「フォートナイト」とエピック・ゲームズから音楽業界が学ぶべきこと

音楽ビジネスは、かつてない規模で「フォートナイト」との邂逅を果たした(Rolling Stone)



・エピック・ゲームズ・ストアの手数料は販売額の12パーセント

2018年12月、エピックは自社タイトルとサードパーティーの製品の両方を販売するデジタルゲームストアを開設した。エピック・ゲームズ・ストアのローンチは、ワシントンに拠点を置くValveによるデジタルPCゲーム販売の最大手、Steamに対する宣戦布告だった。

コンテンツ開発から販売へとシフトした同社の戦略における最大のポイントは、デベロッパーを含むビデオゲーム界のアーティストたちを支援しようとする姿勢だ。エピック・ゲームズ・ストアでは、同社に支払われる手数料が販売額の12パーセントにとどめられている。手数料を30パーセントとしているStreamを含む大半のストアは、それを自分達に対する挑戦だと受け取ったに違いない。

エピック・ゲームズ・ストアはそれ以来、格安な手数料に惹かれた多数の主要デベロッパーたちによるPCゲームの独占販売権を勝ち取ってきた。エピックがフォートナイトを含む自社の全主要タイトルをSteamから取り下げたことも手伝い、同ストアのシェアは急激に低下した。

ビデオゲーム業界において、これはまさに地殻変動というべき出来事だった。音楽業界に例えるならば、ユニバーサル・ミュージック・グループがSpotifyおよびPandoraに対抗するサービスを立ち上げるために、自社タイトルをすべて各プラットフォームから取り下げ、より有利な利益率を条件に、その他のレーベルに作品を同社のサービスに移すよう持ちかけるようなものだ。

音楽業界がここから学ぶべき最大のポイントは、おそらく技術的なスケーリングだろう。手数料を低く設定しながらも、エピックは同ストアのビジネスモデルについて、手間や諸経費を抑えつつ、テクノロジーを主体としたプラットフォームにすることで利益を上げているとしている。昨年だけで1億800万人のPCユーザーが利用し、6億8000万ドルの売上を達成した同ストアの躍進ぶりは、コンテンツ提供者たち(そこには当然エピック自体も含まれる)により有利な条件を提示するよう、その他の販売店にプレッシャーを与えている。

昨年4月、エピックのCEOを務めるティム・スウィーニーはこう話している。「Steamが販売額の88パーセントを全デベロッパーやパブリッシャーに無条件で渡すなら、エピックは独占販売という戦略を撤回するつもりだ。またその際には、Steamでの当社のゲーム販売再開についても検討する」

これは警告だ、と言わんばかりだ。


・インフルエンサーを用いたエピックの戦略

音楽業界が参考にすべきエピック・ゲームズ・ストアのもうひとつの特徴、それはインフルエンサーたちとの強い結びつきだ。ブロガーやYouTuber、あるいはTwitchでライブストリーミングを実施しているユーザーたちは、消費者たちにゲームの魅力を伝えて購入させることに成功した場合、エピック・ゲームズ・ストアから報酬を受け取れる仕組みとなっている。 エピック公認のインフルエンサー(Creatorと呼ばれる)は、あらゆるゲームへの紹介リンクをシェアすることで、同プラットフォームでの売上の最低でも5パーセントを受け取ることができる。

音楽業界で同じことをやるとしたらどうだろうか。現在各レーベルは、楽曲のストリーミングサービスでの公開に先駆けて、チャートを駆け上がるための原動力として定着しつつあるTikTokでのヒットを狙うという戦略を実施している。しかしTikTokの主要インフルエンサーたちの協力を得るためには、レーベルが事前に報酬を支払わねばならないケースが多い。Bytedanceによる同プラットフォームの人気コンテンツクリエイターたちは、自分たちが原動力となってヒットした楽曲のストリーミングによる利益を受け取るべきではないだろうか?

マーケティングの天才でもあるドレイクは最近、Instagramで名を馳せたアトランタに拠点を置くダンサー、Toosieをミュージックビデオに起用した「Toosie Slide」を世界中で大ヒットさせた。Toosieはその報酬を受け取ったのだろうか? だとすれば、どういった形で受け取ったのか? 「左足を上げ、右足をスライド」というあのダンスが生んだ利益を、彼はエピック・ゲームズ・ストアのような仕組みに基づいて受け取っているべきではないか?




・Unreal Engineのビジネスモデル

人気ゲームはどのようにして生まれるのだろうか? クリエイティブな人々によるスタジオ作業の成果であることは確かだが、彼らは皆同じツールを使ってアートを生み出しているのだろうか? 答えはイエスだ。

デモ作りに重宝するAppleのGarageBandであれ、より高度なインターフェースを擁するAbleton LiveやLogic Proであれ、チャートに登場している曲はそういったソフトウェアを用いて作られているが、それらは多額の事前投資を必要とする場合が多い。だがもし、3000ドル以上の利益を生んだ楽曲の著作権収入の5パーセントをデベロッパーに支払うことを条件に、こういったソフトが無料で利用できるとしたら?

それこそがエピックのUnreal Engineのビジネスモデルだ。フォートナイトやGears of Warといったエピックの代表作のみならず、ボーダーランズ3やバットマン:アーカムシリーズ等、サードパーティによる大ヒット作の数々も、このUnreal Engineから生まれている。同エンジンは2015年以来、3000ドル以上の収益を上げない限り無料というビジネスモデルを継続しており、一文無しのデベロッパーでも利用することができる。

収益の一部を収めることを条件に、他者の楽曲の一部を使用するサンプリングという概念は、音楽業界における類似例だと思われるかもしれない。しかし、主要な音楽制作ツールのデベロッパーたちがUnrealのビジネスモデルに倣った場合、業界におけるパワーバランスは一夜のうちに大きく変動するだろう。(この点を考慮した上で、AppleがGarageBandとLogic Proを保有していること、そしてSpotifyが2017年に「オンライン・レコーディングスタジオ」と銘打たれたSoundtrapを買収していることに言及しておく)

エピックの戦略の優れた点は他にもある。Unreal Engineを用いて作られたゲームをエピック・ゲームズ・ストアで販売する場合、同社はライセンス料の5パーセントを放棄している。デベロッパーたちにエピック・ゲームズ・ストアを選択させるためのこの戦略は、非常に巧みだといえる。

Translated by Masaaki Yoshida

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