった。レコーディングのときもスイッチを入れて、別人に早変わりしたような感じだったんだ。「すげえ!」と思ったよ。まるで声優のようだった。

ー女性シンガーとの共演という意味では、BABYMETALの「Brand New Day(Feat. Tim Henson and Scott LePage)」が頭を過ぎりました。

ティム:あれはあれで最高のコラボだったよ。僕たちはBABYMETALが大好きだからね。いつかまた一緒に組んで、何かやりたいと思っているよ。

ー期待してます! あと、個人的にラスト3曲(10、11、12曲目)における密度の濃い楽曲の並びには悶絶しました。まず10曲目「Chimera feat. Lil West」では「Playing God」同様にスパニッシュ風のアコースティックギターに加え、ジェント譲りのヘヴィリフを織り交ぜたミクスチャーぶりが非常にかっこ良く、中盤すぎにバイク音も入れていたりと、ストーリー性を持たせた展開が良かったです。

ティム:バイク音を使ったのは……転換場面で、あらゆる音を入れてみたいと思ったんだ。タイヤが地面にこすれるキキッ!とした音とか、エンジンが回転数を上げていく音とかを入れて、前半と後半がちゃんと繋がるようにしたんだ。スパニッシュ風のギターとメタル的なギターの組み合わせは……もともとスコットが送ってきたのはメタル・ギターだけの音だったんだ。ちなみに、確か最初の方にできた曲のひとつだったと思う。スコットが送ってきた音を車の中でガールフレンドと聴いていて、そこからジャムり始めたのを憶えているよ。でもメタル的なフレーズを全然思いつかなかったから、ちょっと試しにスパニッシュ風のものを弾いて、スコットに返したんだ。最初はドン引きしてたけどね、あまりに違うから。(笑)



ーははははは。スコットさんに最終的な楽曲の形には満足しているんですか?

スコット:もちろんさ! 僕たち全員コラボレーションが大好きなんだ。アーティストが何かコラボするとき……例えばドレイクが何かフィーチャリングをするときはいつもヤバイよね。アーティストたちがアルバムを一緒に作って、それぞれのスタイルが感じられる瞬間があるのが大好きなんだ。異なる世界の組み合わせみたいな感じだよね。とにかく素晴らしいよ。だから、今回僕たちがアルバムの中でやったことも毎回超楽しかったし、やっとみんなに聴かせることができるのはもっと楽しみなんだ。この曲もそうだよ。

ー「Chimera feat. Lil West」はまるで映画のサウンドトラックのように情景が浮かぶ曲調になっています。もともとあなたたちの楽曲は映像を換気させるアプローチが特徴的だと感じていたのですが、この楽曲ではそれをよりわかりやすく表現しているなと感じました。こういう感想を聞いて、どう思われますか?

ティム:ありがとう。素晴らしいね。そんなにクールなことを言ってくれるなんて嬉しいよ。

スコット:音楽を作る上で可視化を目指すプロセスは大事だと思うよ。

ティム:ただ、常にそれにフォーカスしているわけではないんだ。曲を作る方法はたくさんあるし、可視化を目指すのはその1つであることは確かだけどね。曲を書きながら「MVはどういう風にしよう?」なんて考えることもあるしね。

ーそして、11曲目「Bloodbath feat. Chino Moreno」ではデフトーンズのチノ・モレノ(Vo)を迎えています。デフトーンズも数多くいるヘヴィメタル/ニューメタル系バンドの中でも唯一無二のサウンドを作り上げているバンドです。その意味でもポリフィアとは絶対に相性がいいのはわかりますし、この楽曲も最高の仕上がりでした。やはりデフトーンズの音楽にはシンパシーを覚えるところがあるのでしょうか? 

ティム:実は僕たちは超メガファンというわけではないんだ。もちろん、チノとデフトーンズのことは心から尊敬しているよ。パイオニアだからね。チノみたいなレジェンドと仕事ができるなんて本当にクールなことだからさ。今回コラボできたのは、元マネージャーがチノの高校時代からの同級生か何かで、長い付き合いがあったんだ。数年前、まだ僕たちのキャリアが軌道に乗る前から、僕たちの名前はチノのアンテナに引っかかっていたみたいでね。それで今回勇気を出して「フィーチャリングしてくれませんか?」とお願いしたんだ。

ー元マネージャーさんがポリフィアの素晴らしさをチノに教えていたんですね?

ティム:僕たちの話をしてくれて、「今日チノに君たちの曲を聴かせたよ」、「チノにメールで君たちの曲を送った」と言ってくれたけど、チノがそのメールを読んだかどうか……そういう反応は耳に入ってこなかったんだ。僕たちが今のレーベル(Rise Records)と契約したときに、初めてきちんとチノを紹介されたんだ。それはいままでの伏線が役に立ったと思うよ。



ー実際に一緒に仕事をしてみてどうでした?

ティム:最高だったよ! スタジオに入ったとき、アーロン(・ジェニングス)を連れてきたんだ。曲を一緒に書こうと思ってね。通常は……チノがそうすることに対してオープンかどうか、僕たちにはわからなかった。でも彼はすごくオープンで、アーロンが書いたものをすべて気に入ってくれたんだ。今後もアーロンとまた一緒にやりたいと言っていたね。すごくクールだった。しかも人柄も素晴らしくてね。一緒にいられたのはほんの数時間で、確か1時くらいにスタジオに入って、4時には帰ってたよ(笑)。

Translated by Sachiko Yasue

 
 
 
 

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