ハーヴェイ・ワインスタイン裁判、押さえておくべきポイント

・ワインスタイン被告の主張は?

ワインスタイン被告の弁護団は、気分屋で有名な映画業界のドンがこの数カ月で弁護士を雇っては解雇したため、メンツが入れ替わり立ち代わりしている。現在弁護団を率いるのはニューヨーク州の弁護士アーサー・アイダラ氏と、シカゴを拠点にする弁護士デイモン・シュロニス氏、そしてドナ・ロトゥーノ氏だ。とくにロトゥーノ氏はセクシャルハラスメント裁判で男性側を弁護した経験があり、MeToo運動に対しても公に批判している。彼女は被告と告発者の間で起きた行為はすべて同意の上だったと主張するとみられ、ウォール・ストリート・ジャーナル紙にも、この裁判で女性たちが自己責任を持ち、「ホテルの部屋に行かないほうがいいかも、こういう会話はしないほうがいいかも」と自問するきっかけになってほしい、と語っている。

被告側の主張でとくに大きな障壁となっているのが、陪審員選定だ。MeTooや裁判の報道が過熱する中、公平な陪審員を集めるのは極めて難しくなるだろう、とシャクナヴィッチ氏は言う。「被告側は陪審による裁判を放棄し、直接判事に判決を求めてくるのではないか、とも思いました」と彼は言う。「今回の裁判では、陪審も辛辣な批判を浴びることになるでしょう。そんな状況下での判決など、誰も望みません」

すでに前例として、ジェームズ・バーク判事は昨年、裁判で認められた重要証拠に関する公判前公聴会への報道陣および一般人の傍聴を禁じた。公聴会で提示される「非常に扇動的な」情報をメディアが報じれば、公正な裁判を受ける被告の権利に支障が生じかねない、と懸念したためだ。これについては弁護側も以前から懸念を表明しており、マンハッタン以外の場所で裁判を行うよう、申し立てを行った(この申し立ては10月に棄却された)。

・ワインスタイン被告が有罪となる確率は?

もしワインスタイン被告が陪審による審理続行を選んだ場合、少なくとも1件の刑事起訴で有罪判決を受ける確率は「きわめて高い」とシャクナヴィッチ氏。単純に起訴内容の重大さをみても、またMeToo運動後の性的暴行関連の問題に関する社会意識が高まっていることからも、告発者は嘘をついているという被告側の主張は、数年前ならいざしらず、今となっては陪審の胸に響く可能性ははずっと低い。「(ワインスタイン被告が)10年前に起訴されていたらどうなったか分かりません」とシャクナヴィッチ氏。公判中、MeToo運動の波及効果が猛威をふるうことになるだろう。「この街だけでなく、いたるところで見られるでしょうね」


Translated by Akiko Kato

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