milet×クーラ・シェイカー対談 「世界一好きなヒーロー」とサマソニの夢共演を振り返る

milet→クリスピアンの質問タイム

milet:私があなたの音楽と出会ったのは、小学生くらいだったと思います。いじめられたりして自分の人生がつまらなく思えてきて、やる気や意欲を失っていた時期があって。その頃、母がよくドライブに連れていってくれたんです。それである日、車のラジオからクーラ・シェイカーの「Hush」が流れてきて。「この曲なに、すごい、大好き!」と衝撃を受けたんです。それで帰宅してから、インターネットで検索して、YouTubeでビデオもチェックして……。

クリスピアン:(やさしい表情で微笑む)

milet:ライブも3回観たことがあります。そのときも(客席で)一緒に「Govinda」を歌ってました。大阪と東京のサマーソニックでも観たので、全部で5回ですね。



クリスピアン:miletは音楽的な趣向が幅広いよね。いつ頃から音楽を始めたの?

milet:18歳くらいのときですね。親友がギターを弾いていて、彼が弾き方を教えてくれたんです。それでギターをプレイするようになり、それから歌も歌い始めて。その前はフルートをずっとやってました。もともと父の影響でクラシック音楽は大好きでしたが、ロックはそんなに知らなかったんです。自分で歌うようになり、そこからロックも好きになったという感じですね。

クリスピアン:「Hush」がそういう音楽を好きになるきっかけになったのかな?

milet:そうだと思います、今まで歌ったことがないようなジャンルだったので。ある意味、クラシック以外で初めて聴いた音楽がクーラ・シェイカーだったんです。最初にクリスピアンさんの歌を聴いたときは、まるで魔法みたいでした。私を宇宙に連れていってくれる。その感覚がものすごく好きなんです。

クリスピアン:素敵なストーリーを共有してくれてありがとう。フルートといえば以前、ハリプラサド・チャウラシア(Hariprasad Chaurasia)というインドの素晴らしいフルート奏者と一緒にプレイしたことがある。2ndアルバムの『Peasants, Pigs & Astronauts』に参加してもらったんだ。あの作品には、インドの伝統的なフルート(バーンスリー)がたくさん入っている。

milet:そうでしたね!




クリスピアン:僕が最初に行ったインド音楽のコンサートがハリプラサド・チャウラシアだった。ステージの左右にタブラがあって、その真ん中にハリプラサドがいて、タブラがせめぎ合うのを縫うようにフルートを吹くんだ。とてつもないスピード感があった。僕の人生を変えてくれたライブの一つだね。

その話でいうと、イギリスのメディチ弦楽四重奏団が、ワジャハト・カーン(Wajahat Khan)というサロード奏者とコラボしたのを観たことがある。西洋のプレイヤーたちは椅子に座って、まるで地面に括り付けられているように映った。彼らは世界でも指折りのプレイヤーだけど、どこか固いんだよね。かたやインドのプレイヤーは、シルクを纏いながら流れるように動くんだ。ものすごく自由な感じがした。西洋のクラシック音楽は即興をあまり許さない世界だと思うけど、東洋のクラシック音楽は流動的で、生で体験するべきもののような気がする。ハリプラサド・チャウラシアも、機会があったらチェックしてみてほしい。

milet:聴いてみます!


Photo by Kana Tarumi

milet:実は今日のために、質問をたくさん用意してきたんです。Q&Aコーナーを始めてもいいですか?

クリスピアン:もちろん。

milet:あなたはロックスターでもあるのと同時に、映画監督でもありますよね。好きな映画は何ですか?

クリスピアン:僕が子供の頃に作られた、『バンデットQ』(原題:Time Bandits、1981年)という作品がある。ある小人のグループが人間の男の子を連れて、タイムトラベルしながら色々なものを奪っていくんだ。劇中ではナポレオンからロビン・フッドまで、いろんな有名人が登場する。『モンティ・パイソン』のコメディ・チームが脚本を書いていて(監督はテリー・ギリアム)、ジョージ・ハリスンが主題歌とプロデュースに携わっている。若いときに見て、それからずっと頭から離れないんだよね。全てが素晴らしい。



milet:チェックします! 次の質問です。いつも朝食は何を食べるんですか?

クリスピアン:ポリッジかな。

milet:イギリス人っぽいですね(笑)。

クリスピアン:そう、スコットランドのオートミールのお粥。それが僕の身体を作っているんだ。

milet:ポリッジだけですか?

クリスピアン:基本的にはそれだけだね。あとはコーヒーかな。

milet:紅茶ではなく、コーヒーなんですか?

クリスピアン:まずは朝、目覚めるのに紅茶を飲んで、ポリッジを食べて、それからコーヒーかな。それから動き始める。

milet:紅茶、ポリッジ、コーヒーですね。私もやってみます! では、好きな日本食は?

クリスピアン:(しばらく考え込んで)蕎麦かな。

milet:私も大好きです! あなたが最も恐れていることは?

クリスピアン:ロックダウンのあいだはライブができなかったから、数年間のブランクを挟んで、それからライブ活動を再開しようとなったときは、徐々に不安が沸き起こってきた。さっきも話したように、ステージに上がるのは恐れを伴うことだと僕は思っているから。一度ステージに立てば大丈夫になるんだけど、またしばらく時間が空いたりすると不安になってしまう。本番の1週間くらい前になると、神経が高ぶって眠れなくなるんだ。




Photo by Kana Tarumi

milet:イギリスで行くべきお勧めの場所はどこでしょう?

クリスピアン:都会と田舎、両方見るべきところがあると思う。もし都会が好きなら、ロンドン、グラスゴー、スコットランドには歴史的な場所がたくさんあるけど、個人的には田舎のほうが好きだな。クーラ・シェイカーの歴史を追いたいのであれば、グラストンベリーに行くべきだよ。僕らが演奏し始めたところだから。

milet:ぜひ行ってみたいです!

クリスピアン:グラストンベリーの歴史はとても興味深いんだよね。イングランド最古の宗教遺跡とか、1000年以上も昔から存在するものがいっぱいあるから。スピリチュアルなコミュニティが昔から盛んで、ヒッピーもたくさんいる。ベジタリアン向けのサモサやお寿司が買えるところもあるよ(笑)。グラストンベリー・フェスは、この街から5分くらいのところで開催されるんだ。他とはちょっと違う世界を見ることができると思う。

Translated by Hitomi Watase

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