SawanoHiroyuki[nZk]が語る10周年ベストアルバム、小室哲哉、ASKAからの影響

SawanoHiroyuki[nZk]

様々な映像作品の音楽を手掛け、近年はSennaRinやNAQT VANEのプロデュースでも注目を集めている澤野弘之。そんな彼のボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキ ヌジーク)のプロジェクト始動10周年記念ベストアルバム『bLACKbLUE』が10月2日にリリースされた。

今回のインタビューでは、10周年を迎えるまでの[nZk]のストーリーを振り返りつつ、本作『bLACKbLUE』に名を連ねるASKAや岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、Aimerをはじめとした豪華アーティスト陣とのコラボレーションにまつわるエピソードも語ってもらった。さらには、TM NETWORKのトリビュートアルバムにて「BEYOND THE TIME」をカバーした件~小室哲哉から受けた影響など、澤野弘之および[nZk]のルーツについても掘り下げた貴重なテキストとなった。

ー[nZk]始動10周年記念ベストアルバム『bLACKbLUE』の話を伺う前に、今春『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』にてSennaRinさんと「BEYOND THE TIME」をトリビュートした件について話を伺わせてもらってもいいですか。

澤野弘之:参加させて頂けてすごく光栄でしたね。僕は学生時代にTM NETWORKの音楽を聴いて、小室哲哉さんのアプローチの仕方にも影響を受けました。その前にASKAさんの影響を受けて、当時はシンガーソングライターになりたいと思っていたんですけど、自分が歌うのは違うなと。そんな中でTM NETWORKを知って「キーボードで曲を創っている人がこんなに目立っているバンドがあるんだ!」と驚いて、こういう在り方を目指すのもアリかもしれないなと思ったんですよね。

ー澤野さんのスタイルのひとつのルーツになっていると。

澤野弘之:そういうTMに対する思い入れがある中で、トリビュートアルバムに参加することができた。これは本当に嬉しいことだったんですけど、運が良かったなって。きっと僕はガンダムの音楽を担当していたから声をかけてもらえたと思うんですよね。それと『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が繋がって、その主題歌だった「BEYOND THE TIME」をカバーさせてもらえることになった。だからラッキーだったなって。

(※澤野弘之は『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムNT』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の劇伴やテーマ曲、お台場「実物大ユニコーンガンダム立像」の演出プログラムやテーマ曲を担当している)

ー「BEYOND THE TIME」にはどんな印象を持たれていました?

澤野弘之:自分がガンダムを観てみようと思ったのは、作曲を教えてくれていた先生がガンダム世代で「観てみれば?」と言われたのもあるんですけど、TMを聴いていく中で「BEYOND THE TIME」を知って、後追いで『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を観たんですよ。で、映像と共にあのエンディングへの入り方を目の当たりにしたら「BEYOND THE TIME」の聴こえ方が変わって。それで「BEYOND THE TIME」がこんなに支持されているのは、この作品との親和性があったからこそなんだろうなと気付いたんです。

ー今のエピソード、その後の澤野さんの劇伴やテーマ曲などの仕事にリンクする話ですよね。

澤野弘之:たしかにそうですね。映像を通して聴くと音楽の印象が変わっていく。それを実感して意識するようになった体験のひとつでした。

ーそんな「BEYOND THE TIME」をSennaRinさんとカバーしてみていかがでした?

澤野弘之:すごく楽しかったです! FANKS(※TM NETWORKファンの呼称)の皆さんに伝わっていたら嬉しいと思うのは、TMのバージョンは宇都宮隆さんがそんなに激しく歌わずクールに歌ってるイメージなんですけど、僕らがカバーするならソレの逆をやろうと。敢えて激しくエモーショナルに聴こえるように歌う。なので、キーの設定もクールに聴こえるように落とすんじゃなくて、SennaRinの中でも激しい声を出さなきゃいけないぐらいのキーに設定しました。だから、Aメロから大変そうではあるんですけど、そのほうが違いが出るし、僕らがカバーする意味もあると思ったんです。

ー実際にそれを感じ取っているFANKSは多いと思います。オリジナルはストーリーテラーのように俯瞰的に歌っている印象に対し、SennaRinさんはその世界の主人公のように主観で歌っている印象を受けるんですよね。

澤野弘之:それを感じ取ってもらえたのなら嬉しいです。あと、TMのトリビュートの話をする機会がこれまでなかったので、ここで語らせえてもらえて有難いです!

ーちなみに、TM以降の小室哲哉さんは幾多数多のアーティストのプロデュース楽曲をリリースしてきました。澤野さんも今回のベストアルバム『bLACKbLUE』のトラックリストを見れば分かる通り、幾多数多のアーティストと楽曲を制作していますが、そういった面でも何らかの影響は受けているんでしょうか?

澤野弘之:本当に偶然なんですけど、今日ここに来る前に小室さんのドキュメンタリーをたまたま観ていたんですよ。その内容も含めて話すと、小室さんはプロデューサーとしてアーティストを売る為にはどうしたらいいか、それをすごく考えられていた。でも僕には、もちろんひとりひとりのボーカリストのことを考えて楽曲制作されていたと思うんですけど、小室さんが主役として存在しているように見えるところもあったんです。

ー真ん中にいるイメージでしたよね。

澤野弘之:プロデューサーだけど、主軸にいるイメージ。いろんな人に合わせてカメレオンみたいに曲を提供できるプロデューサーも凄いと思うんですけど、僕は「小室哲哉、ここにあり」みたいな姿勢でプロデュースしている存在に憧れていたんですよね。小室さんはプロデューサーだけど、やっぱりアーティストなんですよ。そこは自分がのちのち音楽活動をしていく中でも影響を受けていたと思います。別に出しゃばるわけではないけれども、自分という存在をちゃんと感じ取ってもらえるような音楽活動を劇伴にしても、プロデュースにしても、この[nZk]にしてもやっていたい。そういう気持ちは常にどこかにある気がします。

Rolling Stone Japan 編集部

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