reina、さらさ、Skaaiが語る、2024年のインディペンデント・アーティストの矜持

左から、reina、さらさ、Skaai(Photo by Masato Yokoyama)

確実に新しい何かがはじまっている――。いま、多くの人がそのような期待を感じているのではないだろうか。トレンドとして定型の枠にエディトリアルされる前の、わくわくする何か。ゆっくりと静かに形を帯びつつある、共通の価値観。reina、さらさ、Skaaiという3人は、それぞれ独自の活動スタイルのもと、ゆるやかにコミュニティを形成しながら、国内インディペンデント・シーンにおいて大きな熱量を生みはじめている。

コレクティヴ<w.a.u>に活動の基盤を置くreinaは、アルバム『You Were Wrong』(2023年)、EP『A Million More』(2024年)といった優れた作品で着実に存在感を高めてきた。さらさは、音楽のみにとどまらない多彩な才能を活かしながらじわじわとファンベースを築き、今年リリースした『Golden Child』で決定的なインパクトを残した。Skaaiはラップコミュニティに軸足を置き『WE’LL DIE THIS WAY』(2023年)という充実作を作りつつも、yuya saito(yonawo)、Alex Stevensとユニット・TRIPPYHOUSINGを結成し新たなスタートを切った。全くばらばらの3人だが、どこか共通点も見いだせる。自然体で、芯があって、それぞれの思想に共感するような形でリスナーが集まってきている――同時にそれが、既存の音楽シーンに一石を投じるような問題提起にもなっている。共鳴するアーティスト、共感するリスナー、さまざまな人がゆっくりと群がり、気づくと大きなうねりになっていた。まさしくそれは、2020年代のインディペンデント・シーンに根づきつつある文化と言ってよいのではないだろうか。

その3人は、10月16日(水)にSHIBUYA WWW&WWWβにてイベントのvol.2を開催する。3人は何を考え、どのようなスタンスで表現活動に向き合っているのか。リラックスした雰囲気でトークははじまった。

—皆さんは普段お互いの作品を聴いたりライブを観たりする中で、どんなことを感じているのか知りたいです。reinaさんについて、お二人どうでしょう。

Skaai:reinaは、繊細にメロディをとっているように見えて実はコブシをきかせてるイメージ。 スムーズに歌ってるようだけど意外に力強くて、そこが好き。この前初めてライブを観させてもらって、グッと引き寄せられるアーティスト性があると思った。

reina「A Million More」



—確かに、reinaさんからは強い芯を感じる。

Skaai:そう。話してても引き寄せられるよね。

さらさ:いつもナチュラルだよね。すごく自然体なのがいいなと思ってて、楽曲と人が一致してると思う。そこが全然一致しないアーティストもいて、そういうのって私はちょっと苦手というか、嘘つきって思っちゃうんだけど(笑)、reinaはそういうのがない。スッと入ってくる。

—ちなみに、w.a.uのプロデューサーのKota Matsukawaさんは「映画に例えると、さらさはフィルムにザラつきが出れば出るほど、reinaはなめらかになればなるほど歌が素敵になる」とおっしゃっていました。周りがざわついている方が良いのがさらささん、静かな方が良いのがreinaさん、とのことで。

さらさ:なるほどね、そうかも。私とreinaって、全然別物な感じがするよね。たぶん性格の違いも関係してると思う。

reina:私は日本語詞を書くのが前から苦手なんだけど、さらさの曲を聴くと、力んでないけど素敵な言い回しを歌えていて本当に羨ましいと思う。ライブでも、力んでないのに会場をドラマティックに空気感を変えられる。パフォーマーとしてすごい。緊張感を高める時もあるし温かい空気や悲しい空気を出す時もあって、本当にすごい。参考になるし、自分にはない視点をもらってる。

さらさ - f e e l d o w n [Official Music Video]



Skaai:さらさは、さらさにしか見せられない景色があるよね。自分だけの世界があって、それをどう伝えたらいいか分かってる感じ。日本語の奥ゆかしさや繊細な発声の仕方が独特。語尾も特徴的だし、日本語でこんなカッコよく歌う人がいるんだって思った。あと、音楽とジャケの世界観がマッチしてる。さらさのテンポというのがあって、こっちが狂わされてるんだけど心地いいというか。メッシのドリブルみたい。メッシのドリブルって、テンポ感が独特だから気づいたら抜かされてる。なんか歯車が違うんだよね。



さらさ:ふふ、メッシだって(笑)。

全員:(笑)

—逆に、Skaaiさんについては、お二人はいつもどんな感じで見てますか?

さらさ:Skaaiの曲を聴くと、いつも食らっちゃってDMするんだよね(笑)。こいつ本物だ、ってなって。トップラインもラップも全部すごくて、メロだけを作る人よりも良いメロを作ってくる。リリックに関しても、ハッとするし共感もする。同い年でこんな人がいるなんてすごく嬉しい。

Skaai - WE'LL DIE THIS WAY (Music Video)



Skaai:確かに、DMが来るね(笑)。

さらさ:Skaaiのことをヤバいと思ってる人はたくさんいるんだけど、わざわざそんな連絡しないじゃないですか。でもこれは伝えないと、この人にできるだけ長く音楽を続けてもらわないと、って思ってDMするんですよ。褒めないと、という衝動に駆られる。

reina:Skaaiとはこの前大阪で初めてライブが一緒になったんですよ。そこでパフォーマンスを観て思ったのは、そんなにステージで動いてるわけじゃないのになんでこんなに動いて見えるんだろうって。身体の大きさの違いではなくて……やっぱりオーラなのかな。

Skaai:俺は一番最初のライブから大きいステージでやらないといけなかったし、それも関係してると思う。reinaのライブは、皆の視点を一極集中に集めるのがうまくて、それが良い。一方で、さらさは包み込んで自分の世界に持っていく感じだよね。気づいたらさらさのペースに飲み込まれてる。『フォレスト・ガンプ』みたい。

全員:(笑)


Photo by Masato Yokoyama


Skaai(Photo by Masato Yokoyama)

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