セックスワーカーがカマラ・ハリスに慎重な理由

2019年、ハリス議員は売春に対する立場を軟化させた

さらにハリス議員は、物議を醸した反性的人身売買法SESTA/FOSTA法の発起人の1人だった。SESTA/FOSTA法はWEBサイトのパブリッシャーにプラットフォーム上に掲載される売春広告の責任を与えることで、オンラインでの性的人身売買を取り締まることを目的としていた。だが、セックスワーカーたちはSESTA/FOSTAが逆効果だと訴え続けていた。同意のない売春の防止にはならない一方、同意の上で売春をしていた人々が街に出て客を拾わねばならなくなり、身を危険にさらす羽目になったという。具体的なデータはほとんどないが、SESTA/FOSTAが施行された結果セックスワーカーへの暴力が増加した、という調査結果もある。昨年、民主党のロー・カンナ下院議員(ペンシルベニア州)は、同法を細分化する法案の必要性を訴えた。

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SESTA/FOSTAで「みんな以前ほど安全ではなくなっています」とマックラッケン博士も言う。「まさに大打撃です。この州ではCOVID-19のせいで生計を立てられない人が大勢います――オンラインでコミュニケーションすることも、リソースをやり取りすることもままならないのです――SESTA/FOSTA法の直接的な影響だと考えざるを得ません」

2019年、ハリス議員はニュースサイトRootに対し、売春に対する立場を軟化させたと述べた。売春の非犯罪化を支持するかという質問に対し、「そうだと思います」と答えた。だがこの発言のあとに続いた内容を、一部のセックスワーカーは大きな警句と受け取った。サンフランシスコ地方検事時代の売春に対する見解について、ハリス議員はこう述べた。「私は当時、売春婦の逮捕をやめ、代わりに客やポン引きを取り締まるべきだと訴えていたのです……当時は売春に関与した男性や、売春で金儲けや搾取をしていた男性ではなく、女性が犯罪者として扱われていました」

この発言を聞いた一部のセックスワーカーは、彼女が支持しているのは完全な非犯罪化ではなく、部分的な非犯罪化だととらえている。いわゆる北欧モデル――多くの北欧諸国で採用されているためこう呼ばれる――は買春を犯罪とみなす一方、売春する側は訴追しないというアプローチだが、売春の完全な非犯罪化ではないと言われている。非犯罪化とは売春を職業として合法化すること。それによって医療や法的権利といった道が開けてくるというのだ。

Translated by Akiko Kato

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