スティーブン・サンチェスが語る、Z世代が1950年代のロマンスとロックンロールに魅了される理由

Photo by Takuya Maeda

 
サマーソニック東京公演の初日、昼下がりのMOUNTAIN STAGEを沸かせたスティーブン・サンチェス(Stephen Sanchez)は、多くの観客にとって嬉しいサプライズだったに違いない。弱冠21歳の実力派が歌うのは、1950〜60年代にタイムスリップしたようなロックンロールとスウィートなバラード。熱量や艶やかさの込もったパフォーマンスは、さながらエルヴィス・プレスリーのようだった。

サンチェスは2002年生まれ、拠点は米テネシー州のナッシュヴィル。日本での知名度はこれからだが、17歳でTikTokにケイジ・ザ・エレファント「Cigarette Daydreams」のカバーを投稿したことから注目を集めるようになった彼は、すでに確固たるファンベースを築き上げている。2021年に発表したノスタルジックな三連バラード「Until I Found You」もTikTokで歓迎され、Spotifyで10億回再生を突破。昨年にはグラストンベリー・フェス史上最高動員を記録したエルトン・ジョンのステージに招かれ、同曲をデュエットするという最高の名誉を得た。

その後リリースしたデビューアルバム『Angel Face』は、マネスキンのダミアーノも年間ベストに挙げるほどの充実作。今年のサマソニで同日出演だったレイヴェイとのデュエット曲も収録されているが、彼女がジャズやグレイト・アメリカン・ソングブックを現代のポップスに昇華しているのと同じように、サンチェスは祖祖父の影響で出会ったというオールディーズやロックンロールを深く掘り下げつつ、Z世代の感性でもって捉え直すことで、世界中の若いリスナーたちを虜にしている。彼ら彼女らの歌うロマンスとノスタルジーを知らずに、今の音楽は語れない。ライブ終了直後のサンチェスに話を訊いた。




サマーソニック出演時のライブ写真 (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.


「Until I Found You」が生まれるまで

―今回が初来日ですよね。日本を訪れてみて何か発見はありましたか?

サンチェス:神社に行ったよ。立派な場所だったな。渋谷を何時間も歩き回って、おいしいごはんを食べたし、楽しんでる。日本人はみんな親切で思いやりがあるし、すべてに神聖さが備わっていて、みんなが敬意を持って扱っている。その心持ちに感銘を受けるね。

―ライブも素晴らしかったです。パフォーマンスではどんなことを大切にしていますか?

サンチェス:とにかく集中して、僕自身も演奏や歌を楽しもうとすること。


Photo by Takuya Maeda

―魅力的な歌声をされてますが、シンガーになろうと思ったきっかけを教えてください。

サンチェス:子供の頃に自分を信じることの大切さを教えてくれた両親や、喫茶店とか、そういう場所で歌っていた時に応援してくれた人たちのおかげだね。それに好きなバンド、音楽はいつも僕を励ましてくれた。大勢の前で演奏することは長年の憧れで、ライブを観に行った時には、いつも目を閉じてステージから見渡す大観衆の光景を想像してたんだ。

―今回のライブでも大いに沸いた「Until I Found You」は、Spotifyで10億回以上も再生されていますが、あなたはこの曲をたった15分で書き上げたそうですね。いったいどのようにして生まれたのでしょう?

サンチェス:当時デートしていたジョージアという女の子とのストーリー......ただそれだけ! 彼女へのラブソングなんだ。

―具体的には?

サンチェス:彼女と出会って、恋に落ちて......彼女へのラブソングを書きはじめたんだ、それも思い立ったように。今はもう一緒にいないけど、彼女はすばらしい人で、お互いの幸せを願ってる。

―そういったインスピレーションだけでできあがった曲といっても過言ではない?

サンチェス:ああ、そうだね。


Translated by Natsumi Ueda

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