連載:モモコグミカンパニーの居残り人生教室「アール座読書館」

モモコグミカンパニー(BiSH)(Photo by Takuro Ueno)



ーお店の内装や雰囲気がジブリっぽいなと思ったんですが、意識してるところはありますか?

渡邊:意識したわけではないですが、ジブリの世界観って例えば飛行機とか部屋の内装とか、有機的というか生き物っぽいじゃないですか。そういうところは共通しているかもしれません。



ーあと私の中では「水の喫茶店」というイメージがあります。水槽が置いてある席があって、店内では水の音が常に聞こえるっていう。


渡邊:もともと僕は自分の部屋で熱帯魚を飼っていて、水槽に水草入れて疲れてるときにボーッと何時間でも見てられるような感じだったんです。でもあるとき、これって魚じゃなくて水を見てるんじゃないかと思い始めて、水や水草に癒されてるのかもしれないなと。で、お店を始めてからあらためて分かったんですけど、水や緑には癒しの効果があって、僕らにはできないことをやってくれるんですよね。



ー水槽を見ながら席に座ってるだけで癒されます。


渡邊:はい。そういう使い方をされているお客様も多いと思います。

ーこのお店は基本的にお喋り禁止なので、皆さん一人で来るじゃないですか。だから私にとっては静かに自分自身と向き合わせてくれる本当に大切な場所で。渡邊さんは自分のお店以外に他の喫茶店に行ってリラックスしたりすることはあるんですか?

渡邊:いや、自分がお店に立つ立場になってからは、喫茶店に行ってもあまり落ち着けなくなってしまったんですよ。

ー私もBiSHに入る前はバンド系やアイドル系の曲をよく聴いてたんですけど、自分が当事者になってからはほとんど聴かなくなってしまって。落ち込んだときはアイドルソングを聴いて元気出そう!みたいな感じが、元気を出す以前に聴かなくなってしまった。

渡邊:立ち位置が変わると見方も変わりますからね。

ーだから喫茶店に関しては私は常にお客さんでいたいなって思ってます。渡邊さんがお客さんと接する上で一番大切にしてることは何ですか?

渡邊:飲食店というのはお客様とコミュニケーションをとるのが大事なことなんですけど、うちのお店は逆に距離感が大切になってきます。スタッフにもよく話すのが、どんなお客様なんだろうと想像して観察してほしいということ。ただ「見る」だけです。例えば、あのお客様は会社でもけっこう偉い役職の方で、おそらく会社で嫌なことがあって足を運んでくれたんじゃないかとか。勝手にこちらが思うだけなんですけど、とにかく我々が気にかけることが、間接的に回り回って安心感につながるんじゃないかと思っていて。

ー目線や眼差しのような?

渡邊:はい。放っておくのとはまた違うというか、そうすると空気感が変わってしまうと思います。ちゃんと見てるけど邪魔しないっていう距離感を大事にしてるのかなと。

ーBiSHというグループはライブを大切にしていて、そのなかでも「空気感」って大事にしてるんです。場所、人、セットリストとか、同じ曲でも毎回違うものになる。このお店はライブとは対極の静寂の空間ですが、毎日空気感って変わりますか?

渡邊:たしかに。お客さんは変わりますからね。

ー天候でも客層って変わりそうですよね。晴れの日と雨の日だったら、あえて雨の日にお店に足を運びたくなるみたいな。

渡邊:それこそ昔はアール座読書館っぽいお客様がすごく多かったんです。当時は雨の日に混むお店で。飲食店じゃありえないんですけど。

ー素敵ですね。「アール座読書館っぽいお客様」っていうのは、どういう感じなんですか?

渡邊:言葉で説明しにくいんですけど、お店の本質を分かってくださるお客様ですね。でもそういう方は世の中全体で見たときに少ないから、お店に来ても首をかしげて帰られる方も多くて。

ーそういう方もいるんですね。

渡邊:今は男性のお客様も増えてきましたね。6割女性、4割男性で、年齢層で見ると中学生ぐらいの方から杖をついていらっしゃるような年配の方まで、とても幅広いです。

ーお店の様子がドア越しに見えないじゃないですか。だから最初入るときはすごく緊張して。

渡邊:そうなんですよ。店内に足を踏み入れるまでに、3、4回トライしたという方もいらっしゃって。

ー私もそうだったんです。お店の前まで来て「やっぱり帰ろう」みたいな。

渡邊:「入りにくさ」っていうのは実は大事にしているところでもあって、そのかわり中に入ってしまうと異空間にいるような守られた感覚がある。普通の飲食店はああいうドアには絶対しないです。ガラス張りにしたほうがスッと入りやすいですし。

ーみんなに知ってほしいお店ですけど、あまり多くの人に知られたくない気持ちもあって。今回こうやって取材させていただいたことで、お客さんが増えたらどうしようかなと……。

渡邊:これまでもTVのような大きな規模のメディアの取材があると、一時的にお客様は増えるんですけど、そのなかで本当に分かってくださる方が残る。その点でもいろんなところで紹介していただくのはありがたいです。

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