甲本ヒロトと内田勘太郎によるブギ連、キネマ俱楽部で奏でた日本屈指のブルース

ブギ連(Photo by 柴田恵理)

甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)と内田勘太郎によるユニット・ブギ連が、2024年10月11日(金)、東京キネマ俱楽部でワンマンライブ「第2回ブギる心」を開催。会場に詰め掛けたファンをブルース沼に誘う濃密な一夜となった。

【写真】ブギ連、キネマ俱楽部での熱いライブ(全6枚)

甲本の歌とハーモニカ、内田のギターというシンプルこの上ない編成のユニット・ブギ連。2019年6月に1stアルバム『ブギ連』をリリースしてから5年ぶりに再始動、2ndアルバム『懲役二秒』を10月2日に発売したばかり。この日のライブは、ツアー〈第2回ブギる心〉の初日公演。ツアータイトルは1960年代にリリースされたフランス・ギャルの曲「ジャズる心」(「Le Coeur Qui Jazz)のオマージュだ。東京キネマ俱楽部へと向かうエレベーターは長蛇の列で、会場に入ると1階フロアはもちろん、2階席もギッシリ埋まっていた。

オープニングSEで、夏の夜の風情を感じさせる虫の声が静かに流れる中、オーバーオール姿の2人が大歓声に迎えられて登場、椅子に腰かけた。ヒロトがおもむろにハープを吹き、内田がゆるやかにギターを弾き出した。月明かりのような照明の下、趣のあるステージに観客たちの視線と耳が集まる。徐々に力強くストロークしていく内田にヒロトのハープがビブラートしながら歩調を合わせていく。曲が終わるとガッツポーズを見せるヒロト。〈ブルースがなぜ 俺を呼んだ ブルースがなぜ おまえらを呼んだ〉と歌詞を変えて呼び掛けた「ブルースがなぜ」では、ねっとりとしたミディアムテンポのリズムに合わせて、エルモア・ジェイムスやマディ・ウォーターズの名を引用して歌う。ザ・ローリング・ストーンズの名を叫ぶと、フロアからは「ウォー!」と歓声が上がった。昔ながらのロック好き、ブルースファンが多いかと思いきや、周囲を見ると決して年齢層は高くなさそうで、なんだか少し嬉しくなってしまう。


内田勘太郎(Photo by 柴田恵理)


甲本ヒロト(Photo by 柴田恵理)

「内田勘太郎!」「甲本ヒロト!」とお互いの名を呼び合うと、「最後まで楽しんでいってくれ! 俺たち、ブギ連!」とヒロトが叫んで、ニューアルバムからの「やっとられん」へ。内田が弾くアップテンポのパワフルなストロークに乗せて〈やっとられん〉と吐き捨てるヒロト。歌い終わると「すげー疲れるで! 倒れるまでやるぜー!」と宣言してフロアをドッと湧かせる。ラグタイム調のギターが心地良い「畑の鯛」では、ユーモラスに身振り手振りを交えながら歌い、穏やかなハープソロを吹く。内田の流麗なソロを、ヒロトは間近でジッと見つめている。内田がギターを変えてスライドギターを聴かせた「オイラ悶絶」は、マディ・ウォーターズによるブルースの古典「Rollin' and Tumblin'」にも似た展開で、〈なまあったかい 泥水 俺のブラックレザーブーツ はまり込んだ〉という歌詞もリンクしていた。内田のボトルネックが凄まじい音を立てて弦の上を吠えるように走り、ヒロトのボーカルとハープも迫力満点。曲が終わるとヒロトは曲中でハープを取り違えたことに触れて「間違うことあるんだよ。形が全部同じなんだもん」と話して会場を和ませた。

唸るようなボーカルと緊張感あふれるスライドで惹きつけた「闇に無」に拍手が沸き起こるとヒロトは、「ここ、特等席です。めっちゃええ音するんよ」と、改めて内田の横で演奏を聴き歌えることの感激ぶりを伝える。さらに、「なんもやっとらんように見えるけど、照明もよかろう? なんもやっとらんように魅せるのがかっこええんよ」と、薄明りでステージを照らすライティングも称えた。小気味良い演奏でコール&レスポンスした「気まぐれに首が」を終えたヒロトは再び「ここ、すごいぞ!」と興奮気味にひと言。すると内田も「ここも、特等席」とヒロトを指さす。そのやりとりを聴いた観客から「ここも特等席!」と声が飛ぶと、ヒロトは「今日は全部、特等席にしてありますので。楽しんで帰ってください」と粋なセリフで喝采を集めた。

Rolling Stone Japan 編集部

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