miletが赤裸々に語る「不安」との戦い、ファンの支えで再発見した自分らしさ

忘れられてしまうのが怖かった

―2曲目の「The Hardest」は「Who I Am」とは対照的に、鍵盤を基調にしたバラード。こういう曲調も、実はmiletさんにとって珍しい気がします。

milet:そうですね。「I Gotta Go」や「Tell me」みたいな曲はあるけど、バラードらしいバラードとなると本当になくて。だから、『七人の秘書』のためにバラードを作るとなったときは「どうしよう、ついに解禁か」みたいな(笑)。制作中に面白かったのが、一瞬だけ女優になったんですよ。どんなシーンで流れるのか脚本も見せてもらっていたので、この曲をスタジオで流しながら自分でも演じてみたんです。ただ、あまりにも演技に没頭しすぎて曲が全然聞こえてこなかった(笑)。

―それは見てみたかったです(笑)。

milet:あのときは何かが降臨していましたね。実際になりきることで物語を体感しながら作れたので、これは間違いなくドラマのシーンでも映えるだろうなって。そういう意味では自信のある曲です。



―“いつまでも私だけ夜のなか置いていかないで”といった歌詞については、ラブソングとも解釈できるのかもしれないけど、それよりは「夜の孤独」と戦っているのかなと思いましたが。

milet:うーん……。私としては、今年の上半期は「夜」だったなという感じ。さっきも話しましたけど、忘れられてしまうのが怖かったんですよ。ツアーも中止になってしまったし、不安な気持ちがすごく大きかった。そのうえ、いろんな人がいなくなったり、嫌なニュースもたくさんあったりして……この先どうなるんだろうって。私の大切な人たちも明日にはいなくなるんじゃないかとか、そういうのが容易に想像できる世界になってしまいましたよね。だから自分のなかでは、この世界からいなくなってしまった人たちに向けて歌っている曲で。

―そうでしたか。

milet:MVを撮影しているあいだも、この曲がずっと流れていたんです。そこで繰り返し聴きながら、私のなかで真っ先に思い浮かんだのは、もう会えなくなった人たちのこと。ラブソングとして聞けば相手は戻ってくる可能性があるかもしれないけど、そうじゃない聞き方をしたら……歌詞に「思い出」という言葉が何度も出てきますけど、本当に思い出すことしかできないんだなって。だけど、こうして歌にしたことで、そのときに思い浮かんだ人たちを聴くたびに蘇らせることができる。そのことは救いだなって。

―悩みは深かったですか。

milet:悩みというより、私の力では避けられないことがあまりにも多すぎて。自分の無力さを痛感させられましたね。今は歳も重ねて自立しているはずなのに、何も救うことができていない。そういう気持ちが比例するように大きくなって、ただ生きてる年数が増えているだけなのかなと思ったりもして。だけど、こうして歌えていることが……その気持ちを少しだけ払拭させてくれるというか。いつも誰かの希望になればいいなと思いながら歌っていますし、それが歌っている自分にも返ってくる。そういう意味では、この生き方を選んでよかったなと思います。

―前回、今年の春にインタビューしたとき「ツアーがなくなったのはショックだし、音楽以外にも悩みが色々あったので打ちのめされてしまって」と話していたから心配していたんです。でも最近は、テレビでお見かけしたときも元気そうに歌っていたから、吹っ切れることができたのかなと。

milet:そうですね。ツアーはできなくても、みんなと繋がる場所が少しずつ取り戻せているので。テレビ番組やドラマで私の歌を聴いてもらったり。10月からはFM802の「MUSIC FREAKS」でDJを担当させてもらっていて。もう本当に心配なんですよ、自分のことを覚えてもらえてるかなって。まだ駆け出しなのに、私はいつになったら初ツアーができるんだろうとか(苦笑)。だから、コネクトできる場所があるのは何よりありがたいですね。それを実感するたびに嬉しくて、この人たちのために歌いたいなって思うんです。

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