音楽本特集第一弾、朝妻一郎が語る音楽にまつわる権利と日本のポピュラー音楽史

わすれたいのに / モコ・ビーバー・オリーブ

田家:モコ・ビーバー・オリーブは当時のニッポン放送の番組『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』で喋っていた3人でありました。この曲を選ばれているのは?

朝妻:そもそも『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』のプロデューサー自体は上野さんというニッポン放送の名物プロデューサーだった。

田家:ドン上野。

朝妻:その下に亀渕さんがアシスタントでついていて、あるとき「朝妻、『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』でやっているモコ・ビーバー・オリーブでレコード作れないかな」って言うんで、「亀ちゃん、女3人って言ったら、パリスシスターズよ」と。僕、フィル・スペクターが大好きなので、パリスシスターズという女の子3人で「I love how you love me」という曲をヒットさせていたことがすぐ思い浮かんで。でもよく詞を見たら、2人の恋が上手くいっている歌だった。で、日本でハッピーな恋の歌なんていうのは絶対当たらないよなと。どちらかと言うと失恋の方がいいなというので奥山侊伸さんという放送作家の方に悲しい歌にしてくださいよって言って、「わすれたいのに」の詞を書いてもらいました。

田家:この『高鳴る心の歌』は内容の方向が2つあるなと思ったんです。1つは音楽著作権、音楽出版権。洋楽がどういうふうにそういう権利を育ててきたのかとか、洋楽の勉強になる面と日本のアーティスト、日本の曲にまつわる話と2つの話があって。日本の話では加藤和彦さんと大滝詠一さんが何度も登場してます。

朝妻:加藤くんで1番大きかったのが僕に吉田拓郎さんを紹介してくれたことですよね。彼が「結婚しようよ」のレコーディングにほぼプロデューサーみたいな形で参加して、レコーディングが終わった後にすぐ僕のところに来て「朝妻さん、吉田拓郎って絶対売れますよ、「結婚しようよ」ってすごいいい曲ですよ」って教えてくれたり。その後で泉谷しげるさんの「春夏秋冬」も教えてくれたり。加藤くんからのインプットがなかったら、僕も今みたいになってなかったことは確かですよね。

田家:加藤さんのソロシングル「僕のおもちゃ箱」からアルバムの『僕のそばにおいでよ』とか、『スーパー・ガス』も朝妻さん?

朝妻:そうです。

田家:加藤さんの才能を今どう思われますか?

朝妻:音楽知識の他に演奏技術もすごいんです。12弦なんかの弾き方もすごいし、ビートルズの録音技術をいろいろ研究していました。

Rolling Stone Japan 編集部

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