白人アクトが黒人を踏み台に ポップミュージックにおける「搾取と強奪」のシステム

1950年代に「ポップ=白人」のオーディエンス向けに、黒人アーティストによるシングル曲のカバーを数多く発表したパット・ブーン(Time Life Pictures/Pix Inc./The LIFE Picture Collection/Getty Images)


1950年代〜今日まで続く「強奪」の具体例

70年代以前、メジャーレーベル各社は黒人アーティストによる音楽を軽視する傾向にあった。第二次世界大戦の最中、レコードの素材が不足した際に、レーベル各社が特定の音楽を優先したことは、業界のそういった姿勢をはっきりと示していた。「ブルース、ジャズ、ゴスペル等の専門的分野は予算が大幅に削られ、事実上メジャーレーベルから見放されてしまった」Garofaloのエッセイにはそう記されている。

黒人アーティストの音楽を再び扱うようになると、音楽業界は2つの戦略を用いた。ひとつ目は大胆なまでの盗用だ。1950年代、白人のアクトたちは黒人アーティストのシングル曲をカバーするようになった。ポップのリスナー、つまり白人のオーディエンスを獲得した彼らは、原曲の作曲者よりもはるかに多くの金を稼いだ。「カバーは原曲の人気が衰える前に発表されることが多く、より強固な流通チャネルとメジャーレーベルの宣伝力によって、原曲よりも大きな成功を収めるケースが珍しくなかった」Garofaloはそう記している。

この戦略を成立させるためには、黒人と白人のマーケットを切り離す必要があった。ファッツ・ドミノの「エイント・ザット・ア・シェイム」とパット・ブーンのカヴァーの両方を聴き比べることができていれば、後者を進んで選んだリスナーはほとんどいなかったはずだ。しかしメジャーレーベルは、誰がどのように「ポップ」のオーディエンスにリーチするのかを、ほぼ完全にコントロールしていた。レーベル各社はその仕組みによって、白人のアクトが黒人のアーティストを踏み台にして成功を収めるというパターンを確立した。

1950年代、エタ・ジェイムスの「ウォールフラワー」は40万枚を売り上げたが、白人シンガーのジョージア・ギブスによるカヴァーのセールスは100万枚を超えた。同じ曲であっても、歌い手とリスナーの大半が黒人であればR&B、シンガーとオーディエンスが白人であればポップに分類されるというこの構造は、今では業界の隅々にまで浸透している。ビージーズの「恋のナイト・フィーヴァー」、マドンナの「ラッキー・スター」、アデルの「ルーマー・ハズ・イット」、ポスト・マローンの「ロックスター」等はすべてR&Bまたはヒップホップのフォーマットに沿っているが、ギブスのシングルがそうだったように、シンガーの肌の色を理由に「ポップ」に分類されている。



ごく最近のケースでは、ミーガン・ジー・スタリオンの自作ミームから派生した大ヒットシングル「ホット・ガール・サマー」は、ラジオでは「アーバン」に分類されていた。一方で、白人シンガーのブラックベアーによる同曲のパロディ「ホット・ガール・バマー」は、ポップ系ラジオ局でヘヴィローテーションされた。先週の統計では、後者が93万にリーチして「ポップ」チャートで1位となったのに対し、前者は36万人にリーチして「アーバン」チャートのトップに立った。結果として、アメリカ国内における「ホット・ガール・バマー」のストリーミング再生回数は、「ホット・ガール・サマー」より約1億6000万回多くなっている。




ブラックミュージックをサポートすることなく利益を上げようとするメジャーレーベルの思惑は、流通契約にも顕著に表れていた。これによって、黒人のアーティストが「ポップ」のオーディエンスを獲得したケースは存在する。最も顕著な例としては、クライブ・デイヴィス率いるCBS Recordsと、Gamble & HuffのPhiladelphia International Recordsのパートナーシップが挙げられる。両者の関係は、ビリー・ポールの「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」、オージェイズの「ラブ・トレイン」、ハロルド・メルヴィン・アンド・ザ・ブルー・ノーツの「ウェイク・アップ・エヴリバディ」等、70年代初頭にソウルの名曲の数々を世に送り出した。



しかし、こういった流通契約を交わしたメジャーレーベルはブラックミュージックというアートを軽視し、時には文化そのものを強奪した。Garofaloのエッセイでは、有名R&Bアクトを多数抱えていたインディー時代のAtlantic Recordsを率いたアーメット・アーティガンが、Columbia Recordsのエグゼクティブとの会話について振り返っている。

「その人物はColumbiaがAtlantic Recordsと取引する理由について、私たちが『人種的な』レコードを作る術に長けているからだと言った」アーティガンはそう述べている。「先方のオファー内容について訊くと、彼はこう答えた。『3パーセントだ』。それは私たちがアーティストに支払う分以下だと伝えると、彼はこう言った。『君は彼ら(those people)に印税を払っているのか? どうかしてるよ!』とね。実際には、その人物は『彼ら(people)』ではなく他の言葉を使った」

Translated by Masaaki Yoshida

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