メタリカが語る、こだわりのウイスキー造り「超低周波のサウンドを樽に聴かせるんだ」

最初の出荷分にはそれぞれのメンバーが選曲したプレイリストが付いていて、ファンはバッチ場号を選択してプレイリストを聞くことができる。ウルリッヒのプレイリストには「サッド・バット・トゥルー/Sad But True」、「ワン/One」、「ザ・アウトロー・トーン/The Outlaw Torn」、「ブロークン、ビート&スカード/Broken, Beat & Scarred」が含まれている。「完璧にその場の思いつきで選曲したから、科学的根拠なんて一切ない。前々から『ブロークン、ビート&スカード』は人気がないと思っていて、ウイスキー用語を使うなら、他の曲とは熟成の仕方が違う。『サッド・バット・トゥルー』はライブで演奏するのが好きだし、お気に入りの一曲だ。『ワン』は『ワン』だし、『ザ・アウトロー・トーン』は理由なんてねぇよ」。

オジー・オズボーンのバンドでベースをプレイしたときに「ウイスキー武将」というニックネームまで付いたトゥルージロの選曲は、自分が加入する前の楽曲ばかりだ。「ザ・フレイド・エンズ・オブ・サニティ/Frayed Ends of Sanity」、「ファイト・ファイヤー・ウィズ・ファイヤー/Fight Fire With Fire」、「オライアン/Orion」、「ディスポーザブル・ヒーローズ/Disposable Heroes」など。「俺はベースがドライブする曲にしたかった、『ディスポーザブル・ヒーローズ』みたいにね。だってそういう曲にパルスが宿っているから。頭の中で分子がベースのパルスとビートに刺激されて動いている様子を思い浮かべて、ドラムとグルーヴを考えた。それに美しさとダイナミクスとか、アート作品と同じように考えてみたんだ。それがへそ曲がりな俺のやり方なのさ」と、トゥルージロが言う。

ピッカレルはこの出来に満足している。彼には、ブランデー樽で仕上げたおかげでドライフルーツの風味加わった「リッチでフルボディのウイスキー」の味がするという。最近、ピッカレルはこのウイスキーをモルトウイスキー協会のとあるチームにテイスティングしてもらい、「スコッチウイスキー雑誌の1ページから抜け出したような年配の紳士」から合格のお墨付きをもらった。この紳士はまず香りを確認し、色をじっくり見てから、テイスティングしたという。「この紳士は本当に厳格な雰囲気をまとっていて、口の中でかみしめ、唇で音を立てて味わって、テイスティングを終えた。そして、こちらを見て『正直に言うと、かなり驚いている。これは普通に美味しい』と言った。もちろん、これは不味くはないという意味と同じだとわかっているけど、この紳士の外見と雰囲気から判断して、きっと辛口の評価になると思っていたから驚いた。そんなふうに、良い反応が届いているんだ」とピッカレル。



彼らがローリングストーン誌に送ってくれたサンプルはライトボディのウイスキーで、「ワン」のダブルベース攻撃で鍛えられたことを考えると、驚くほど甘くてスムーズな味わいだった。後味もほとんどなく、スッキリしている。「俺は『いわゆるアーシー』な味という表現を使うよ。かすかな切れがある点が気に入っているけど、そのあとにくるスムーズさがあるからバランスが取れているね」と、トゥルージロが言う。

まだメタリカの楽曲で鍛えていないウイスキーとの目隠しした味見をしていないウルリッヒはこう言う。「ライトな味わいで、香りも独特だし、とても現代的な味がする。それに温かみのある味だと思う。俺は大きな氷で少し冷やしてから飲んでいるよ」。

「口に含んでちびちび飲むんだ。かなり飲みやすいぜ」と、かつて「アルコホリカ」として有名だったドラマーが太鼓判を押している。

Translated by Miki Nakayama

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