My Hair is Badの今しか出せない「想い」と「記録」、その背景を3人が語る

久しぶりに、「ああ、ライブってこうだった」って思いました(椎木知仁)

─で、上越市高田城址公園球場でのライブは──。

椎木:みんなが配信ライブをやっていたり、いろんなことをする中で、僕ら、ライブ配信やってないし、サブスクもやってないし、ファンクラブもやってないし、ほんとにスッと止まっているような状況だったんですけど。

山田:SNSで何か言うくらいしかできなくて。

椎木:でも、生配信ライブっていうのも、自分たちの中でしっくりこなくて。どうしようか、って時に、上手に提案してもらったのが、この上越の球場のライブでした。「ライブ映像作品」っていう言い方が、すごくよかったかな、と、今になって思ってます。

─「配信ライブ」という呼び方じゃなくて。

椎木:はい。いろんな方の配信ライブとか観たりして。もちろん、家にいる中で、ライブ観れるだけで興奮したし、うれしかったんですけど……My Hair is Badがこれをやってる、って考えると、しっくりこないというか、違和感があって。だから、いい案を出してもらうまで、待ってたというか……なんなら僕、ちょっと前のめりになっちゃっていて、「ファンクラブ作った方がいいんじゃないか」とか、いろいろ言ってたんですけど、チームの人とか、メンバーが制してくれて。

山本・山田:(笑)。

─ふたりの方が冷静だったんですね。

椎木:そうですね。で、いちばんいいところに落ち着かせてくれた、っていう感じはしますね。

─そのアイデアがスタッフから出た時は、「あ、それ!」と3人とも乗っかれたというか。

椎木:しっくりきたっすね。

─あれ、撮影したのはいつ頃ですか?

椎木:10月の6日です。今までいつも、僕がセットリストを決めてたんですけど、今回はなんか……僕が決めると、すごく凝り固まって見える気がして。みんなに意見を出してもらって、僕はあんまり口出ししないで、ほぼ決めてもらったというか。ライブ映像を観て「もっと自然でいいのにな」と思った、その違和感を活かしてそうした、というか。セットリストとか、自分ひとりでやってても、これ以上ないんじゃないかと思ったっていうか、My Hair is Badが。

─あれを観て思ったんですが……たとえば、ライブハウスやホールで配信ライブをやっている現場に行ったことがあるんですけど、無観客でもステージ両側のスピーカーから音が出てるんですね、普段と同じように。でも、この高田球場はスピーカーがない、メンバーはイヤホンで音を聴いているけど、あの場ではバンド全体の音は鳴っていない、という。

椎木:はい。野外だし、田舎だし、あそこで爆音で鳴らすのは、たぶん無理だと思います。

─だから、あの場所でお客さんを入れてライブをやることは不可能である、実際にあの場で音はヘッドホンの中でしか鳴っていない、でも3人は当て振りとかじゃなくて本当にライブをやっている。というマジカルな感じが、観て「ああ、なるほど」と思ったんですね。

椎木:ああ、そうか。

─無観客の配信ライブだから普段のライブではできないことをやりたい、というので、普段なら撮れないカメラアングルとか、無人の客席に照明を置くとか、そういう演出上の工夫をしているのは、これまで観たことがあったんです。でも、無観客の配信ライブじゃなかったら、そもそもこの場所ではできない、というのは、既存の配信ライブとも、既存のライブ映像作品とも違う、新しいなあと思って。

山田:ああ。でも、意外とヒヤヒヤしながらやってましたけど、リハでは。ドラムだけめちゃめちゃ鳴るんで、生音が。近くに住宅があったり、高校があったりするから、リハの時はけっこう気にしてやってたんですけど。でも、本番が終わったら、社長に「リハより3倍ぐらい音でかかったで」って言われて(笑)。

─やっている最中はいかがでした?

椎木:久しぶりに、「ああ、ライブってこうだった」って思いました。野球場でやるのも初めてだし、お客さんいないのも初めてだったんですけど、本番日ってものを、半年以上過ごしてなかったので。何十回もやり通したセトリを、やっぱり本番っぽく演奏しちゃうというか。

山本:すごい楽しかったですね。久しぶりのライブだし、カメラも回ってるし、照明さんだったり音響さんだったりいるし、初めての場所だし、野外だし……僕、あんまり緊張しない方だったんですけど、久しぶりに緊張感があって。それも新鮮だったし、やっぱり音を合わせるのがバンドの楽しさだな、って再確認した感じで。

山田:僕は逆で、ライブは場所の大小にかかわらず、緊張しちゃうタイプなんですけど、この日はけっこうラフにやれたというか、あんまり緊張しなかったですね。がんがんライブやってた時期よりも、いいドラムを叩けたんじゃないかな、って思いました。ライブとしてはブランクあるし、最初は心配してたんですけど。

─椎木さんは楽しめました?

椎木:いや、前半はいっぱいいっぱいでした(笑)。最初は、「ああ、本番が始まってる!」って感じですかね。RECボタンを押してる感じというか。「うおおーっ」てなってましたね。

─MCでポロッと「こんなに集中するものなんだね、ライブって」と言ってましたよね。

椎木:すごい集中してたし、次の日めちゃくちゃ身体痛くて。頭を振るとか、日常的にまったくやらないから。ムチ打ちみたいになってましたね。

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