80年代生まれの焦燥と挑戦:こざき亜衣「メジャー or DIEの価値観」

漫画家のこざき亜衣(Photo by Miho Fujiki)

「ミレニアル世代」という言葉が市民権を得て久しい。アメリカで1980〜2000年初期に生まれた世代のことを指し、これからの経済を動かすとされている若者たちだ。日本でも同様に「バブル」「ゆとり」「さとり」と常にそれぞれの世代は名前を付けられがちだが、ふと自分たちの世代にはこれといって名前が付いていないことに気づく。今回、ジャンルを問わず花開きつつある30代の方たちと、じっくり話してみることにした。

第5回 こざき亜衣(漫画家)

薙刀(なぎなた)に青春をかける女子高生たちを描いた漫画作品「あさひなぐ」が現在ヒット中。連載開始から早7年、単行本は25巻が発売されたばかり。昨年は乃木坂46のメンバーによって実写化もされた話題作を手がけるのは漫画家、こざき亜衣。クリエイターを夢見た彼女が人気作家になるまでには、迷いと紆余曲折を経た仕事人生があった。

― こざきさんは、世代的なことをこれまでの人生の中で考えることって結構ありましたか?

こざき そうですね。私たちの世代はあまりキャッチーな括りがなくて、“無気力世代”なんて言われていましたね。少し下になるといわゆる“キレる若者”世代で。『ノストラダムスの大予言』で世界が滅亡すると言われた1999年に、私は高校3年生でした。

― 90年代の終わりの頃ってそういう雰囲気もありましたね。それまで憧れていたものはたくさんのものが一度すべて終わったような。こざきさんはその頃もずっと漫画を描かれていたのですか?

こざき 特に漫画家になろうと思っていたわけではなくて。根拠なく“何者かになるぞ”というつもりではいたんですが、今となってはなぜ、そんなことを思えたのかわかりません(笑)。子どもの頃から絵を描くのは好きだったものの、兄ふたりが私の100倍くらい絵が上手だったので、胸を張って特技とは言えない感じで。

― そして美大に進まれて映像の学科に行かれたと。

こざき 兄弟の中では劣るけれど、クラスの中ではうまい、という中途半端な感じもあって、美大ではあるけれど、絵ではなく映像の方に行ったのかもしれないですね。何かしら物を作りたいとは常に思っていました。でも結局、金銭的な面もあり、中退しちゃったんです。ただ、そのときに就職をしようという気持ちはまったくなかったので、今思うとなぜあんなに大胆だったのかなと……。その時点で漫画を描くと決めていたわけですらなく、とにかく何も考えていなかった。振り返ると怖いですよね。

― そこから漫画家のアシスタントに入られた?

こざき そうです。でも業界の常識も何も知らないくせに、こうあるべきだ、という自分の中の“理想のクリエイター像”と職場のギャップに反発してしまって。今思えば当然なんですが、生意気すぎて3カ月程でクビに。そんなこんなで、地元のレンタルビデオとCDを取り扱うお店でアルバイトを始めました。好きだった映画や音楽に近い仕事ですね。千葉の田舎で売れるわけがないような、自分の好きなバンドのPOPを描いてオススメしたりして(笑)。

Edited by Emiri Suzuki

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