驚きのチャート1位、Yella Beezyがラジオプロモーションのベテランと組んだ理由

BeezyのチームもKBFBに売り込みをかけた。「(どの曲をオンエアするか)、決めるのはたいてい僕か、ミュージック・ディレクターのジェシー(・サラザール)だ」と説明してくれたのはマーク・マックレイ。KBFBのほか、ダラスのR&Bラジオ局KZMJで、番組編成および進行の副部長を務めている。「デスクが1つじゃ足りないくらい山ほど楽曲があるんだが、その中でもこの曲は際立っていた」

「That’s on Me」は、アメリカ各地で発生したヒップホップの流派がインターネットによって距離を縮める以前の時代、2005年頃にリリースされたとしてもおかしくないようなサウンドだ。「いかにもダラスっぽいサウンドだ」と、マックレイは力説。「他とは全然違う。そこが気に入っている」と、テリー・トーマスも賛同する。ダラスで大々的にオンエアされるようになったこの曲を、トーマスはヒューストンのラジオ局the Boxのローテーションリストに入れた。「Yella Beezyのサウンドは誰かのサウンドみたいだよね、っていうような曲じゃないんだ」

「That’s on Me」は、まぎれもなく南部テイストの曲だ。ぶっきらぼうでシニカル。ねちっこいベースラインと、ライブ感のあるキーボード、耳をつんざくようなサウンドエフェクトがビートを刻む。甲高い声はモダンに洗練され、数年前にアトランタ・ラップシーンで人気を博した映画『キル・ビル』のサンプリングに似ていなくもない。

当初マックレイは、「That’s on Me」を深夜のオンエア枠に組み込んでいた。レストランのプレオープンと同様、負担をかけずに新曲を試す手法だ。やがて彼の中で葛藤が生じる。「ラジオ局のオンエア枠を開放するのは、けっこう大変なんだ」とマックレイは言う。それと同時に、「ご当地ヒット曲となりそうなサウンドを耳にすると、つい世に広めたくなってしまう」。1週間後、2つ目の欲求がもう一方に打ち勝ち、「That’s on Me」は晴れてゴールデンタイム枠に進出した。

ダラスのリスナーたちは熱狂的に受け入れた。「一夜でNo.1ヒットさ」と、マックレイ氏。「すぐさま、僕らのリサーチ対象となったよ」(ラジオ局では「コールアウト調査」といって、オンエア曲にリスナーが反応した時間を測る調査を行っている)。ほどなくして、ダラスのライバル局も「That’s on Me」をオンエアし始めた。

HitcoはBeezyと契約準備を進めるのと並行して、「That’s on Me」を全国ヒットさせようと、90年代初頭からラジオプロモーションに携わってきたライオネル・ライデンアーを引き抜いた(ライデンアーは2015年にも、Rich Homie Quanの「Flex」をラジオ・オンエアチャートで1位にした経験がある)。今日、多くの若いアーティストがレーベルの重要性を否定する中、Beezyはラジオプロモーションのベテランチームと組むことを望んだ。「今よりもっとビッグになりたかったんだ」と本人。「いまもそう、世間に認められたい」

Translated by Akiko Kato

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