ロックバンドの存在意義を示した「ツタロックDIG Vol.14 OSAKA」現地レポ

「ツタロックDIG Vol.14 OSAKA」よりトリを務めたmoon drop(Photo by @松本いづみ)

「ツタロックDIG LIVE Vol.14」が2024年6月22日に大阪の心斎橋BIGCATにて開催された。今、チェックしておきたい次世代のシーンの主役を集結させる「ツタロックDIG」は2021年より規模を拡大し、大阪では3度目の開催となる。今年はFish and Lips、berry meet、TRACK15、606号室、レトロマイガール!!、ガラクタ、トンボコープ、アルステイク、moon dropと、期待を集めるロックバンド9組が出演。9組それぞれの個性がふんだんに出たこの日のライブレポートをお送りする。

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Fish and Lips(Photo by @松本いづみ)


1組目はオープニングアクトのFish and Lips。

西村大地(Vo.Gt)、岩本柊平(Ba)、岩田雄大(Dr)からなる、3月に高校を卒業したばかりのスリーピースロックバンド。登場した3人はステージ上で気合を入れ、「埼玉、フロム鳩ヶ谷! Fish and Lips始めます。よろしくお願いします!」という西村の言葉から「HERO」がスタート。

時刻は12時20分とまだ開場中であったが、鳴り響き出したロックバンドの確かな音に目掛け、観客はどんどん前に詰めてくる。そして手拍子、拳もみるみる増えていき、サビではフロアからも歌声が聴こえるように。

曲が終わって拍手が起こった後、西村から「オープニングアクトなんですけど、そういうのもひっくり返せるように一生懸命頑張ります。よろしくお願いします!」と話し、「会いたくなったら」がスタート。演奏中「会いたかったよー!」と西村はフロアに向けて叫ぶ。フロアも「こっちもやでー!」と言わんばかりのウェルカムな反応で、既に早耳リスナーには彼らの音楽がしっかり届いていることが分かる。そして盛り上がりそのままに間髪入れずラストの「青春ロックを歌って」をスタート。10代の少年達が、BIGCATという大きなステージの照明に照らされながら、堂々としたライブを行い、サビで合唱を巻き起こす姿は、間違いなくロックヒーローの原石といえよう。最後はより情感たっぷりに<ギターがある 音楽がある なんて素晴らしい青春だ>と歌い上げると、万雷の拍手が巻き起こった。そして「ツタロック大阪へ、ようこそ!」と西村が叫び、次世代の若手ロックバンドを発掘するイベント、「ツタロックDIG LIVE Vol.14-OSAKA-」が幕を開けた。


berry meet(Photo by @松本いづみ)

2組目に登場したのは東京のスリーピースロックバンド・berry meet。

SEこそしっとりとしたものだが、たく(Vo.Gt)の「berry meetです! よろしくお願いします!」から1曲目の「煌めき」のギターイントロが始まると、もう一気に3人らしいハツラツとしたPOPロックの世界に変わる。この曲はただ明るいだけでもなく、曲中でリズムの緩急も何度も変わっていってアトラクション性も高い。その完成度もあって、しっかりBIGCAT”全部”を愛で包み込んでいた。そんな空間で2曲目「純情」が始まると、すぐにクラップの嵐。たかなり(Ba)といこたん(Dr.Cho)の力強く骨太なビートも、よりフロアを煽る効果を出して、ラスサビのハモリは会場との一体感が大炸裂した。

続くMCでたくは「今日は来てくれてありがとう。”沢山皆に会いたい”という気持ちからberry meetというバンド名を付けました。バンド始めてから1年以上経ったのか。沢山の人が僕らと出会ってくれて、今日もこんなに沢山の人が来てくれて、berry meetというバンド名に恥じないバンド活動ができているんじゃないかと思っています。ありがとう!」と感謝を伝え、「今日実は満月なんですよ。6月の満月ってストロベリームーンと呼ばれてるらしくて。berry meetのベリーと月、ムーンと言ったら、この曲を演るべきじゃないかって思いました」と「月が綺麗だって」を披露。サウンドやMVの印象からクリスマス時期のイメージが強い曲でもあるが、先ほどのMCもあり<君に会いたくなって>という言葉が今日という場所にもしっかり刺さる。ただ涼やかで感傷的な気持ちを抱いたのも束の間。攻撃的なベースラインが鳴り出し、一気にダークで危険な香りを漂わす「幸福論」が始まる。サスペンス的な赤色な照明に染まった会場は虚をつかれた様子もありながら、このビートからは逃れられない。踊り出すしかないフロアだった。

