世界中が興奮した史上初のブラックホール画像

世界初のブラックホールを捉えた画像(Event Horizon Telescope collaboration et al. via National Science Foundation)

ハーバード=スミソニアン天体物理学センターの科学者たちが5500万光年の彼方にある「ブラックホール」の姿を捉えた史上初のクローズアップ画像を公開した。世界初のブラックホールを捉えた画像は、強烈で邪悪、そしてわくわくするような荘厳さを感じさせ、SNS上で瞬く間に拡散された。

2019年4月9日、健康的に日焼けした俳優のジュード・ロウが白のタイトなSpeedoの水着を身に着け、TVシリーズ『The New Pope』の撮影に臨む姿がTwitter上に公開された。写真は、ジュード・ロウのファンを公言する人々による興奮したツイートと共にまたたく間に拡散した。科学者らによると“ホットな教皇”の写真は、トルドー/アントニ・スケールで6.6という比較的高い数値を示したという。同スケールは、ネット上の興奮度を測るシステムとして一般に使われている。

しかし6.6という数字は、ハーバード=スミソニアン天体物理学センターの科学者たちが5500万光年の彼方にある宇宙の奈落、つまりブラックホールの姿を捉えた史上初のクローズアップ画像を公開した後の世間の興奮に比べると、とても比べものにならない。ワシントンDCで行われた記者会見の場で公開された画像は、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と名付けられた望遠鏡のネットワークを利用し約2年がかりで分析を続けてきた成果である。EHTは、地球上の複数大陸の山頂にある各観測所に設置された望遠鏡をつなぐネットワークだ。魅惑的な画像を目にしたニューヨーク・タイムズ紙のデニス・オーヴァーバイは、「自然のパワーと邪悪さを再認識させてくれる」そして「ぼんやりと輝く輪の中に永遠に続く一方通行への入り口が開いている」と表現した。ここで見られる興奮度は、トルドー/アントニ・スケールなどではとても測れない。

興奮したインターネットミームの挑発には乗らず、冷静にブラックホールについて我々が知っている事実や未知のことについて考えてみよう。「ブラックホールは、いて座A*にある」とか「メシア87(M87)と呼ばれる銀河にある」、「太陽よりも70億倍もの質量で、幅は400億km」とも言われている。またニューヨーク・タイムズ紙によれば、「約5000光年の宇宙空間に強烈なエネルギーを放ち」、「物質、空間、時間を跡形もなく消し去ってしまう」という。誰も実際に測ったり目撃したりはしていないが。

ブラックホールの画像が公開されたことは、重要な出来事だ。なぜならこれまではブラックホール内部の重力が強力で、光でさえも外縁から出ることができなかったため、全くその姿を捉えられていなかったからだ。今回捉えた超大質量のブラックホールは、周囲を渦巻く高温の濃密ガスが取り囲み、まるで後光のように見える。

アインシュタインの一般相対性理論によると、ブラックホールはとても多くの物質やエネルギーが1か所に集中することによって形成され、渦を巻き、物質や光さえも脱することができないとされる。今回のブラックホールの画像は、彼の理論の大部分を裏付ける。しかし科学者たちは依然として、ブラックホールに吸い込まれた物質がその後どうなるかを解明していない。多くの人はその点を怪しいと感じているだろうが、Twitter上には、「これ以上俺にブラックホールの写真を見せないでくれ。興奮が止まらない」など、素直な驚きの声も上がっている。

今回のブラックホールは、地球から約5500万光年離れたM87銀河にある。自分で撮影する際には、カメラの設定を5500万光年先に合わせてみよう。

Translated by Smokva Tokyo

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