世界中で爆発的ヒット、オリヴィア・ロドリゴが異例のブレイクを果たした5つの理由

②歌詞の内容、実体験とゴシップ

少し先取りしてしまったが、「drivers license」の歌詞の内容に踏み込んでいこう。

「drivers license」は、別れた恋人への尽きない思いと、張り裂けそうな胸の痛みを歌っている。彼と話していた運転免許をついに取ったのに、車の助手席に彼はいない。彼は今、“私よりずっと年上”の“ブロンドの女の子と一緒にいる”。私は一人、郊外をドライブして思う。まだ彼のことを愛している……。

「drivers license」の歌詞についてよく言われるのが、オリヴィアが実際に体験した失恋をもとにしている、というもの。オリヴィアは前述の『ハイスクール・ミュージカル』で相手役を演じたジョシュア・バセットと付き合っていたのだが、ジョシュアは今サブリナ・カーペンターとデートしているらしい。このゴシップは、「drivers license」のリリースの2週間後にサブリナが「Skin」という曲を発表し、それが「drivers license」へのアンサーソングなのではないか、という憶測を生むところにまで発展している。




③誰もが共感できるユニバーサルなバラード

ただここまでのヒットを記録し、TikTokでもバズっていることを考えると、オリヴィアのストーリーなんて知らずに聴いているリスナーの方が多いはず。誰にでも心当たりがある、失恋についての歌。だからこそ、これほどの広がりを見せているのだろう。「drivers license」はバックグラウンドを知っていてもいなくても否応なしに心に響く、ユニバーサルなバラードだ。

たとえば、TikTokの動画やYouTubeのコメント欄では、「歌詞が響く」「私も同じ状況だ」など、リスナーがそれぞれのエピソードや思いを吐露している。そこでよく使われているのは、「痛み」「美しい」「感動」といった言葉だ。「drivers license」は痛みを美しく感動的に描ききったからこそ、大きな支持を得ている。

The Forty-Fiveのジェネッサ・ウィリアムズによる論考では、オリヴィアに熱心に入れ込むファンに取材をしているのが興味深い。同じ東南アジア系のオリヴィア(父方がフィリピン系)をできうる限りサポートしたいと語るマリアムというファンは、「私たちはみんな、誰かを失った経験がある。あるいは、自分の元から誰かが去っていった経験がある。その思いを反映できる『drivers license』は、ただの失恋の歌ではなく、別れの歌であり、先に進んでいくための歌なんです」と言う。「drivers license」が包み込む痛みは、なにも失恋に限らない。

「drivers license」のキーになっているのが、「運転免許」だというのも重要だ。つまりそれは、一人で生きていかなければならない大人への入口に立った、10代後半の不安定な心情や宙ぶらりんな状況を表すシンボルになっている。だからこそ、「運転免許」というアイテムは楽曲に強いリアリティと説得力を与え、聴き手を歌の世界へぐっと引き込む。

曲名にも注目してほしい。すべて小文字で、アポストロフィも省いた「drivers license」というタイトルは、ショートメッセージやソーシャルメディアの投稿のように見える字面だ。インターネットネイティブ世代にとって身近で、とても共有しやすい曲名だと思う。

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