社会に蔓延する、人々の思考と感情を奪いかねないダブルバインド

気をつけたいのは、昨今の社会状況と、政府から出されるさまざまなメッセージが(「自粛を要請」「給付・補償はしない」など)、人々にとってダブルバインドのようになっている可能性があることです。ダブルバインドに対処するには、自分と相手を客観的に、冷静に把握し観察することが大切です。自分の状況を客観的に把握するためには、他の信頼できる誰かに相談することが有効でしょう。

そして何よりも「自分の感情を大切にする」ことです。ダブルバインドを受け続けると、思考停止するのと同時に、感情が麻痺してしまったり、「このくらいで怒ってはいけない」「つらいけれど自分が悪いのだ」という錯覚に陥ってしまったりすることがあります。怒りや悲しみを表すことは決して悪いことではありません。中には、人が怒っていたり悲しんでいたりする様子を見ること自体が苦手だという人もいるかもしれません。また、怒りや悲しみによって、むやみに他人を攻撃するようなことになってしまってはいけません。しかし、自分が怒っていて、悲しんでいる、ということを誰かに伝えることは、前回の記事の冒頭で書いた「個人の尊厳」と「内面の自由」を守るためにも、とても大切なことなのです。

参照

KOHHとワンオクが歌う「見えない抑圧」 大谷ノブ彦×柴那典放談
CINRA.NET 2019/06/21:https://www.cinra.net/interview/201906-otanishiba2




<書籍情報>




手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/


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