精神障害・疾患は特別なことではない、求められる正しい認識

こうしたスティグマは、当事者だけでなくその家族にも矛先が向けられます。他の親族や仕事の同僚、地域住民などから家族が直接偏見を持たれたり排除されたりすることに加え、当事者家族が当事者の受けた差別や偏見に気づき、それによって苦しみ、悲しむということも生じます。また、時には当事者家族自身が周囲の影響から偏見や否定的な考え方を持ってしまう場合もあります。家族のスティグマは、当事者をケアする時間が長い、家族の負担感が多くストレスレベルが高い、支援がない、ことなどによって深刻さが増してしまいます。

こうしたスティグマを減少させるための方法は数々の研究によって提示されています。そのひとつは、学校の授業などで教育的に介入することです。これまでの精神保険福祉行政史を伝える、偏見の実態や、精神疾患に関する正しい知識を心理学的、生物医学的(脳のメカニズムなど)に学ぶ、実際に地域社会で暮らす精神障害者の話を直接聴く、そして精神障害・疾患は特別なことではないということを知ること、などが効果的であることがわかっています。

この「特別なことではない」ということに関して、1993年にトロントで始まった「マッド・プライド」という運動があります。もともと精神病歴のある人に対する差別への抗議の運動としてはじまり、精神的な病気に対する悪いイメージを取り払い、前向きなイメージに置き換えようとするユーモアも交えた運動なのですが、この運動は世界中に広まりを見せています。この運動の参加者の一人は「私たちは大小さまざまな問題を抱える他の人々と同じだ」と言っています。また、企画者たちは「今は身体の健康と同じようにメンタルヘルスについて語れる。つまり、うつや統合失調症が、がんや心臓病と同じように語れるようになった」、「精神病は私たちの生活で全ての人に関係する可能性がある」と語っています。

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