ドリーム・シアター、2019年の秘蔵インタビュー「俺たちの音楽は今じゃ異端ではない」

歌詞のインスピレーション源

ーアルバムの音楽について話しましょう。最初に私が聴いたのは「Fall Into The Light」でしたが、初っ端からかなりアグレッシブですね。オープニングのインストゥルメンタル・パートはメタリカ風だったりします。

「Fall Into The Light」はアルバムに何曲かある、ギター・リフ主導の曲だよ。この曲は3つのパートから成り立っているんだ。ひとつめ、オープニングのリフは“G3”ツアーのバックステージで書いたものだった。メサ・ブギーのシグネチャー・アンプ(JP-2C)を最高にヘヴィな設定にして、あのリフが浮かんだんだ。iPhoneに録音して、“Eのクールなリフ”とタイトルを付けたよ(笑)。そこからメタリカっぽい曲調がひらめいた。続いて右手のピッキングを重視した速いリフがあって、3つめのパートは中間部のメロウな、オーケストラ風でメロディックな部分だ。その箇所は俺がアコースティック・ギターで、うちの地下室で書いたんだ。西部劇っぽい雰囲気があったから、“カウボーイ・セクション”と名付けていたよ。「 Fall Into The Light」はそんな3つのパートを俺がスタジオに持ってきて、バンド全員で曲の形にまとめたんだ。リフ主体のメタル・ナンバーだし、特に俺にとってはプレイするのがすごく楽しい曲だよ。

ーそれに対して「Barstool Warrior」はとてもメロディックで明るい調子の曲ですね。プログレッシブ・ロック的で、ほとんどポンプ(大仰)ロックに近い感じがします。

この曲ではドリーム・シアターが多大な影響を受けた英国プログレッシブ・ロックに敬意を表しているんだ。バンドが結成したとき、俺たちはメタリカやアイアン・メイデンなどが好きだったけど、イエスやピンク・フロイドみたいなバンドにもハマっていた。それにジョーダンがジェネシスとかのバンドからの影響を持ち込んできた。よりメロディックなそんな影響を取り入れて、俺たちなりにアプローチしたのがこの曲なんだよ。

ー歌詞はどんなところからインスピレーションを受けましたか? “バーストゥール(酒場の丸椅子)の戦士”とはどのような人ですか?

ああいうタイプの曲の場合、俺はピーター・ゲイブリエルのようにストーリーテリング的な手法で歌詞に取り組むんだ。まず曲が出来上がったところでボーカル・メロディに着手して、俺は酒場にいる男について歌い始めた。ギャグだったけど、「おっ、こういうのもアリじゃないか!」とも思えた。アルバムでこの歌詞だけはまったくのフィクションで、2人の無関係の人物を題材としている。1人は海沿いの小さな村に住むアルコール依存症で手に職のない男で、村から出ていかなかった言い訳を自分自身に対してし続けている。彼は同じ場所でくすぶっているけど、それが何故なのか判らないんだ。2人目は虐待を受けている女性で、やはり留まりながら、何故自分が出ていかないのか訝っている。この歌はそんな状況から抜け出ることの出来ない人たちを描いているんだ、そして最後に、そんな状況は一転することになる。イカレているみたいな言い方だけど、俺は仏教的な観点から物事を捉えているんだ。自分の考えること、感じること、信じること、夢見ることは、すべて現実たりえる。自分の置かれている環境に囚われる必要はないんだ。この歌の最後では、2人の主人公がそのことに気付くというポジティブなヒネリがある。数分しかない曲に詰め込むことが出来る歌詞には限界があるから、ほとんどソングライティングの挑戦といえるし、たまにこういう曲を書くのは楽しいよ。まあドリーム・シアターの場合、曲がかなり長いことも少なくないけどね。

ー『Distance Over Time』に伴うワールド・ツアーの最初の日程が発表されましたが、ドリーム・シアターの5作目のアルバム『Metropolis Part 2 : Scenes From A Memory』の20周年を記念するツアーでもあるそうですね。アルバムのライブ完全再現も行われるでしょうか?

ああ、そうするよ。「アン・イヴニング・ウイズ・ドリーム・シアター」と銘打って、新作からの曲と過去のアルバムからの曲を幾つかプレイして、それから『Scenes From A Memory』を全曲演奏するんだ。すごく楽しいライブになる。ストーリーテリングやいろんな面において、俺たちにとって重要なアルバムなんだ。俺たちの最初のコンセプト・アルバムということもあるしね。

Translated by Tomoyuki Yamazaki

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