マック・デマルコのアーティスト哲学「華やかな成功よりも穏やかな気持ちにさせてくれるものを」

マック・デマルコ(Photo by Yana Yatsuk for Rolling Stone)



先行シングルの「Nobody」と「All of Our Yesterday」をはじめ、『Here Comes The Cowboy』には侘しくメランコリックな曲が並ぶ。その一方で、ナンセンスな電車についての歌詞と、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンにインスパイアされたというファンキーなグルーヴを擁する「Choo Choo」のような曲も収録されている。「脂ぎったやつを作りたかったんだ」デマルコはそう語る。「ファンクを分かってるやつらには、『何だこりゃ?』って言われるだろうけどね」



カウボーイ、カウガール、愛くるしい家畜、小型犬など、表題曲に登場する絵に描いたような西部劇のイメージはその他の楽曲群にも見られる。「ちょっとアニメっぽいかもね」彼はそう話す。「カウボーイの何たるかを知らない人間による解釈、とでも言えばいいのかな」

ウィリー・ネルソンとドリー・パートンによる怪作を除けば、カントリーにはほとんど興味がないと話すデマルコは、生まれ育ったエドモントンでよく見かけたカウボーイハットを被ったスポーツマンタイプの人間を忌み嫌っていたという。「高校で俺みたいなのをいびるやつは洩れなくそういうタイプだった」。彼はそう話す。「カナダの俺の故郷じゃ、カウボーイっていうのはあのハットを被ってバーで呑んだくれてるやつのことを指してたんだ。正直言うと、若い頃は自分がその町で生まれ育ったことを恥ずかしく思ったりもしてた」

新作における西部のイメージは、現代社会からの逃避というファンタジーの象徴だという。「最近の世の中はどうかしちゃってるからな」。彼はそう話す。「みんな気が狂う一歩手前って感じだ。このご時世において、馬に乗って酒場に向かうっていうこのキャラクターのイメージは滑稽でしかない。牧場を舞台にしたシンプルなライフスタイル、俺はそういうのに安らぎを覚えるんだ」

一方でデマルコは、『Here Comes The Cowboy』はジョークばかりではないと強調する。距離を置いている父親への思いを明かすなど、本作は『ディス・オールド・ドッグ』よりもパーソナルな内容になっていると彼は語る。「前作では父親とうまくいってないってことに触れただけだった」。彼はそう説明する。「でも今作で、俺はもっと率直になれたと思う。自分が感じてることをちゃんと伝えようとしたんだ」

その好例として、彼は眩い光に照らされて浮かび上がる孤独感を歌ったソフトロック、「Finally Alone」を挙げる。<この街にはウンザリだ / 美男美女と一緒くたにされちまう /  お前には休暇が必要だ>。彼は親友にむけてそう歌いかける。

「『ポストマン・パット』(イギリスの子ども向け番組)みたいなキュートな曲なんだ」。彼はそう話す。「歌詞もそんな感じさ。とある女の子は、隣の芝生は青いといつも感じてる。本当はそんなことないんだけど、それが我慢ならないから彼女は頑張り続ける。過去10年くらい、俺はまさにそんな感じだったんだよ。同じ場所に3年も住んでると、引っ越したくて仕方なくなるんだ」

実際に彼は3年ほど前から、長い間寄り添っているガールフレンドと一緒にロサンゼルスに住んでいる。「しばらくこの街に住んでるけど、今のところ満足してるよ」。彼はそう話す。「とか言いつつ、去年は東京に家を買おうなんて考えてたんだけどさ」

Translated by Masaaki Yoshida

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