幼児による電子タバコの誤飲が米国で急増中

子供達を誤飲・中毒・依存から守るためには

とはいえ、乳児がポッド型ベイプを吸ったり6歳児がJUUL(ジュール)依存になる心配で夜も寝られなくなるというわけではない。国立毒物情報システムによると、子供がポッド型ベイプで中毒になる危険は、他の製品の危険よりもはるかに少ない。2016年のとある報告書によれば、5歳未満の子供による誤飲事故で、原因となった製品のうちもっとも多かったのは化粧品や美容製品だった(5歳未満の子供による事故の13.3%)。ついで家庭用洗剤(11.1%)、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛剤(9.21%)と続く。これと比べると、電子タバコリキッドの誤飲に関する報告件数はごくわずかだ。

さらにPediatrics誌の論文の著者は、こうした報告件数は自己申告――おそらくは、心配になった親が中毒管理センターに電話をかけたケース――に基づいている点を指摘する。電話があったからといって、必ずしも報告された子供たち全員が実際に電子タバコ用リキッドを飲み込んだとは限らない。論文の著者も指摘しているように、「基本的に事故の報告は詳細まで調査して記録しているわけではない」。したがってこうした報告の内容は、中毒管理センターでも「完全に確かめることはできない」のだ。言い換えれば、中毒管理センターに電話をかけてきた親の多くは、本当に子供が液体ニコチンを飲むのを見たとか、カートリッジを口に入れているのを見たわけではない可能性もある。子供がカートリッジやボトルを手にしているのを見て、最悪の事態を想定したのかもしれないし、念には念をと電話をかけたのかもしれない(ジェンソン助教授いわく、単にベイプカートリッジに触れただけなら、おそらく子供がニコチン中毒になることはないだろうとのこと)。

とはいえ、小さな子供が液体ニコチンを誤飲したという報告は真摯に受け止めるべきだろう。親がタバコを隠したり、小さな子供の手の届かないところに置いたりするように、電子タバコでも同じような措置をとるべきだ。だがベイプ関連の健康被害という文脈で見るならば、電子タバコを常用する若者やティーンエイジャーの数は、電子タバコの脅威にさらされた可能性のある幼児の数をはるかにしのぐことを肝に銘じておかねばならない。4万4000人以上の中高校生を対象にした最新の調査によると、高校3年生の37.5%がフレイバーつきの電子タバコを使用したことがあると答えた。同様に、中学2年生の場合は17.6%だった。中にはわざわざ危険な方法でニコチンを摂取している子供もいる可能性がある。ジェンセン助教授が言うには、電子タバコの禁断症状に襲われたティーンエイジャーが使用済みポッドからニコチンを吸い出そうとしたという話をこの6か月間で何度か耳にしたという。

ベイプが健康に及ぼす影響や、最近の肺疾患問題を引き起こしたと考えられる要因についての研究がますます増える中、多くの政治家たちが電子タバコ業界そのものを廃絶しようと対策を講じている。ニューヨーク州とミシガン州ではフレイバーつき電子タバコの禁止に踏み切ったし、ドナルド・トランプ大統領もフレイバーつき電子タバコの全米禁止措置に前向きだと発言した。こうした努力は医療関係者からは広く称賛される一方、厳格な措置をとれば従来の可燃性タバコへの揺り戻しを招くのでは、と見る人もいる(多くの活動家が主張するように、2つの悪のうち本当に電子タバコのほうがましだと言えるのか、という議論もあるが)。いずれにせよ、若年層やティーンエイジャーが危うい状況にいるという事実は変わらない――それこそが、今我々が直面している真の危機だ。

Translated by Akiko Kato

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