殺されたセックス・セラピスト、ハリウッドの光と影に翻弄された人生

生前のエイミー・ハーウィックさん(Photo by Robert Coshland)



恋愛とセックス専門のセラピーに方向転換

この間、エイミーさんは別の人間からも標的にされていた。悪名高いゴシップサイトには、数年おきに身元不明の投稿者による心無い投稿が寄せられた。長期出張の前に、猫のマルキを預かってくれないか、と友人のチャベス氏に頼んだこともあった。留守中に誰かが侵入して「猫に何かするんじゃないか」と恐れていたのだ。嫌がらせの犯人を突き止めることはできなかった。彼女はパースハウスを疑っていたが、それと同時に、昔の女友だちのことも疑っていた。その友人は以前にも嫌がらせメッセージを携帯やPCメールに送り付けていたので、彼女が犯人の可能性もあった(ハーウィックさんは2015年、この人物に対する接近禁止命令を請求している)。

なんとも皮肉だが、こうした嫌がらせのおかげで、彼女はセックスや恋愛専門のセラピストという天職へたどり着いた。彼女はもともと家族専門のカウンセラーを目指していたが、少年犯罪の少年を担当していた時、何者かが彼女のモデル時代のヌード写真を雇い主に送り付けたため、彼女は職を失った。「昔のヌード写真が原因で解雇されるなんて無意味でばからしい、と彼女は感じていました」とコシュランド氏。

この時の経験から、ハーウィックさんは恋愛とセックス専門のセラピーに方向転換する。セックスワーカーや変わった嗜好の人々、一夫一妻制になじめない人々など、とくに性的にマイノリティな人々の治療にやりがいを見出していった。そのため彼女は、精神医療の現場でも稀有な存在となった。大勢のセックスワーカーが、自分たちを職業で批判したり、足を洗えと説得したりしない精神科医を見つけるのにひと苦労していたからだ。「風俗業界の人間が、社会的批判を受けずに精神医療の助けを得ることは本当に難しいんです」と言うのはグスタヴォ・ターナー氏。風俗業界専門情報サイトXbizの記者で、ハーウィックさんとは個人的も親しかった。元ゴス系で、ボンデージSMや変態カルチャーの友人も多かったハーウィックさんには、「性的マイノリティの人々のために立ち上がる」特殊な資質があった、とチャベス氏は言う。事件当時、彼女はちょうど風俗に好意的な精神医療従事者による団体Pineapple Supportで活動を始めたところだった。同団体は風俗業界で自殺者が相次いだのをうけ、2017年後半に設立された。

そこでの活動に加え、ハーウィックさんはウェストハリウッドで個人カウンセリングも行なっていた。クライアントの中にはモデルのエミリー・シアーズ氏もいた。偶然だが、彼女も10ほど年前に、付き合っていた恋人から暴力を振るわれるという恐ろしい経験をしている。当時シアーズ氏は、ハーウィックさんもDVの経験者だとは知らなかった。担当セラピストのハーウィックさんが一切口にしなかったからだ。だが、ハーウィックさんの個人的な経験は患者への接し方にはっきり表れていた。シアーズ氏は彼女について、プロに徹していて、優しく、相手の身になってくれた、と語る。「昔あったことへの恐怖、それがまた繰り返されるんじゃないかという恐怖を乗り越えられるよう、彼女が力になってくれました」


ロバート・コシュランド氏とエイミー・ハーウィックさん(Courtesy of Robert Coshland)

Translated by Akiko Kato

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