白人アクトが黒人を踏み台に ポップミュージックにおける「搾取と強奪」のシステム

1950年代に「ポップ=白人」のオーディエンス向けに、黒人アーティストによるシングル曲のカバーを数多く発表したパット・ブーン(Time Life Pictures/Pix Inc./The LIFE Picture Collection/Getty Images)


隔離と不平等に根ざした、ポップ音楽のマーケティング構造

1971年にブラックミュージックの市場規模に関するレポートが発表されると、各メジャーレーベルはより積極的に黒人アーティストと契約し始める。レーベル各社はこぞって、「ブラックミュージック」「アーバン」部門を立ち上げた。その役割について、Live Nation UrbanのInstagramアカウントにはこう記されている。「メジャーレーベルが軽視していたブラックミュージックのビジネスの一端が、黒人のエグゼクティブに任されるようになった」

しかし、メジャーレーベルにおけるブラックミュージック専門部署の誕生は、必ずしもポップとR&Bという人種に基づいた区別の見直しには結びつかなかった。CBSレコードも黒人アーティストと契約を交わし始めていたが、Dave Sanjekの『Tell Me Something I Don’t Already Know: The Harvard Report on Soul Music Revisited』にはこう記されている。「CBSの重役たちは、音楽を融合ではなく隔離の手段とみなしていた」

「(ソウルシンガーの)ジョニー・テイラーやタイロン・デイヴィスは、より大きく多様なファンベースを確立するためにCBSと契約を交わした」Sanjekの著書にはそう記されている。「しかし、レーベルは彼らが望むような規模の成功を視野には入れなかった」

それから数十年が経った現在でも、多くの黒人アーティストたちが同様の経験をしている。ストリーミングの主流化はメジャーレーベルにおける「ポップ」の定義をより困難にしたが、検索結果TikTokで曲がバイラルヒットするパターンは、エタ・ジェイムスとジョージア・ギブスのケースと同じだ。白人のBeneeやTrevor DanielがTikTokからポップ系ラジオへと一気にジャンプしたのに対し、リル・モジーやミーガン・ジー・スタリオンは「アーバン」「リズミック」と括られ、「ポップ」とみなされるには更にステップを踏むことを求められる。





リアーナ、ザ・ウィークエンド、ジェイソン・デルーロ等、かつて批評家のネルソン・ジョージが「ポップという特権階級」と呼んだステータスが与えられている黒人アーティストは、2020年の現在においてもごくわずかだ。ビヨンセ、トラヴィス・スコット、ケンドリック・ラマーといった世界トップクラスのスターたちでさえ、白人のライバルたちと同程度の成功を収めるには、彼らの何倍もの努力を重ね、「クロスオーバー」というハードルを越えなくてはならない。

「同じレーベルでも、黒人アーティストのマーケティングやプロモーション用の予算は限られます」名前を伏せることを条件に取材に応じた、あるA&Rはそう話す。「ラジオで曲を流すのには多くの金がかかるという理由で、黒人アーティストの要望ははぐらかされます。その一方で、まともなファンベースもストリーミング実績もない白人のアーティストに大きな予算が出る。レーベルはそういったアーティストと積極的に契約し、彼らが成功を収めるまで、ありとあらゆる投資を行います」

しかし多くの黒人アーティストたちは、「隔離と不平等に根ざしたマーケティング構造」にもかかわらず、大きな成功を収めることに成功している。Garofaloが記したように、彼らは「ポップミュージックにおける不平等に屈することなく」、自ら道を切り拓いていった。もし「ポップ」というシステムが存在しなければ、彼らが収めた成功の規模は計り知れなかったに違いない。

●音楽ジャンルと黒人差別、80年にわたる不平等の歴史

Translated by Masaaki Yoshida

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