テレビ大陸音頭が語る結成秘話 バズりまくりの若きバンドを生んだ底知れぬ音楽ルーツ

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2023年に札幌市の高校で結成されたテレビ大陸音頭の台頭は、今年上半期の音楽シーン最大の事件といっても過言ではない。彼らの初シングルにして現時点で唯一の正式リリースである「俺に真実を教えてくれ!!」が6月に入ってSNSで注目を集めると、Spotifyバイラルチャートで3週連続1位を獲得。驚きのサクセスストーリーは地上波のニュース番組でも取り上げられ、その名を日本中に轟かせている。



70〜80年代のポストパンクに影響を受けた鋭いリフ、ぎくしゃくした痙攣グルーヴ。1分34秒を一瞬で駆け抜ける「俺に真実を教えてくれ!!」は、どう考えてもメインストリームのトレンドから逸脱した楽曲で、ここまで型破りなバズも珍しい。そこで調べるうちに、7月1日に東京・渋谷クラブクアトロで開催されるイベント『Pure vibes only ~風景 Landscape~』に出演することを知り、「今見ておかなければ!」という思いでチケットを入手した。

結論から言うと、テレビ大陸音頭は正真正銘の本物だ。この日が東京での初ライブだったそうだが、彼らは肝の据わり方も規格外。INU時代の町田康も想起させる千代谷竜司(Vo, Gt)は、シュールとエキセントリックが入り混じった表情で歌い叫ぶ。鈴木隆太郎(Gt)はあどけない風貌から想像のつかないギタープレイでノイズを撒き散らし、ヤナガワヒロト(Dr)はスティックも跳ね飛ぶほどの爆発的なエネルギーで叩きまくる。

あそこまで凄まじいライブを目撃したら取材するしかない。かくしてインタビューが実現し、結成から今日に至るまでの話をたっぷり語ってもらった。好きな音楽の話になると止まらなくなる3人。「高校生であること」が取り沙汰されがちだが、個人的には彼らのピュアな音楽愛と、自分たちの感性を信じて突き進む姿勢にシンパシーを抱いている。(インタビュー:小熊俊哉/構成:最込舜一)


左から戸借晴亜(Ba・サポートメンバー)、千代谷竜司、ヤナガワヒロト、鈴木隆太郎 2024年7月1日、東京・渋谷クラブクアトロにて撮影(Photo by saylaphotos)


『Pure vibes only ~風景 Landscape~』出演時のフル映像


―東京での初ライブはどうでしたか?

千代谷:いつも通りの気持ちで臨めました。

鈴木:テンション上がりました。

ヤナガワ:デカいとこだったし、気合いの入りようが違いました。

筆者がライブ当日に撮影した動画。「あれは『エビチリ』という曲です。友達と弁当を食ってた時に、彼のエビチリを取ろうとしたら『エビチリは俺のもんだ!』って言われて。それがthe hatchの『恐竜は俺の祖先』みたいだなと思って。曲としてはノーウェイヴを意識した感じですね」(千代谷)

―演奏技術の高さに加えて、自由奔放なパフォーマンスにも驚きました。千代谷さんはリコーダーを吹いたり服を脱いだり、ステージ狭しと動き回っていて。他のライブでは逆立ちしたりフライパンを叩いたりもしてきたみたいですね。

千代谷:面白いと思ってもらえるように、色々と駆使して盛り上げています。必死に奇天烈な動きを試行錯誤して、強烈なインパクトを与えられるようにしているつもりです。




千代谷竜司(Photo by saylaphotos)

―鈴木さんが2台のギターをかき鳴らしていたのも強烈にかっこよかったです。

鈴木:北海道の苫小牧にライブで行くことがあって、そこのハードオフでちっちゃいギターが1650円で売ってたんです。「買うしかねえ! 2本背負えばいいじゃん」みたいな流れになって、それから愛用してます。

―ギターの演奏も見せ方も上手くて驚きましたが、始めたきっかけは?

鈴木:もともと小学生の時はドラムをやってました。楽器自体はちょくちょくやってて。ギターは中学2年生の時にコロナが流行って、学校が休みになった時期に触ってみようかなと思って始めました。好きなバンドのタブ譜を見ながら練習しました。

―好きなバンドというと?

鈴木:スライ(&ザ・ファミリー・ストーン)とかですね。ヴルフペックとかディアンジェロもめっちゃ好きで、最初はファンクのギタリストになりたかったんです。

―好きなギタリストは?

鈴木:最近の人だとコリー・ウォン。ずっと自分のなかで中心にいて目標にしているのはジミヘンですね。




鈴木隆太郎(Photo by saylaphotos)

―ヤナガワさんも強烈な2人に負けず劣らず、パワフルに叩く姿が印象的でした。ドラムについて意識していることは?

ヤナガワ:もともと和太鼓をやってたので、和のリズムが中心になってるところがあって、頭の拍を特に意識してリズムをとってるところはあるかもしれないです。父親がコピーバンドをやっていて、それに合わせて小さい頃からカホンやドラムで遊ばせてもらったりして。和太鼓はお祭りで見て興味をもつようになり、小1から中3までずっとやっていて。高校に入ってからドラムを叩くようになりました。

―好きなドラマーは?

ヤナガワ:中村達也さん(BLANKEY JET CITYなど)。テクニックよりもパワープレイという感じで、叩く姿が情熱的だしかっこよくて憧れます。




ヤナガワヒロト(Photo by saylaphotos)

―千代谷さんが音楽に目覚めたきっかけは?

千代谷:父親がザ・クラッシュやセックス・ピストルズなどのパンクや、電気グルーヴが好きで。家にあったCDを漁っていたら自然と好きになっていきました。そこから自分で掘っていくうちにDevoと出会ったんです。「(I Can't Get No) Satisfaction」のMVを見て、ポストパンクってこういうことなんだって思いました。カクカクしてるけどファンキー。聴いたことのないような音楽でした。

―それがいつ頃の話ですか?

千代谷:小学6年生ぐらいですね。ニンテンドー3DSでインターネットブラウザが使えたので、それで色々音楽を掘ってたら「70年代バンドまとめ」みたいな動画が出てきて、それで知りました。そこからポストパンクをもっと聴くようになり、トリプルファイヤーとかも大好きになりました。




―すごい小学生! ポストパンクのどんなところに魅力を感じたのでしょう?

千代谷:気持ち悪い動きをしていて、ドラムも変なリズムだし、それがかっこいいなと思ったんです。ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスのくねくねしてる感じとかもかっこよすぎるなと思って。自分もリスペクトで、ちょっと奇天烈な動きをしてます。


Text by Shunichi MOCOMI

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