milet×クーラ・シェイカー対談 「世界一好きなヒーロー」とサマソニの夢共演を振り返る

左からmilet、クリスピアン・ミルズ(クーラ・シェイカー) Photo by Kana Tarumi

サマーソニックでの共演も話題を集めた、miletとクリスピアン・ミルズ(クーラ・シェイカー)の対談がここに実現。日本で交流を深めた2人がたっぷり語り合った。

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miletはデビュー当初から、クーラ・シェイカー(Kula Shaker)の大ファンであることを公言。今年5月掲載のインタビューでも、サマーソニックについて尋ねると満面の笑みを浮かべ、憧れのバンドと同じ日・同じステージに立つことに興奮を抑えきれない様子だった。

ついに迎えた8月21日、MOUNTAIN STAGEに出演したmiletは、このあと登場するクーラ・シェイカーについて「世界一好きなバンド、絶対に観たほうがいい」とMCで力説。1995年にメジャーデビューしたベテランバンドのライブに、若い観客がたくさん詰めかけていたのは、この熱のこもったレコメンドも大きかったはずだ。そして、クーラ・シェイカーはデビュー作『K』から、代表曲の「Hey Dude」をいきなりプレイ。その後もサイケデリックなロックサウンドで盛り上げ、ラスト前の「Hush」でボルテージは最高潮に達した。



ここで中心人物のクリスピアン・ミルズが「最後に特別なゲストをステージに紹介したい」と告げると、miletがタンバリン片手に登場し、「Govinda」でデュエットが実現。「緊張と喜びに溢れすぎていた」というmiletがバンドとのパフォーマンスをやり遂げ、メンバーたちと抱擁を交わすと、フロア中が温かい拍手に包まれた。今回の共演はクーラ・シェイカー側からのオファーで実現したもの。愛を叫び続けたら想いは届くことが証明された瞬間でもあった。

この出会いを祝福すべく、Rolling Stone Japanは両者の対談を企画。サマソニ共演直後の幕張メッセにて撮影を行い、インタビューは9月下旬にZoomで収録した(以下のテキストは、2人が英語で話したのを翻訳・構成したもの)。「今もまだ夢の中にいるような感覚」と語るmiletと、憧れのヒーローの会話を余すことなくお伝えする。


Photo by Kana Tarumi


milet:その後、肋骨は大丈夫そうですか?

クリスピアン:そうそう、(来日前に)実は怪我をしていたんだ。徐々に回復していたんだけど、サマーソニックの2日目(東京公演)にまた折れてしまって。

milet:本当ですか!?

クリスピアン:「Tattva」のときにギターを大きくスウィングしたら、その勢いで地面に倒れてしまって。「このまましばらく寝転がってようかな」なんて思ったりもした。なんか演劇っぽいしさ。でも実際には、他のメンバーが心配しながら集まってしまった(笑)。まあ、ライブを盛り上げるうえで、多少の痛みはエンドルフィンが分泌されるからよかったのかもしれない。

milet:(笑)

クリスピアン:初日の大阪は、雨が降っていたよね。濡れた砂から湿気が空気中に広がっていて。あまりの湿気に、僕らは汗だくで死にそうだった。イギリス人にこの気候は耐えられない、次回はもっとトレーニングしてこなければと思ったよ(笑)。でも楽屋に戻ったら、日本のバンドが汗だくで青白い顔をしていて、それを見たら少し気が楽になった。僕らだけじゃないんだなって(笑)。ともあれ楽しかったよ!

milet:最初にお会いできた時は……もう現実の世界とは思えなかったです。とにかく何も考えられませんでした。ずっとあなたの大ファンで、毎日あなたの音楽を聴いてきたので。一緒に歌えたというのは本当にクレイジーな出来事でしたし、あまりにも緊張しすぎて、何が起こったのか覚えてないくらい。夢のような時間でした。終わってから現実に戻りましたが、(今こうして話しているのは)また夢を見ているような気分です。


クーラ・シェイカー×milet、サマーソニック2022にて

クリスピアン:僕は音楽を始めた頃から、他のミュージシャンたちと共演してみたかったんだ。ゲストとかフィーチャリングといった形で、クロスオーバーな共演ができる日を心待ちにしていた。でも実際は、プロになってからそこまで共演する機会がなくて、残念に思っていたんだ。ちなみに、最初にコラボしようと言ってきてくれたのはプロディジーだったね(1997年作『The Fat of the Land』収録の「Narayan」を共作)。

フェスティバルというのは、いろんなバンドやアーティストが同じ場所に集うわけだから、一緒に過ごすうえでも絶好のタイミングだよね。色々な国からやってきた人たちが出会い、お互いのステージで客演したりするのは素晴らしいことだと思う。僕らとしても、君とこうして出会えたのは嬉しかった。日本に戻ってきて、初めての人たちと新しい経験をすることができてよかったよ。サマーソニックに出演するのも初めてだったし、デュエットもしたことがなかったから。

milet:そんなふうに仰っていただけて嬉しいです。クーラ・シェイカーはみんなやさしくて、私を温かく迎えてくれましたよね。あまりにも親切だったので驚きました。

クリスピアン:ステージに立つ人間というのは、みんな仲間意識があると思う。お互いにリスペクトし合っているというか。人前に出るのは恐怖心を伴うものだから、普段の自分とは違う人間にならないとできないんだよ。ボビー・ギレスピー(プライマル・スクリーム:サマソニで同じ日に出演)のライブも観たけど、普段のボビーとステージ上のボビーはまったく違う。そうやって切り替えないとおかしくなってしまうから。

milet:そうですよね。


Photo by Kana Tarumi

クリスピアン:君はステージに上がるとき、興奮みたいなものを感じたりする?

milet:はい、感じます。あのときも超興奮しました!

クリスピアン:ときにはライブで盛り上がりすぎて、何が起きたのか全く覚えていないことがある。それが大事だったりするんだよね。その瞬間を感じ取り、今という瞬間をしっかり生きているからそうなるわけで。それって人生も一緒だよね。そんなふうにグラウンディング(地に足をついて「今ここにいる」のを感じること)できれば、いいパフォーマンスにもつながると思うんだ。

milet:私は(緊張すると)いつも目の前が暗くなってしまうんです。「Govinda」を一緒に歌わせていただくときにそうならないよう、自分の曲以上にすごく練習してステージに臨みました。今回は全くリハーサルがなかったから、すごく緊張しましたね。普段はイヤモニを着けているんですが、この日はイヤモニなしで、ステージにただ放り込まれた感じだったから、自分の声が全く聞こえなかったんです。でも、あなたの笑顔が目に入ってきたので「これで大丈夫なんだ」と思えて安心しました。

クリスピアン:君がステージに上がってきたとき、ドラムのポール(・ウィンターハート)のほうを見たら、彼は笑顔を浮かべていた。おそらくこう言いたかったんだと思う。「miletはきっと、こんなにデカい音のバンドで歌ったことないよね」って(笑)。僕らはギグをするとき、最初は節度のある音量で始めるんだけど、後半になってくるとだんだん音量が大きくなるんだ。あのときは最後の曲だったから、一番大きい音量になっていたんじゃないかな。嵐のなかに入ってくるような状況だったと思うよ。

milet:そうだったんですか(笑)。

クリスピアン:でも、あとでそのときの録音を聴いてみたんだけど、君の歌声は素晴らしかったよ。(オリジナルの「Govinda」と)違う雰囲気になって、とてもいいパフォーマンスだった。

milet:わー、よかった!

Translated by Hitomi Watase

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