動物性食品を食べないライフスタイル「ヴィーガン」と音楽カルチャー

ヴィーガンになる人はどのような入口の人が多いのか?

ーAIN SOPH.を辞めて、2018年1月から株式会社みんなのごはんのディレクターを務めましたが、そこではどういう仕事を手がけましたか?

山口:僕はもう今は辞めてしまいましたが、友達と立ち上げたベンチャーの会社です。主に企業向けのヴィーガンのレシピ開発やコンサルティングをする会社です。そこではJALの機内食のヴィーガン・ミールのメニュー開発を手がけました。あとは、SHARP ヘルシオの宅配ミールキット・ヴィーガン・メニューの開発、DENSOの社食のヴィーガン・メニュー開発、BOTANIST cafeのヴィーガン・メニュー開発、広尾のヴィーガン・カフェのSwell Bowlsのメニュー開発もやりました。石井食品とはイシイのミートボールのヴィーガン・ミートボールを最初の段階から共同開発したんですよ。もうすぐ市販されると思うんですけど、けっこう良いのが出来たと思います。

ー今一番やりたいことは?

山口:ヴィーガンがストリート・カルチャーの中の一部として音楽、ファッションとリンクしていけるような仕事をしていきたいです。例えば来日アーティストのバックヤードのフード提供だとか、ツアーのパーソナル・シェフもやってみたいですね。アパレル関係とのコラボとか。

ーこれまでに音楽カルチャーと絡んだことは?

山口:Veggies Nowっていうケータリングを10年くらい前からやっていて、ヴィーガンのメンバーがいる海外からのアーティストが多数出演するようなBLOODAXE FESTIVAL、PUMP UP THE VOLUME FESTIVALといったイベントやフェスに出店したことはあります。10月にはTAMASONICというパンクのフェスにも出店しました。TAMASONICは元々スーサイド・マシーンズが出演するはずだったんですが、台風の影響で出れなくなって。スーサイド・マシーンズのメンバーがヴィーガンなので、ヴィーガンの食事を希望してたんですよ。

ーヴィーガンになる人はどのような入口の人が多いんでしょうか?

山口:さまざまな入口の人がいるとは思うんですよ。環境問題、動物愛護、自身の健康、あとは宗教や思想もありますね。大まかに分けるとその4つの入口で入ってくる人が多いです。

ーヴィーガンの良さとは?

山口:環境に負荷がかからないという部分では、少なからず良いとは思います。それをやれば変わるのか?っていうのは仮説の部分もありますが、地球上で生物同士が共存していく上での倫理観的には必要なことではないかと。あとは、クリアなものを身体に入れることで、日々の生活スタイルも精神的にクリアになっていく部分はあるのかなとは思います。よく言われてるのが、寝起きが良くなるとかありますね。それには消化の影響もあって、昼ごはんを食べた後に眠くなったりするのも、消化するのに体内でエネルギーを使うからなんです。肉と比較すると野菜の方が消化に使うエネルギーの負荷が少ないということらしいんです。でも人それぞれに合う食事、合わない食事っていうのはあるので、一概には言えないんですけど。

<ヴィーガンを公言しているアーティストたち>

アリアナ・グランデ

2013年にヘルシー食ブームの流れで、プラントベースト・ダイエット(菜食中心の食事法)を始めたアリアナ。2014年のMirrorでは、「私は人間よりも動物が好きなのよ。冗談じゃなくてね。私はプラントベースト・ダイエット、ホールフーズ・ダイエット(食べ物を可能な限り丸ごと、野菜なら皮ごと、穀物なら玄米や全粒粉で食すこと)の食事を信じているの。実践すれば寿命も長くなるし、人間としてもよりハッピーな人になれると思うから」と語っている。
Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Billboard

ビリー・アイリッシュ

ヴィーガンである彼女は、2019年6月14日のインスタの投稿で話題を呼んでいる。インディアナ州最大の酪農業者、フェア・オークス・ファームによる飼育動物たちへの虐待行為に対しての投稿で、虐待行為の証拠動画をシェアした上で、「どんな人でも自分の好きなものを食べればいいと思っているから、こういうことには口を閉ざしてきたの。でも、自分の楽しみのためだけに、拷問を受けた動物を文字通り食べて、自分たちが何とも思わないのだとしたら、あなたのことを残念に思うわ。肉が美味しいのはわかる。だけど、自分一人だけじゃ何も変わらないと思ってるのだとしたら、それは無知だし、愚かなことよ」と書いている。
Photo by Emma McIntyre/Getty Images for LACMA

エイサップ・ロッキー

スウェーデンで暴行容疑で拘束されていたNYのラッパーが、釈放後初めてリリースしたシングル「Babushka Boi」のヴァースで、「クソ、ダック・ソースなんてゴメンだよ、だって俺はヴィーガンになったんだから」と歌っている。2011年にペスクタリアン(魚介類、乳製品、卵は食べるベジタリアン)になった彼は、Rolling Stoneでも、肉食をやめたことで「自分のマインド、身体、魂がクリーンになった」と語り、2012年のComplexでは、薬やステロイドを投入され、ストレスを抱えた飼育動物を食べて、自分の身体に取り入れるのはヘルシーなことではないと語っている。
Photo by Peter White/Getty Images

モリッシー

11歳で肉食をやめたモリッシーは、それこそ1985年には自分のバンド、ザ・スミスのアルバム・タイトルを『Meat is Murder』(「肉食とは殺戮」という意味)にしているくらいで、アニマルライツ運動の先駆者でもある。2018年のブログサイト「Tremr」のインタビューでも、「僕は動物を食べない。鳥も、魚も食べない。自分のことをヴィーガンやベジタリアンや肉食といった型にはめてもいない。僕は僕でしかないからね。母親がいる生き物は食べないっていうこと。当たり前のことさ」と語っている。
Photo by David J Hogan/Getty Images

ポール・マッカートニー

元ビートルズのロック界のレジェンドは、1975年から肉を食べていないという。2017年には「One Day a Week」という映像を公開して、月曜日はヴィーガン料理を食べようというキャンペーン「MeetFreeMonday」を始めている。このフィルムは国連による気候変動に関する会議(COP 23)の開催に合わせて公開されたもので、ポール曰く、「みんなで力を合わせれば、環境を良いものにすることができるし、気候変動に与えるネガティブな影響を減らすこともできるし、その上、自分たちの健康も改善することができるんだ」とのこと。
Photo by Karwai Tang/WireImage

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