ムーンチャイルドが語る、ひとりで音楽を作れる時代にコラボレーションから学んだこと

 
DJジャジー・ジェフからの大切な学び

―ラプソディに関してはどうですか?

アンバー:ラプソディとはダーラムのThe Art of Cool Festivalで会って。彼女は本当に優しくて以前からバンドのことを応援してくれていたんだけど、初めて会った時、ロビーの向こうから走ってきて盛大にハグしてくれて。本当に嬉しかったし、スタジオにも招待してくれて……あれ、私たちの曲をサンプリングした(2016年作『Crown』収録の「Fire」でムーンチャイルドの「Winter Breeze」をサンプリングしている)のってその時だった? その翌年?



マックス:翌年だったと思う。

アンバー:そうだ、それでその翌年に同じフェスに出演したんだけど、彼らがムーンチャイルドの曲をサンプリングして使ってて、それをスタジオに行って聴かせてもらって大興奮して。私たちはラプソディの大ファンだし、自分たちの声とコードとサウンドが大好きな誰かの曲で使われてるっていうのがとんでもなくすごいことだと思って。彼女とはずっと連絡を取っていて、今作ってる新しい音楽を聴かせてもらったり、コラボしようっていう話もいつもしていて。忙しくてなかなか実現しなかったけど、今回ついにそれが叶って。ラプソディについても全部好きだし、リリックも、テーマも、フローも、すごくクリエイティブで。ビートの選び方も、女性をエンパワーメントすることもね。というかJamla(ナインス・ワンダーのレーベル)の人たちはみんな最高。

アンドリス:本当に。ノースカロライナの彼らのスタジオに行くと、本物のファミリーっていう感じが伝わってくるんだよね。一歩スタジオに入ると、そこでは常に誰かがビートを作っている。それぞれの街ごとにシーンがあるけど、彼らもその土地で起こっている何かすごくクールなものの中心にいる感じがあるんだよ。自分たちがノースカロライナでライブをやる時にも、観客の中に本物の音楽好きがたくさんいるのを感じるというか、そういうカルチャーがあるのが感じられて面白いんだよね。

―ラプソディの『Eve』が歴史的に偉大な女性アーティストへの言及があるアルバムで、イル・カミーユも女性のアーティストをオマージュ、セレブレートするような曲を書いていますが、彼女たちに関しては、そういう部分での共感もあるわけですよね?

アンバー:もちろん!



―ではムームー・フレッシュについては?

アンバー:彼女とはPlaylist Retreatで会って……違う! その前だ。あるフェスに出演した時にグラミーのセミナーか何かがあって、そこに彼女もいて、私たちが入っていった途端に「ウソでしょ! 私はあなたたちの大ファン!」って言われて。その何年後かにPlaylist Retreatで再会して「ここで会うなんて信じられない!」と驚いて。そこで実際に友達になって、そのあとも連絡を取り合ってた。ムームーの声は本当に素晴らしくてフローも最高で、彼女みたいに完璧に歌ってラップできる人って滅多にいないし、唯一無二でパワフルで本当に特別だと思う。特に「Don’t Hurry Home」では、彼女がヴァースを書いていた時に私もそこにいたんだけど、笑ったり冗談を言いながらあの曲を遊び心があって楽しいものにしてくれて、それが本当に素晴らしかった。



―PLAYLIST RetreatはDJジャジー・ジェフ主催の企画で、キーファーやDJハリソンも参加していたようですが、どんなものなんですか?

アンドリス:僕にとってはミュージシャンとアーティスト向けの大人のサマーキャンプみたいなものだった。スーツケースを転がして到着してみたら、そこには自分のヒーローたちが勢揃いしていたという(笑)。それからたとえばDJだったり、違う分野の人たちと同じ環境に置かれるというのも面白くて、ボーカリストとホーン奏者とDJとドラマーといった感じでランダムにグループに分けられて、そのグループで1週間で何か作るといったことをしたり。コラボレーションについて多くのことを学んだね。

マックス:このリトリートは、超ハードなツアー・スケジュールをこなすミュージシャンのための休息という趣旨もあって、だからマッサージがあったり、すごくリラックスできる環境だったんだ。それにやっぱりすごいアーティストたちと話せたのはよかった。DJジャジー・ジェフはフィラデルフィア出身で、僕らはジル・スコットをはじめとするフィリーのレコードにすごく影響を受けているから、そういったレコードをプロデュースした人たちとカジュアルに接することができるっていうのが本当に刺激になったよ。

アンバー:それから公開トークみたいなものも結構あって、作曲やミキシングのパネルがあったりして。それをメモを取りながら聞いてて、ずっと聞いていたいくらい面白くて。あとキーボードの新機種とか新しいソフトウェアとか、あらゆる音楽関連の会社が来て新商品、新機材を説明してて。Serato Sampleのこともその時に知って、それ以来かなりの頻度で使ってる。でも私が一番いいと思ったのは、DJジャジー・ジェフが参加者を全員集めて、「ここにいる全員が理由があってここにいるから、まだ知らない人がいたら自己紹介して知り合った方がいい」って言ったこと。彼はいかにコラボレーションが重要かというのも語っていて、特にかなりのところまで1人でできてしまう時代だからこそ余計に大事だと。音楽はより多くの人が関わってお互いのアイデアを出し合うことでより良くなるんだってことを言っていた。私たちもグループ内ではその大事さを認識していたけれど、でも今作で他のミュージシャンたちとそれを経験できたことはすごくよかった。あと、これはこの業界にありがちだけど、横柄な態度で誰か有名人と仕事したことがなければ話もしてくれないっていうような人も珍しくないなかで、あんなにみんなが楽しそうで、「あなたは誰? 会えて嬉しい! 一緒にジャムろう!」みたいな愛に溢れた環境は本当にステキだった。



―では最後に、シャンテ・カンとジョシュ・ジョンソンについてお願いします。

アンドリス:確か3人とも、Jaspectsの「Find My Way To Love」を聴いて、出だしの彼女の声に心を奪われてしまったんだよ。

アンバー:まずネット上で交流していて、アトランタに行った時に彼女から「直接会おう」と連絡が来て。それでMoodsという店で会ってお互いに大好きだと言い合って、そのあと彼女が何度かLAに来た時もライブを観に行ったり遊んだり車でビデオ撮影したり、とにかく連絡はずっと取り合っていたの。

アンドリス:ジョシュ・ジョンソンはLA在住の素晴らしいサックス奏者で、LAの音楽シーンで出会ったんだよ。彼はモンク・インスティテュート出身で、あの辺のミュージシャンがBlue Waleっていうクラブでよくライブをやっていて、そこで知り合ったんだ。今作の終盤に楽器奏者が欲しいっていうのはみんな思っていたんだ。彼はホーン奏者であると同時にピアノも弾くしプロデュースもする人だからメロディックな傾向があって。この曲での彼の演奏は完璧だったよ。








ムーンチャイルド
『Starfruit』
発売中
日本盤ボーナストラック収録
※LPは4月22日発売
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12184


Translated by Akiko Nakamura

 
 
 
 

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