米政府がTikTok使用禁止を検討、音楽関係者「最悪な状況になる」

トランプ政権が米国での使用禁止を検討しているというTikTok(Photo by Omar Marques/SOPA Images/LightRocket/Getty Images)


YouTubeとSpotifyはすでにこのプロセスに着手している。少なくとも理論上は、アーティストに大手レーベルの体制という正攻法をかわし、彼らが独占するヒットメイカーとしてのポジションを崩すためのサポートをしているのだ。だが、こうしたプラットフォームにも独自の“門番”がいるのも事実で、彼らは大手レーベルと密接につながっている。それに対するTikTokでは、十数人の無名のティーンエイジャーが翌日何かを投稿しただけで、翌週には初のヒットを生み出すことも可能だ。こうしたものの多くは“旧体制”によって飲み込まれてしまうが——カーティス・ウォーターズ、KINGMOSTWANTED、トリル・ライアンといった独立を保ち続けた例外的アーティストもいる——TikTokのボリューム、スピード、アクセシビリティは前代未聞である。

アクセシビリティが後退する一方、TikTokのない世界では、一時的にせよ一部のアーティストのポジションは相対的に向上するだろう。レーベルは(パンデミックが収束に向かうにつれて)、ピカピカの新品のおもちゃに飛びつく代わりに、突如として盤石なツアー経歴を持ちながらもデジタルに弱いグループに興味を示す可能性はある。TikTokではラップやアップテンポなダンスミュージックがほかのスタイルやジャンルと比べて人気だ。そのため、同アプリの終焉はバラードを得意とするシンガーやギタリストにとっては朗報かもしれない。

仮にTikTokが数週間、あるいは永遠に消え去ったとしても、米国における類似アプリのニーズは依然として高いだろう。Triller、Byte、InstagramのReel、Dubsmash、さらには我々がまだ知らない開発中の音楽アプリなど、音楽マーケティング担当は喜んで別のアプリを選ぶに違いないが、これらのポテンシャルについては消極的な意見も多く聞かれる。

それは、デジタルを得意とするマーケンティング担当の多くがTikTokのテクノロジーの右に出るものはいないと考えているからだ。このテクノロジーは、無名の人物を取り込んで瞬く間にブレイクさせるアルゴリズムに支えられている。何人かのマーケティング・スペシャリストは、TikTokと比べてほかの音楽アプリは楽曲を軽視していると考えている。TikTokは動画アプリを謳っているものの、実際は極めて優れた音楽発見マシンでもある。そのため、代替アプリがヒットメイカーになるには、まだまだ力不足なのだ。

TikTokに飢えた人々の代替アプリとして最有力なのは、Trillerかもしれない。実際、先日TikTokの使用が禁止されたインドでは、Trillerのダウンロード件数が急増した。だが、マーケティング担当は、どちらかというとTrillerが“トップダウン式”のアプリであると語る。企業とレーベルが協働しながら話題の動画を選ぶため、無名の新人が入る余地がないのだ。「Trillerはそこまで優れたプロダクトではありません」とあるデジタルマーケーティング担当は語った。

ほかの選択肢はどうだろう? 「Byteもそこまで優れたプロダクトではありません」と同じ担当者は言い添えた。「TikTokのライバルにあたるInstagramのReelには、ひょっとしたらチャンスがあるかもしれません」。しかし、Reelは限られた国でテストが始まったばかりだ。「少し前からDubsmashは話題にもなっていません」と彼は言うが、実際には新規ユーザーが増加している。

おそるべきアルゴリズムはさておき、TikTokの最大の強みは、単純にオーディエンスの規模と紐づいているところだ。同アプリは音楽リスナーのコミュニティを集約した(全世界のダウンロード件数は20億を超える)。これは、音楽業界がアグレッシブにターゲットとしている人々だ。米国がTikTokの使用を禁止しても代替アプリがすぐに登場する、あるいはそれが同じように機能する確証はない。音楽リスナーがさまざまなプラットフォームに分散されるような状況になると、さまざまなファン層にリーチするのにいまよりも根気とコストが必要になる。

「誰もが同じゴールを追いかけるでしょう」とあるマーケティング担当は言った。「実際、音楽ファンはどこに行くのでしょう?」

・急成長を遂げるTikTokの脅威、音楽配信サービスが直面する問題とは?



Translated by Shoko Natori

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