ガービッジのシャーリー・マンソンが語る男性優位社会との闘い、パティ・スミスからの学び

シャーリー・マンソン(Illustration by Mark Summers for Rolling Stone)

5年ぶりのニューアルバム『No Gods No Masters』を発表したガービッジのシャーリー・マンソンにインタビュー。「私は間違いもするし、周りを怒らせる。馬鹿なことも口走る。でも、最善を尽くそうと努力している」と語る彼女。男性優位社会との闘い、人種間の平等、今を生きること……これまで培った人生哲学を明かしてくれた。

1995年、ガービッジのセルフタイトルのデビューアルバムが一夜にして大ヒットするとほぼ同時に、ヴォーカルのシャーリー・マンソンは音楽業界が男社会であることを痛感した。彼女はバンドの中心的存在だったが――「Only Happy When It Rains」ではダークなエレクトロ・ロックで鬱への理解を熱唱し、「Queer」では社会になじめないことを誇らし気に歌っていた――ニルヴァーナの『Nevermind』をプロデュースしたブッチ・ヴィグをはじめ、男所帯のバンドで女性がフロントを張っていることに変わりはなかった。彼女はほどなく、グループでの自分の役割が軽んじられているように感じた。ともに仕事をするバンドメンバーからではなく、周りの連中から。

「音楽誌ではいろんなことを書かれたわ。それで気づいたの。自分がいかに軽んじられているか。男じゃなくて女だからという理由で、まるで相手にされないこともあったわ」と彼女は当時を振り返る。「弁護士から蔑ろにされたり、マネージャー陣から無視されたり。数え上げればきりがない。くだらないし、つまらないことよ。今更うだうだ言っても仕方がないけど、確かにあれではっきり悟ったわ」

そうした悟りに背中を押され、彼女は平等を訴えるようになり、たちまちフェミニストのアイコンとなった。そして自分の発言力を利用して、人権やメンタルヘルス、AIDS危機に世間の目を向けさせた。その間、彼女はガービッジで両性具有や生殖の権利をテーマにしたインクルーシブなヒット曲を書いた(「Sex Is Not the Enemy」)。秀逸なニューアルバム『No Gods No Masters』では、人種間の不平等、気候変動、男性優位社会、そして自尊心といった問題を扱っている。だが重たいテーマにもかかわらず、彼女はどの曲にも彼女らしい陽気さでアプローチしている。



「作品自体はシリアスだとは思わない」 5月初旬、54歳のシンガーは電話インタビューでこう語った。「憤怒に満ちた作品だとは思う。でも、怒りの中にもユーモアは盛り込めるでしょ。胸に秘めた優しさとか、思いやりとか、愛情とか。ただ、ふだん食卓で友達や家族と日常的に話していること以外のことを言ったら、うそになるような気がしたの。アーティストとして歳を重ねると、『どこまで本当の自分でいられるか?』というのが問題になる。本当の自分でいられるからこそ、最高に自分だけの物語が語れるわけだから。いろんなアイデアやら意見やらメロディやらであふれかえる業界では、本当の自分以外になってる場合じゃないわ。それじゃ長続きしないもの」

本物志向と自分に正直であること。こうした資質が現在のシャーリーを形づくった。そうした特性はローリングストーン誌のインタビューでも、哲学、人生教訓、衣食住といった質問に対する答えの道しるべとなったようだ。

Translated by Akiko Kato

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