ブライアン・イーノが語る、カニエ・ウエスト、デヴィッド・ボウイ、そして待望の新作

ブライアン・イーノ、「3次元のサウンド」の追求から生まれた新作『ザ・シップ』について語る


4月29日のリリースに先駆けてローリングストーン誌の取材に応じたイーノは、カニエ・ウエスト、デヴィッド・ボウイ、そしてヴェルヴェット・アンダーグラウンド等について、率直な言葉で語ってくれた。

ー『ザ・シップ』の歌詞はマルコフ連鎖ジェネレーターによって生み出されたそうですが、元となったテキストはどういった内容だったのでしょうか?

すべてを覚えているわけじゃないが、そのうちのひとつは沈みゆくタイタニック号についての記述だった。実際に救命ボートからその様子を見つめていた遭難者の回顧録だよ。第一次世界大戦で戦った兵士たちの歌も使われているよ。元はすごくポルノグラフィックな描写が含まれていたんだが、ジェネレーターによって内容は変更されている。よくメールの末尾に記されている免責文言も使われているよ。あと私自身の作品もね。

ーどの作品でしょうか?

以前ボツにした歌詞だよ(笑)未完成のリリックの再利用というアイディアが面白いと思ってね。空襲時のロンドンについての自作のエッセイの一部も使用したよ。そういった内容をマルコフ連鎖ジェネレーターに変更させて、プリントアウトした10〜15枚の内容に目を通しながら、気に
入った部分に印をつけていったんだ。意外なことにすごく一貫性が生まれて、自分でも驚いたよ。文章の並びもほとんど手を加えていないんだ。

ー確かに、機械によって生成されたとは思えない内容になっていますね。

あのアルゴリズムはとても興味深いよ。生成された内容のうち、私が実際に使用したのは全体の2パーセントくらいだったから、取捨選択のプロセスも非常に大切だがね。採用された言葉や文章の中には、自分では決して思いつかなかったであろうものが含まれている。たとえば「正時は短い」というフレーズを目にした時、「なるほど、そのとおりだ」って頷いていたんだよ。

ーメールの免責文言を読み上げているのは誰ですか?

知られているかどうかわからないが、アップルのコンピューターにはテキストを読み上げる機能があって、話者にスペイン語やフラマン語、それに中国語等のネイティヴスピーカーを選択できるんだ。たとえばスペイン語のネイティヴスピーカーを選ぶと、その言葉がスペイン人に特有のアクセントで発音されるんだよ。英語を選択した場合の訛りはかなりきついものがある。私はフラマン人の女性の声を多用したよ。(訛りを真似ながら)「こんな風にすごく特徴的な話し方をするんだよ」私の母親はフラマン人だったから、個人的にあのアクセントが好きなんだ。声の使い方については常に研究しているんだ。ポップミュージックにおいては、歌うということがあまりに過大評価されているからね。ギターやドラム、ベースやシンセサイザーらをはじめとするあらゆる楽器のサウンドは、実に様々な方法で編集されるものだ。潰したり、縮めたり、引き延ばしたり、ありとあらゆる処理が施される。しかし、ヴォーカルにそういった処理をしようとする者は少ない。声は最もリアルな楽器であり、そういった処理を施すのが邪道だとみなされがちだからだ。私はそれが我慢ならないんだよ。人の声も楽器のひとつに過ぎず、いろんな方法で加工していいんだ。

ー自身の声にはどういった処理を施したのでしょうか?

ロジックのプログラムのひとつにヴォーカル・トランスフォーマーというのがあるんだが、私はそれを使って自身の声を重ねたハーモニーを作った。性別不詳な響きがあって、とても気に入ってるよ。男性でも女性でもない、どこか非現実的なそのサウンドが面白いと思ったんだ。

ー最近のラップミュージックに関心はありますか?たとえばフューチャーやカニエ・ウエストは、自身のヴォーカルを積極的に加工しています。

確かにそうだね、個人的にも彼らのことは好きだよ。ただ私の方が何十年か早かったがね(笑)「次に来るのは加工されたヴォーカルのサウンドだ」と、私は40年間主張し続けているんだ。その手法を用いた音楽で、今最も面白いのはアラビアのポップスだね。いい意味でバカバカしくて、聴いたら思わず笑ってしまうかもしれない。伝統的なアラブ音楽に過剰とも思えるアレンジを施して、それを10倍速で再生したような音楽なんだ。素晴らしいよ。

Translation by Masaaki Yoshida

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