Superflyが語る「自分らしくいること」で培った新たな視点

Superfly(Courtesy of Warner Music Japan)



「愛されたい」と思うのは本能

─今回のアルバムは、そんなふうに日々の暮らしを大切している中から生まれてきたのですね、だからこそ、楽曲に含まれているメッセージも押し付けがましくなくすんなり入ってくるのだと思います。

志帆:嬉しいです。

─例えば冒頭を飾る「Ambitious」は、「夢や憧れ、目標を持たなければ」という世間のプレッシャーに押しつぶされそうな人へ、別の視点を与える曲だと思いました。「Gifts」で歌われているのも、「みんな持っているものは一つじゃなくて、きっとたくさんあるんだよ」というメッセージですし、「選択肢を増やすことで、人は生きやすくなるのでは?」という問いかけなのかなと。



志帆:今の世の中って、情報が多すぎることで逆に窮屈になっているのかなと思います。それはSNSで顕著ですけど、人の感情が乗った情報が飛び交っていて、そこにいると間違いなくストレスがかかっているんですよね。しかも、そのことに気づかぬまま誰かと接することがすごく多い。自分を見失った状態で、悲しい思いやつらい思いをしているのだったら、もっとフラットになった方がいいのになって。それもきっと、自分がフラットになったからこそ見えてきた気がします。

─「Lily の祈り」は、「“愛されたい気持ち” をもっと肯定する曲を書きたい」という思いから生まれたそうですね。「人に愛されるためには、まず自分から人を愛さなければ」とはよく言われますけど。

志帆:私も今までそう思っていました。でも、小さい頃からずっと心の中がスースーしていて。きっとそれは寂しかったからだと思うんですよね。表面的には充実しているように見えていたかもしれないですけど、常に孤独感が拭えなかったし、それをぶつける先も分からずにいました。決して「愛されていなかった」わけじゃなかったんですけど。子供って愛されたいから「いい子でいよう」とするじゃないですか。それは今のちびっ子を見ていても思う。

─そうなんですね。

志帆:ある時、人と食事をしながらお花を見てたんです。お花って、ビビッドな色が多いじゃないですか。こういうものを人は美しいと思うのに、なぜ身に纏うものは真っ黒だったりするんだろう、みんな、もっとお花みたいにカラフルになればいいのに」って話してたんですね。そしたらその人が、「これは求愛だからね」って。「ミツバチに気付いてもらうために綺麗になろうとしているのだから」って言ったんですよね。

そうか、「もっと愛されたい」「もっとこっちを見てほしい」「大事にしてほしい」っていう気持ちが花にあるなら、人間だって思っていいじゃん!」って。その後、一木けいさんの『愛を知らない』という本に出会って、今のエピソードがその本のテーマとも繋がったような気がして。「愛されたい」と思うのは本能で、赤ちゃんだって愛されたいから泣くわけで。だとしたら、「愛すること」より「愛されること」の方が先だし、「愛されたい」という気持ちを肯定したいなって思ったんですよね。これは発見だ!と思って書いた曲が「Lily の祈り」でした。

─「氷に閉じこめて」のアレンジも素敵で、この曲のピアノはセロニアス・モンクにインスパイアされたそうですね。

志帆:お休み中はモンクをよく聴いていて、「なんて愉快なピアノを弾くんだろう」って思っていたんですよ。彼のピアノのタッチ、間の取り方がすごくツボだったので、そういうピアノが生きるアレンジにしてもらいました。雪山の先に遊園地があって、その中で流れているメリーゴーランドの曲というイメージです。間奏あたりで、ストリングスがザッザッザッとコードを刻むところがあるんですけどそこはアレンジャーの中田裕二さんに、雪が積もった道を踏み締めている音を表現してもらいました。

─「サンディ」はポッカサッポロ「キレートレモン」のCMソングとして書かれた曲で、「再出発」がテーマになっています。再出発って、出発よりも大変だと思うんですよね。

志帆:怖さを知っていますからね。倍以上の労力がいるのかも知れない。でも無理に再出発する必要もないし、何度でも失敗して、何度でも再出発すればいいと私は思うな。

─確かに。志帆さんは、常に変わり続けたいと思っていますか?

志帆:毎日生まれ変わりたいと思っていますね。とどまっているよりも、変わり続けた方が元気でいられる気がします。だって、毎日細胞は生まれ変わっているわけじゃないですか。それなのに、気持ちだけ過去のことに囚われているのは、なんだか居心地が悪いなって思うようになってきました。

─以前の志帆さんは過去に囚われていたこともありましたか?

志帆:以前はすごく過去に執着していたし、何年も前の出来事を「まだ解決してない」とか思って引きずっていました。でも、未来には進めるけど過去には決して戻れないじゃないですか。それだったら細胞と同じレベルで心も生まれ変わっていきたいですね。すべての物事は変わっていく。人との出会いも、ご縁もそうですよね。私と同じように相手も変わっていくのだから、意見が食い違ったりした時には無理に修復しようとしない方がいい気がします。

─おっしゃる通りだと僕も思います。関係を「前の状態に戻す」のではなく、今の二人にとってベストな関係を考えた方がお互いのためになりますよね。

志帆:そうなんですよ。例えば、ある一定の期間、すごく濃密な関係があって、でも、その先は違う関係へと変化していくことも、それぞれの運命じゃないですか。でも、そこで以前の関係性に執着しちゃっている人が多い気がする。そういうことが、私も以前は分からなかったんですけど、自分がフラットである状態を感覚的に掴めてからは、自分が執着していたこと、しがみついていたことも手放せるようになって、だいぶ楽になりましたね。

─改めて本作『0』は、「生きづらさ」から解放されるヒントがたくさん詰まっている気がしました。

志帆:ありがとうございます。年齢とか性別とか関係なく、できるだけ多くの人にそう思ってもらえるといいなと思っています。もしかしたら、35歳という自分の年齢もちょうどいいのかもしれないですね。年下の人も増えてきたし、年上の方もたくさんいらっしゃるし、今はなんか、その両方の気持ちが分かるというか。ちょっと「中ぶらりん」な今の年齢だからこそ(笑)、作ることのできたアルバムなんじゃないかなと思っていますね。


<INFORMATION>


『0』
Superfly
ワーナー
発売中




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