My Hair is Badの今しか出せない「想い」と「記録」、その背景を3人が語る

本当の意味で、新しいMy Hair is Badを垣間見たかな、と思える6曲になった(椎木知仁)

─新しい曲にしても、球場でのライブにしても、この時期を経なかったらこういうものはできなかった、というのはあります?

椎木:ありました。新しいMy Hair is Bad、新しいMy Hair is Bad、って毎リリースのたびに言ってるんですけど、ようやく、本当の意味で、新しいMy Hair is Badを垣間見たかな、と思える6曲になりました。それは、この時間があったからだし。この時間にいろいろ考えたことや、レコーディングでいろいろ新しいことを試したりしたことが、この6曲をよくしてくれたかな、と、思います。

─演奏も新しいものを求められたりした?

山本:そうですね。ベースに関して言えば、プリプロの段階で、エンジニアさんに入ってもらって。話し合って、自分に求められているものとの違いを毎回出していって……僕の音楽の知識よりも、エンジニアさんの知識の方が、広かったり、深かったりするので、そこでアイデアをもらったりできて。曲がどんどん変わっていく、ということは、ベースも変えてかなきゃいけないだろう、みたいな感じで。

山田:僕は、初めて打ち込みソフトを使ってドラム・アレンジを作ってみて。それによって、椎木のやりたいことを反映させられたかな、っていう。PCソフトで作ると、音だけじゃなくて、目で確認できるじゃないですか?

─ドラム・パターンを自分で打ち込むこと自体は、前からできた?

山田:いや、ほぼ初めてでしたね、こんなにしっかりやるのは。でもおもしろいのは、いつもは、頭で想像したドラムを叩いて、録って、聴いてみて、っていう感じだったんですけど、今回は想像をそのまま打ち込んで、聴いて、「あ、じゃあここをこうしたらどうなるんだろう?」って変えてみるとかが、簡単にできるので。だから、だいぶ細かくフレーズとかを調整できたんじゃないかなと思います。で、完成してから、それを生で叩いて録るという。

─で、やっぱり歌詞には、コロナ禍を経たことが、はっきりと表れていますよね。「白春夢」の「楽しいことがないか 退屈そうに話していた あの時間が楽しかったって いま気がついてしまったよ」とか。

椎木:「白春夢」は、今年中にリリースしないと、っていう曲ですね。久しぶりにこんな、ただ写真を撮っていく、みたいな歌詞の描写をしたような気がします。最近は、創作というか、赤裸々じゃないものを詞にする、というのが多かったんですけど、「白春夢」は、めちゃくちゃ久しぶりに、赤裸々でしかないっていうか。だから曲の最後も、思いっきり救われたりしないし、結局まだ夢の中にいて、起きたら部屋の中にいるっていう。これから、いつ聴いても、2020年の5月のことを思い出しちゃうだろうなあ、みたいな曲です。



─「心はずっと」も「子供になろう」も、そっち寄りですよね。

椎木:ああ、そうでしょうか……確かに、でも、そうかもしれないです。なんか、ラブソングを書こうと思って書いていた時期があったんですけど、特に恋愛もしてなかったので、なんか嘘くさいというか、全然心に響かないような曲になってしまって。そういう時に、スピリチュアルなことが好きな友達に、よく会う期間があって。それで話を訊いたり、いろんな本を借りたりしている時に、「今自分がいちばん素直に書ける曲ってなんだろう?」と思って、書いたのが、「心はずっと」ですね。

─ああ、だから「心はいつだってあるけど、身体はいつかは捨てるのさ!」というラインが。

椎木:そうですね。特にどの宗教が好きとか、そういうのはないんですけど。これはコロナ前、去年の11月ぐらいに書いた曲です。

─「子供になろう」は?

椎木:これも初期にデモを作ってた曲です。歌詞はコロナ後で、この6曲の中ではいちばん最後に書いた曲なんですけど。もう何書いたらいいのかわかんなくて、わがままな自分というか、本当の自分と冷静に向き合ったら、なんて書くかなあ、と思って、書ききった曲ですかね。

─コロナ禍という体験とは関係ない?

椎木:関係ないかなあ……でも、僕、コロナで誰にも会えない時期が終わってから……もともと人に会う性格なんですけど、たがが外れたみたいに人に会うようになって。そういう中でもらっているものも、多いと思います。とにかく人に会ってましたね。ひとりでいるのがしんどかったんで。だから、すごく人に会う1年だったなと思います。

─という話をきいていると、CDの『life』の3曲の方が自分寄りで、『love』の3曲の方は創作的な曲寄りなのかなあと。

椎木:そうですね。でも、『love』の3曲も、人に会ってるから書けたな、と思うフシもいっぱいあります。今年でもう29なんですけど、結婚した友達も多くて。ご夫婦両方と会う時もあるけど、ダンナだけと会って話してる時とか、「ああ、こういう気持ちなんだな」とか。自分が経験したことのないことをしてる友達から得たりすることも、すごく多かった1年でした。たとえば「味方」だったら……ケンカしたことないし、自分に自信があるわけでもないし、自分を過小評価してるような男の子が、好きな人ができたら、どうやって守るんだろう?って真剣に考えて。その子が歌ってくれたらいいな、そういう人の武器になったらいいな、って思って曲を書きました。

─「グッド・バッド・バイ」は?

椎木:昔、「運命」っていうシングルを出した時なんですけど、その時から、帰り道だけ切り取りたい、っていうのが、すごく強くあって。それを今回、こういうアップテンポな曲でやってみようかな、と思って。僕、帰り道の描写が、インディーズ・デビューの時からすごく多くて。校舎内にいるんじゃなくて、校舎を眺めてる画の方が、強く浮かんでいるので。なんでですかね? よく思い出しますね。無人駅があって、踏切があって、みたいな。

─で、「予感」はもう、物語のような。

椎木:そうですね。どっちもかわいそうに見えちゃいますけどね。この曲の男の人も女の人も。

─こういう曲は、創作として書くもの?

椎木:いや、もちろん自分の経験もありますけど、それをもっときれいにして書いてる感じですかね。「これがなきゃ書けなかった」みたいな経験が、活きてたりはします。

─それに向き合って曲にするのって、けっこう大変そうですけど。

椎木:そうっすね。なんか、初めてタバコ吸ってるみたいな。めっちゃ苦しいけど、なんか吸っちゃいたい、みたいな。きついけど書き出したらどんどん気持ちよくなっていく、みたいな。

─2021年はさいたまスーパーアリーナの振替の2デイズもありますが。全体にどんな活動にしたいと考えていますか。

椎木:今29で、もう20代終わっちゃうんですよ、僕ら。20代、ずっとMy Hair is Badやってたし、My Hair is Badに賭けてきたんで、いい意味で、走りきりたいなっていうか。集大成じゃないですけど、どうせ続くのはわかってるんですけど、20代らしく気張りたいなと思ってます。「20代でしか出せなかったな、あれ」って、あとで言えるような、これからにしたいなと思います。

【画像ギャラリー】My Hair is Bad(写真7点)

<INFORMATION>

【CDシングル】


『life』
1. 白春夢
2. 心はずっと
3. 子供になろう
¥1,100+税
UPCH-80549


【配信シングル】


『love』
1. 味方
2. グッド・バッド・バイ
3. 予感
iTunes、レコチョク、Apple Music、
LINE MUSIC、Spotifyなど音楽配信サイトで配信

「ブレイクホームランツアー」
2021年4月10日(土)、4月11日(日)
さいたまスーパーアリーナ 全席指定
開場・開演時刻未定

https://www.myhairisbad.com/

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