ホット・チップが語る停滞期の克服、ビースティ・ボーイズとハリー・スタイルズへの共感

 
「リラックス&エンジョイ」な制作過程、長年の盟友とのコラボ

ー本作からの1stシングルになった「Down」はユニヴァーサル・トゥギャザーネス・バンドの「More Than Enough」を大々的にサンプリングしています。この曲の出来上がっていった過程は?

アレクシス:サンプリングに関してはジョーに訊いた方が詳しくわかると思うけど、僕が知る限り、彼がこの曲を見つけたのは、Numero Groupによるリイシューがきっかけだったと思うよ。彼がサンプリングをナイスなループに落とし込んだものを聴かせてくれたんだ。それを元に数時間で曲を書き上げて、ほぼワンテイクでレコーディングした。もしジョー以外のメンバーもオリジナルの曲を知っていたら、それに引っ張られて似たような曲になっていたかもしれないけれど、知らなかったから自由な発想でループを使えたんだろうね。




ーところで今回のレコーディングはアル・ドイルが新たに作ったバンド用のスタジオ、Relax And Enjoyで行われたそうですね。

アレクシス:すごくいいスタジオなんだ。結構な広さがあって、素晴らしいシンセサイザーもあるし、とても音のいいドラムやピアノもあって。僕はピアノで曲を書くことにとてもこだわりがあるから、このピアノで何曲も書いたよ。とても居心地のよい空間さ。だからこそ、アルはこのスタジオをRelax And Enjoyと名付けたんじゃないかな。このスタジオを訪れた人の誰もが心地良く音楽を作ってくれるようにって。

―スタジオ名がとてもチャーミングですよね。あなたは聞いたときにどう感じました?

アレクシス:アルバムのレコーディングが終わるまで、スタジオの名前は聞かされていなかったと思うな。単に“アルのスタジオ”って呼んでたと思う。レコーディングが終わって、印刷されたカクテルのメニューを見たときにそこに“Relax And Enjoy”と書いてあって、これがアルのめざしていたものなんだなって理解したよ。



―アルは、長らくLCDサウンドシステムのメンバーでもあります。LCDのジェームズ・マーフィーが創設に関わったDFAからホット・チップも初期の2作をリリースしたわけですが、2000年代前半を振り返ってみて、DFAはどんな点で重要なレーベルだったと思われますか?

アレクシス:DFAは、バラエティに富んだサウンドやバンドをリリースしていた。プロダクションの面でもパンクファンクみたいなアプローチのものから、カウベルを使ったものまでいろいろなものにトライしていたし、契約していたアーティストもデリア&ギャヴィンやブラック・ダイスのように興味深いバンドが多かった。そういう面で刺激的なレーベルだったと思う。僕たちもDFAのほかのバンドと一緒にツアーを回ったり、彼らとユニークなレコードをかけ合ったりいいしたんだ。そういうシーンと音楽を通して、友達と言える人たちと出会えたのはとても良かったよ。

ー今回の『Freakout/Release』には、ソウルワックスや元ニュー・ヤング・ポニー・クラブのロウ・ヘイターといった、ホット・チップの初期からの仲間が参加していることも古参のファンには嬉しいトピックです。まずソウルワックスについてですが、彼らのサウンドのどんなところに魅力を感じていますか?

アレクシス:ソウルワックスのミックスもプロダクションもどれも好きだけど、特に彼らはひとつのサウンドを際立たせることに長けていると思うんだ。ダンスミュージックにおけるミニマリズムを活かしつつ、そこに刺激的なパンチを加えるのが本当に上手だね。わかりやすい例を挙げるとするとマリー・デヴィッドソンの「Work It」のリミックスとか。レイヴっぽい雰囲気がありながら、すごくスマートでモダンな感じがするんだ。



―ソウルワックスは本作では「Down」と「Freakout/Release」の2曲にミックスやプロダクションでクレジットされています。特に後者はニュービートを彷彿とさせるエレクトロ・ソングで、まさにソウルワックスというサウンドに仕上がっていますね。

アレクシス:「Freakout/Release」に関して言えば、曲のほとんどは僕たちで作っていたから、そこに彼らが味つけしてくれた感じだね。一部をカットしたり並べ替えたりして綺麗に整えてくれたんだ。僕たちが持ってきたロックの要素に、上手にダンスをミックスしてまとめてくれた。

―ところでソウルワックスの手がけたウェット・レッグの「Too Late Now」のリミックスは聴きましたか?

アレクシス:(頷く)。DJするときはいつも必ずあのリミックスをかけているよ。すごく好きなんだ。とてもいいと思う。



―では、「Hard To Be Funky」にフィーチャーされたロウ・ヘイターについては、どういう理由でオファーしたのでしょう?

アレクシス:彼女が最近……去年だったかな。リリースしたアルバムの何曲かがとても好きで、よく聴いていたんだ。女性ボーカルがほしくて、楽しくコラボレーションできる人は誰かと考えていたとき、彼女のことが頭に浮かんでね。それで彼女に声をかけた。彼女はスタジオのそばに住んでいたから、朝連絡して、午後には来てもらって。余計なプロセスを踏むことなく、とてもスムーズだったよ。ちなみに「Eleanor」でドラムを叩いてくれているイゴール・カヴァレラは、たまたまスタジオに機材を取りに来ることになっていて、せっかくだからそのときに3曲ほど叩いてもらって、1曲を使うことになったんだよね。僕たちは正しい人たちを知っているし、彼らがやっていることがとても好きなんだ。

ーヘイターの歌声のどのような点が「Hard To Be Funky」にハマると思ったんですか?

アレクシス:チャス・ジャンケル(イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのメンバーであり、ソングライターとしては「Ai No Corrida」の作者として知られている)の「Glad To Know You」のサビで、高音の女性ボーカルが入っているんだけど、そんな感じを想定していたんだよ。ディスコによくある、冷たくてよそよそしいコーラスのイメージ。彼女にやってもらったらバッチリはまった。サビの後には、彼女のために朗読パートの歌詞を書き足したんだ。



Translated by Tomomi Hasegawa

 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE