社会に蔓延する、人々の思考と感情を奪いかねないダブルバインド

具体的な例では、親が子どもに「あなたを愛しているよ、おいで」と言って呼んでおきながら、子どもが近付いてくると突き飛ばしてしまったり、体を堅くして身構えてしまったりするようなことです。子どもにとってこれは、最初は言語のメッセージで、次が非言語のメッセージになるため、その矛盾に気付きにくいということもあります。そして、同じように呼ばれてそれを無視したら叱られてしまい、結局どちらを選んでも否定されるという矛盾に陥ります。少し違うパターンでは、子どもの進学に熱心な親が「自分の進路は自由に自分で決めなさい」と言ったのに、いざ子どもが行きたい学校を言うと「偏差値が低すぎる」などと言ってしまうような例です。

ONE OK ROCKに「Stand Out Fit In」という曲があります。基本的にはマイノリティが自分自身を肯定するというストーリーの歌ですが、その歌詞では「狙いは高く、でも打ち抜くのは低く」「たくさん食べて、でも痩せた身体をキープしろ」「自分らしくあれ、でもキレイに着飾れ」などと歌われていて、ダブルバインドを表現していると音楽ジャーナリストの柴那典さんは指摘しています。



こうしたダブルバインドを受けてしまうと、様々な問題が生じてしまいます。そのひとつが、「思考停止するようになる」ということです。相反する指示命令を受け続けることによって、何を信じたらよいのか、どうすべきなのかわからなくなり、考えることをやめてしまうのです。児童虐待やDV、パワハラなどの被害者にも同様のことが生じている場合があります。

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