Superflyが語る「自分らしくいること」で培った新たな視点

曲作りの背景にあった「物語の力」とは?

─自分を主人公として設定せず「架空の物語」を作り上げても、そこには志帆さんの歌いたいこと、言いたいことが反映されていると思いますか?

志帆:登場人物の「目」を通して世の中を見ている気はします。誰の目を借りるかによって、見ている視点が変わるというか。例えば「Gifts」では中学生、「Fall」では魔女というふうに(笑)、ガワは曲ごとに違うのですが中身は結局「私」なんですよね。それはすごく面白い体験で、「さあ、次は誰の目線で曲を作ろうかな!」って毎回ワクワクしていました。





─志帆さんの個人的な思いやメッセージが、「物語」という形を取ることで普遍性を獲得しているのかもしれないですね。だからこそ、聴き手は自分の立場で自由に解釈し想像力を投影させられる。


志帆:おっしゃる通り、まず何かしら自分の中にグサっとくる出来事があって、「この気持ちを曲にしたい」となった時に物語の力を借りたのでしょうね。そこが、Superflyの他のアルバムとの大きな違いだと思います。

─プレスリリースを読むと、「お休みして、旅行をしたり、本を読んだり、好きなことしながらリラックスして過ごしている間に、自分の気持ちがゼロになっていく感覚を味わった」ともありました。何か心に残った作品はありましたか?

志帆:パッと思いつくのは、小川糸さんの『ツバキ文具店』でした。この小説の主人公は、鎌倉で小さなツバキ文具店を営みながら手紙の代書を請け負う仕事をしていて。様々な依頼人に憑依して手紙を書くんですけど、便箋や封筒選びから字体まで「この人だったらこんな感じかな」と想像しながら変えていくんです。なんかそれって、今回の私の曲作りに近いかもしれないなって(笑)。それに、とにかく描写が美しいんですよ。ペンの動かし方まで心に浮かんでくるようで。読んでてとても楽しかったです。

─読む本は小説が多いですか?

志帆:気持ちに余裕がある時はそうですね。小説を読む行為って、誰かのお話を聞いているのと似ている気がします。他にもエッセイから自己啓発本まで(笑)、気になった本はどんなジャンルでも手に取ってみます。

─ひょっとしたら今作は、インドの思想や哲学が根底に流れているのかなと思ったんですよ。というのも、「ゼロ」の概念を発見したのはインド人だし、シタールをフィーチャーした曲(「フレア」)や、瞑想がテーマの曲(「覚醒」)があったりするし。





志帆:おお、なるほど(笑)。確かに、いろんなことを考えるのは好きですね。スピリチュアルなこととか調べるのも楽しいですし(笑)。小さい頃は「人はなぜ生きているのか?」ということをずっと考えていたし、存在意義みたいなものを追求したくなる性格なんですよね。家族はみんなカラッとした人たちだから、きっと「変な子だな」と思われていたかもしれないですけど(笑)。そういう思いを形にするために、自分は曲を書いているのだと思います。

─哲学や思想って、個人的には児童文学やファンタジー、SFとも結構近いところにあるのかなと思っています。

志帆:あ、SFはお休み中によく観ていましたね。今までSFって「ちょっと怖いな」と思っていたんです。話が壮大過ぎるし「火星に独りきり」とか辛いなって(笑)。苦手意識があったんですけど、時間が余り過ぎていたので『スター・ウォーズ』を何回も観ました。これも人間ドラマなんだな、親と子の物語なのだなって。

─『スター・ウォーズ』の原作者ジョージ・ルーカスは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルの著書『千の顔をもつ英雄』を読み、スター・ウォーズシリーズに神話性を取り入れたと言われていますよね。

志帆:いろんな作品の要素が含まれていて、奥が深いなと思いました。自分が物語を作っていく上でも、すごく励みになったというか。『スター・ウォーズ』のエピソードを観ながら「私だったら、ここをもう少し掘り下げたいなあ」なんて思ったりして。

─分かります(笑)。映画そのものはシンプルなのだけど、設定が緻密に練られているからスピンオフやサイドストーリーを考えたくなるんですよね。

志帆:そうそう! ファン同士で語り合う気持ちがすごくよく分かりました(笑)。

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