続くMCでは3人は和やかに今日BIGCATや3月幕張メッセでの「ツタロックフェス2024」に出れたことへの感謝を話した後、「バチバチに盛り上がる」という新曲「溺愛」のコールアンドレスポンスのレクチャーに入る。フロアからは「大丈夫!」と「誓います!」とレスポンスするのだが、もう認知はバッチリ。演奏中の多幸感は結婚式を5分に凝縮したと言っても過言ではない。そしてラストの「図星」へ。ここでギターが鳴らなくなるハプニング。しかし、そこは昨年急速に注目を集めてから、それに見合うだけ鍛え上げてきたたかなりといこたんの力強い演奏力、3人のマイクワーク、そしてここまででフロアと作り上げてきた一体感パワーによって、より多幸感は高まった時間となった。ラスサビ前にはギターも復活し、しっかり演奏しきった彼らは「また来ます!」と宣言。「優しいフロアで楽しかったです。ありがとう!」とたくが話し、フロアを後にした。


TRACK15(Photo by @松本いづみ)

3組目は地元大阪からTRACK15。

蓮(Vo.Gt)がリハーサルで宇多田ヒカルの楽曲の一節を歌った瞬間でさえ、一気に会場の空気を変えた彼らは「プラネタリウム」からスタート。今が昼であることを忘れるほどの”暗”も活かした照明と星の煌びやかな情景が一瞬で浮かぶ寺田(Gt)の洗練されたギターが鳴り響く。疾走感のあるサウンドも相まり、本当に僕らは夜の山へ星を見に夜間ドライブをしている感覚に陥る。

挨拶の後、「BIGCAT、飛べますか?」と言って始まったのは「シティーライト、今夜」。しっかりフロアは躍動し、Bメロでは「パン、パパン」のリズムの揃ったクラップが鳴り響く。わずかこの2曲でもTRACK15とあなただけの空間を日常を忘れるほど作り上げる。最後は「1、2、3、JUMP!」の掛け声でより一層フロアは飛び跳ねた。

MCで「皆が「やっぱり音楽って最高やな」って思って帰ってもらえるように、あわよくば帰り道のイヤホンから流れる音楽がTRACK15の音楽であるようなライブをして帰ろうと思います。よろしくお願いします!」と話した後、「話したいこと」をスタート。ここでも優しい手拍子の発生と「歌って!」の合図でフロアも歌い出すなど、音楽を通して繋がりを感じ取れる時間が流れる。そのまま前田(Dr)のリズムの良いドラムの繋ぎから「朝起きたらもう13時やったっていう曲やります」と「私的幸福論」を投下。高橋(Ba)の優しいベースもあり、ちょうど昼の時間に聴くこの曲を聴くと、休日の昼ならではの解放感が生まれ会場は満ち溢れる。本当に夜に昼にと、彼らに時間を操られている感覚が続く。夢の中にいる感覚にも近いかもしれない。

再びMCで蓮は「このステージに立たせてもらえて本当に嬉しいです」と感謝を伝えた後、「『ツタロックDIG』っていうイベントは僕らにとって本当に憧れで。1年前もこのBIGCATで『ツタロックDIG』があったんですけど出れなくて、悔しくて、メンバー4人で見に行ったことをすごい覚えています。その時は関係者の方に『TRACK15って大阪でバンドやってます』ってCD渡して、名刺渡して、よかったら聴いてくださいって挨拶してたのが1年前。そこから自分達の信じる音楽とやり方で、なんとか今このステージに立つことができました。でも、俺らの力じゃないと思っていて。それはいつも言うんですけど、俺らがどんだけ良い音楽をして、良い演奏をして、良い歌を歌っても、聴いてくれる皆がいないとなかったのと同じだから。いろいろ毎日選択肢がある中に、ライブハウスに来てくれて本当にありがとうございます」と話すと会場からは大きな拍手。「これからも1年前と変わらず、自分達の信じた音楽で、やり方で、皆と一緒に1年前にはなかった音楽をどんどん作って、また皆に会いに来ようと思います!」と感謝を伝えた後、新曲「青い夏」をラストに披露。クリアなサウンドと歌声が慈雨のように降り注ぎ、宣言通り彼ららしさは残りつつ、また違った感触も残る1曲となっている。またこの曲も、夏以外に聴いても、夏の情景に閉じ込めてしまうのだろうな。日常から時間という概念を忘れたい人、TRACK15の音楽をイヤホンから流し、彼らのいるライブハウスに行きましょう。

Rolling Stone Japan 編集部

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