ペール・ウェーヴスが語るブリティッシュな原点回帰、クィアな愛を祝福する音楽

大好きな日本への特別な想い

『The Honey POP』というメディアのインタビューのなかで「Not a Love Song」がアルバムの推し曲だと仰っていましたけど、その理由について聞かせてください。

ヘザー:ああ、この曲は家のリビングでアコースティック・ギターをつまびきながら一人で書き始めた曲なんですけど、ヴァースが最初に浮かんできたんです。でも、そこで止まってしまって、何カ月か経ってサビの部分ができました。ちょっと時間がかかった曲なので、その分、思い出深いというか。クィアであることを自分自身で認める準備ができていない女性と短い関係を持った時の話を歌詞には書いてるんですけど結構、強烈な体験で……彼女は私を振り回しまくって、結果的にめちゃくちゃ傷ついちゃったなって歌ですね(笑)。



ー他に特に印象深い曲はありますか?

ヘザー:あ、そうそう。日本盤のボーナストラックに収録する予定の曲があるんです。「Anna」って曲なんですけど。この曲は高校時代に夢中になっていた女の子について書いたんですけど、彼女はクィアじゃなくて完全なストレートだったんですよ。絶対に一緒になれないってわかっているけど、好きだという気持ちを伝えたいっていう彼女に向けた切ないラブレターみたいな曲ですね。日本の皆さんだけに贈る、特別なトラックです。

ーインタビューの冒頭で今作の制作過程ではリファレンスとなるような音楽を聴かなかったと仰っていましたが、映画や文学からは何かインスピレーションは受けましたか? 別のインタビューではジャネット・ウィンターソンの小説『オレンジだけが果物じゃない』を挙げてらっしゃいましたが。

ヘザー:クィア文学や映画はとにかくたくさん読んだり・観たりしていました。『オレンジ〜』以外だと、小説だったらリタ・メイ・ブラウンの『ルビーフルーツ・ジャングル』、サラ・ウォーターズの『ティッピング・ザ・ヴェルヴェット』。映像作品だったら『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』や『燃ゆる女の肖像』『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』『サマーランド』とかですかね。他にもいっぱいあったと思うんですけど、今思い出せるのはこれぐらいかな。音楽を聴く代わりに、こういうコンテンツを大量に吸収しながら『Smitten』は作りました。

ー『Smitten』が聴く人に情景を喚起させたり、物語性の強い作品になったのは、それが理由かもしれないですね。このアルバムは映画のサウンドトラックとしても通用しそうです。

ヘザー:いっそのこと映画を作った方がいいかもしれないですね(笑)。ペール・ウェーヴスの音楽はサウンドトラックにぴったりだって、自分たちでも思ってるから、日本の映画関係者の方、もしよかったらぜひ使ってください(笑)。

ー先ほど「クィアな愛を祝福する」というお話がありましたが、実際、このアルバムを聴いて救われる全世界のLGBTQ+の若者たちは多いんじゃないかと思うんです。私自身、若者ではないにせよ、勇気づけられた人間の一人で。ヘザーさんに伺いたいのは、今のあなたが過去の苦しんでいるあなたに声をかけるとしたら、どんなことを伝えますか?ということなんです。過去のあなたはこの素晴らしいアルバムを聴くことはできないので。

ヘザー:ははは、そうですね(笑)。そうだなあ、なんて言おうかな……。「時間がすべてを癒してくれるよ」って言ってあげられたらいいなって思いますね。時間が経てば、今感じている辛いことや悲しいことは、そんなに大きな問題ではなかったってことに気づくことができる。時間がそのことを教えてくれるし、あなたを癒してもくれるから、心配しなくていいよって言ってあげたいですね。

ーそして、その時、経験した感情から素晴らしい作品を生み出すこともできますしね。

ヘザー:その通りです。悪い経験をポジティブなものに変えたり、イケてる曲を書くことだってできるようになるんだから、大丈夫!


Photo by Kelsi Luck

ー最後に、12月には来日も予定されています。本当に力強いアルバムなのでどんなライブになるのか今から楽しみです。

ヘザー:『Smitten』の世界観をステージ上で再現したくて、ロマンチックでフェミニンな雰囲気のセットにしたいなって考えてるんだ。それをそのまま日本に持っていけたらいいなって思ってるけど、どうなるかはまだわからないです。さっき話した日本盤のボーナストラックの「Anna」も演奏するかもしれない。

ー今からすごく楽しみにしています!

ヘザー:そうそう、最後に言わせて欲しいんですけど、私、本当に日本が大好きなんですよ。いつもスタッフに「いつまた日本に行けるかな?」って何度も聞いてるぐらい夢中で。人も文化も本当に素晴らしい。そんな大好きな日本のツアーでは他とは違う特別なことができたらなって思ってるので、ぜひ遊びにきてくれたら嬉しいです!






ペール・ウェーヴス
『Smitten』
発売中
再生・購入:https://lnkfi.re/PXOjvbSs


ペール・ウェーヴス来日公演
2024年12月9日(月)大阪BIGCAT
2024年12月10日(火)東京・豊洲PIT
詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/pale-waves24/

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