連載:モモコグミカンパニーの居残り人生教室「アール座読書館」

モモコグミカンパニー(BiSH)(Photo by Takuro Ueno)

BiSHのモモコグミカンパニーによる、インタビュー&エッセイ連載「モモコグミカンパニーの居残り人生教室」がスタート。第1回目は東京・高円寺の喫茶店「アール座読書館」をめぐるお話です。

こんにちは。モモコグミカンパニーと申します。普段は「楽器を持たないパンクバンド」BiSHのメンバーとして活動しています。BiSHの活動では、日々沢山の人に会ったり、ライブではヘドバンをしたり、叫んだり、激しいことが多く、刺激的な毎日を送っています。その反動でしょうか、プライベートでは静かな場所にいることが好きです。とりわけゆっくりとした時間の流れる喫茶店は大好きな場所です。

そんな私がBiSH結成当初から足繁く通っている高円寺にある「アール座読書館」は普通の喫茶店とは少し変わっています。

店内は私語厳禁、聞こえるのは水の音だけ。棚には興味深い本が並んでいます。私たちは日常生活で見えるもの、聞こえるものばかりに気を取られ、“見えないけれど、聞こえないけれど、たしかにそこにあるもの”にだんだんと疎くなっていっている気がします。


店内の様子

アール座読書館は、そんな私たちに大切なものを思い出させてくれます。連載第1回目は、店主の渡邊太紀さんにお話を伺いに行きました。

ーお客さんが座る机にいろんなノートやメモ帳が置いてあるじゃないですか。皆さん好きなように自分の言葉を書いていて、私も書いたことがあるんですけど、あれを読んでいると悩んでるのは私だけじゃないんだっていう気持ちになります。渡邊さんも目を通したりしますか?

渡邊:はい。お客様のお顔が分かる範囲ですが、書かれた方を思い浮かべながら読ませていただいてます。お客様もあれを読みに来られる方がけっこういらっしゃいますね。

ーそうなんですね。

渡邊:あの……人前に出るお仕事していますみたいなことを書かれていませんでしたか? たぶんそこの席に座られてたかと思うんですけど。

ーえ!?  まさか覚えてくれてたんですか!?

渡邊:店内で会話をしちゃいけないという特殊な空間なので、そんなお店のことを理解してくださる方って、こちらから見てもすごく分かるんです。モモコさんもその一人というか、そんな感じがしていたのでよく覚えていました。でも本当はノートに書かれていることは人前でお話ししないようにはしていて、僕の中だけでしか把握はしていません。例えば、あるお客様が今度試験があるようなことを書かれていて、しばらく経っていらしたときに書かれたものを次に見たときに「あ、合格したんだな」とか。そういうのが僕の中ではつながっているんです。

ー私がそれを書いた時期っていうのは、人前に出るお仕事が自分に本当に合ってるのかなと悩んでいたときで、親やBiSHのメンバーには心配されるだろうからどうしても相談できなくて。でも、この机のメモ帳の中だけでは言えたんです。

渡邊:意図的なものではなく、なんとなく書いていただければいいかなぁという気持ちで最初は置いたんですが、今ではお店にとっても大事な役割を担っていて。SNSと同じように、不特定多数の人が読めるものなんだけど無作為に誰でもというわけではない。だからなのか皆さん本音というか、本当に書きたいことを書かれている。SNSだと人目を気にして書いたりするケースもありますよね。

ーいいねの数やリツイートの数で数値化されてしまいますからね。

渡邊:そこが根本的に違う点だと思います。ノートに書いてるうちに「あ、自分はこういうふうに思ってるんだ」って気づいたりとか。


店主の渡邊太紀さん

ー静寂に包まれた店内にいると、感覚がいろいろ研ぎ澄まされてきますよね。


渡邊:完全な無音の空間ではなく、うっすらと音楽もかかっているし、水の音や虫の鳴き声もかすかに聞こえてくる。店内がガヤガヤしているお店に比べると、人が歩いたりする音や窓の外の音もよく聞こえる。そういうのも含めて「静寂」だと思っているんです。

ーとても居心地がいいです。

渡邊:音が響かないお部屋って落ち着かないですよね。小さい音の響きが静寂を作ってくれるんです。

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