アジカン後藤正文・喜多建介が語るマニック・ストリート・プリーチャーズ

―最新作にあたる昨年発表の『Resistance Is Futile』に関しては、どんな印象ですか?

喜多:ひさびさの傑作だったのに、日本ではあんまり騒がれなくて、勿体なかったなって。

後藤:確かに、よかったよね。開けたサウンドだった。

喜多:ここ何枚かの中でも、かなりの傑作だったと思うんですよ。



―その前の2作、『Rewind the Film』と『Futurology』がコンセプチュアルな作品だったのに対して、ひさびさにマニックスど真ん中な作品でしたもんね。

後藤:そうやってキャリアをずっと続けてるのがすごいと思いますよ。一番新しいアルバムを、奇を衒わずにマニックスを貫いて作っているっていうのは、尊敬しますね。

喜多:一時期ソロをやったりとかもあったけど、コンスタントにずっと出してますからね。

―そう、30年やってて長いお休みがないんですよね。

後藤:バンドをやってる身としては、その難しさがよくわかるから、すごいことだなって。新しいバンドはどんどん出てくるし、新しいフィーリングもどんどん出てくる中で、自分たちの印をちゃんと楽曲に刻みながら続けていくのってめちゃくちゃ難しいことで、普通13枚もアルバム作れないですよ。ソロならまだいろいろやりようがあるだろうけど、バンドは構造として強いから、そんなに突飛なことはできないっていうかね。そういう中で、モデルチェンジを試みたこともあるでしょうけど、今あのアルバムに着地できてるっていうのは、すごいことだと思います。

喜多:行ったり来たりを繰り返してるイメージはありますね。『Send Away The Tigers』(2007年)は当時だとひさびさに開かれたアルバムだったけど、その後はまた硬質なアルバムになったり。

後藤:『Journal For Plague Lovers』(2009年)のエンジニアって、スティーヴ・アルビニだったっけ?

喜多:そう、『The Holy Bible』の続編みたいな感じで、リッチーの残した歌詞を使って、ジャケットも同じ人の作品を使ってたり。2015年のサマソニで『The Holy Bible』の再現ライブを観たとき、本編を3人だけで演奏したあと、アンコールでサポートが出てきてヒット曲をやったんですけど、本編はとにかく緊張感がすごかった。(客席も)ホントに好きな人しかノってなくて、「大丈夫かな?」って、ファンでも心配しちゃう感じだったから、アンコールでサポートの人たちが出てきたときの安心感はすごかった(笑)。

後藤:今回の『This Is My Truth〜』はちょうど俺たちの世代にファンが多いだろうから、経済的にもタイミング的にも来やすいだろうし、ON AIR EASTに来てたような当時のファンの人にも来てほしいよね。あの頃ライブハウスはどこ行ってもパンパンで、誰が来ても埋まってた気がするけど、その頃の人が音楽を聴かなくなってるとしたら、寂しいからね。もちろん、若い子たちにもマニックスを観てほしいけど。

―喜多さん選曲のプレイリストは、若い子たちの入口にもなるでしょうね。

喜多:ああやってちょっとずつでも紹介して、好きなものを好きってみんなの前で言うことで、繋がっていくかなって。

後藤:俺たちにインフルエンサーみたいな能力はないけど、10人に繋げられたら、その人がまた10人に繋げてくれれば、さらに広がるわけで。それを期待するしかないですよね。マニックスって、俺たちもそうだったように、いきなりガチャッとドアが開くタイプのバンドではないかもしれないけど……。



『This Is My Truth〜』に収録された、バンド初の全英ナンバー1シングル「If You Tolerate This Your Children Will Be Next(邦題:輝ける世代のために)」

―でも、昔はCDを買うなり借りるなりしないといけなかったのに対して、今は興味さえ持ってもらえればいつでもストリーミングで聴けるわけで、ドアのところまで行く必要がないというか、ドアがすぐ隣にあるっていうのは大きいですよね。

後藤:今の若い子たちの方がいろんな音楽を聴く機会があるから、意外にスッとマニックスを面白いと思うかもしれないしね。あとはやっぱり、生で観るとすごくいいんですよ。月並みだけど、一回限りに宿ってるものって大きいから、「生で観るとちがうな」って、何回も言っちゃう。ジェームスのボーカルとか(音程が)結構高いところまで行くから、「声出るなぁ!」って感じると思うし(笑)。

喜多:ジェームスはお酒もタバコもたしなまれる方ですけど、調子悪いときほとんど観たことない。

―やっぱり、当時のUKバンドの中でも、ジェームスの歌声のきれいさと上手さは衝撃でしたからね。

喜多:見た目は、あんなきれいな声出す感じじゃないですしね(笑)。

後藤:当時のイギリスのバンドは全体的にヘタウマだったけど、ジェームスは一枚上手というかね。でも、あのバンドの中であの歌とギターなのがいいんだと思う。バンドってそういうもので、すごく才能があっても、バンドの中で鳴らすことで特別な何かが宿るというか、「このメンバーで鳴らすと何かいいんだよね」っていうのがあるから。ジェームスが一人で来て、マニックスの曲を歌っても絶対いいけど、でも何か違うっていうか。それはリアムでもノエルでも一緒で、それを未だに観れるっていうのは、すごく幸せなことで。

―それこそ、オアシスは解散して観れないわけですもんね。

後藤:見逃して、何年かしてやんなくなっちゃったら絶対後悔すると思うんですよ。だから、90年代とか00年代に追いかけてた人も、ぜひ見に来てほしいよね。

喜多:僕らもきっちりやって、あとはお客さんとして楽しみたい(笑)。


2018年のライブ映像

―アジカンのライブは「今」のモードになりそうですか?

後藤:いや、最近のパワーポップモードはちょっと違う気がするんですよ。やっぱり南米とヨーロッパでも受ける曲が全然違って、南米はアッパーな曲で盛り上がるけど、ヨーロッパだと四分キックの曲とか受けたイメージなくて、「サイレン」とかのゴシックな曲の方が盛り上がるイメージで。だから、マニックスとやるなら、UKロックの影響が出てる曲をやるのも面白いかなって。最近の俺たちはアメリカづいてたから(笑)。

―アジカン自体、UKの影響はもともとあるバンドですしね。

後藤:メランコリックな感じとかね。スマパンのメランコリックと、マニックスやレディオヘッドのメランコリックの質はちょっと違って。イギリスのバンドはやっぱりウェットだから、自分たちもそういうセットリストを組めたら面白いかも。いい流れでマニックスを観てもらいたいし、俺たちの良さもちゃんと鳴らしつつ、「この2バンドが観れてよかったな」って思ってもらえたら、それが一番いいかな。





MANIC STREET PREACHERS

THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS 20th Anniversary Show and More

2019年9月26日(木)東京・Zepp DiverCity Tokyo
2019年9月27日(金)東京・豊洲 PIT
Special Guest:ASIAN KUNG-FU GENERATION
OPEN 18:00 / START 19:00

詳細:
https://www.creativeman.co.jp/event/manic-street-preachers/

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