BJ・ザ・シカゴ・キッドが明かす、カニエからケンドリックまで求める「声」の秘密

―レコードもたくさん聴いてきたと思いますが、技術的な部分を学ぶために特に研究したシンガーやアーティストがいたら教えてください。

BJ:ミッシー・エリオット、トゥウィート、ティンバランド、ブランディー、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、クラーク・シスターズ、その辺かな。

―例えば、ミッシー・エリオットはどんなところが?

BJ:僕はチャーチで育った。ブラックチャーチのクワイアの編成は3つのセクションに分かれている。ソプラノ、アルト、テナーの3つ。それぞれのセクションに5人ずつで15人でとかで歌うのが一般的なんだ。ミッシーがやったのはその5人のパートから4人を取り除いて、それぞれのセクションを1人の声でも歌えるような歌唱法を生み出して、その彼女が考え出したクワイアのサウンドを自分の音楽の中に組み込んで、新しいサウンドを作った。その歌い方はトゥウィートも同じようなスタイルなんだけど、それを自分なりに分析して、マスターして、自分の声で、自分の音楽の中でどのように応用できるのかを追求してきた。僕はミッシーの方法論を使わせてもらっているんだ。

―そういう歌唱法や曲作りが聴こえるあなたの曲ってどれですか?

BJ:ほとんどすべての曲に入っているといっても過言ではないね。あまりにそのテクニックを使いすぎていて、まるで自分のシグネチャーみたいになっているんだ。

ーミッシー・エリオットくらい影響を受けた人って他にいますか?

BJ:いないね。ゴールドを見つけてしまった後にシルバーを探しに行くわけないだろ?



―スティーヴィーの名前も挙がりましたが、彼のどんなところから影響を受けましたか?

BJ:ボーカルのトーンがリッチなんだ(スティービー・ワンダー「Happy Birthday」を当然歌いだす)。彼のボーカルはリフもいらないし、ただ歌っているだけでまるでエフェクトがかかっているみたいに響く素晴らしい声を持っている。それに彼が書く曲は、自分の声が最も効果的に出るようにデザインされている。彼が歌うことによってその曲がタイムレスになり、クラシックスになる。曲の素晴らしさは言うまでもないけど、彼が歌うことで曲の寿命が延びる。彼こそ真のミュージカル・アーキテクチャー(建築家)だよ。

―あなた自身も自分の声と歌い方に合わせて書かれた歌があって、それに合わせてふさわしい歌を載せていて、すごくデザインされていると思うけど、どうですか?

BJ:僕はそういうことを意図しながらやってはいないけどね。でも、自分の目標は伝説的な存在にならなくても、それに準ずるようなベストな状態の自分を常に表現したいと思っているから、そう言ってもらえるのは嬉しいことだよ。



―意図してないんですか? あなたの歌って、「BJと言えばこのスタイル」って感じよりも、曲に合わせていろんな歌い方をしてますし、そのバリエーションも豊富ですよね。あれはその楽曲にふさわしい歌い方をすごく考えて選んでいるのかと思っていました。

BJ:自分がやり終わるまで、どんな歌い方をするのか、どんな歌い方をしているのかとかは全く考えてないんだ。自分の中で創作において一番大事なのは考えすぎないこと。考えすぎずにその時に思ったことや感じたことを素直に表現している。でも、出来上がってから聴いてみると、さっき君が言ったみたいなことを後から自分でも感じるんだ。

Translated by Kana Muramatsu

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