KOBAMETALが語る、BABYMETAL主催フェス「FOX_FEST」の見どころ 出演アーティスト解説

「FOX_FEST」を彩る出演アーティストについて

—一組ずつ、KOBAMETALさんの推しポイントを教えていただけますか? まず、エレクトリック・コールボーイから。

KOBAMETAL:彼らは前のバンド名(ESKIMO CALLBOY/エスキモー・コールボーイ)だった時からキャリアも長いんですけれども、BABYMETALとも同時期の2010年頃から活動していて。一回メンバーが変わったり音楽性も変わったりしたんですけど、最近またパーティーバンド的なノリが戻ってきて。今はライブの動員も増えてますし、ミュージックビデオも面白い。いわゆるエンターテイメント性が高い活動をしているので、BABYMETALとも相性がいいんじゃないかなという思いもあって、今回参加いただくことになりました。今回のFOX_FESTは、なるべく入り口が多い方がいいなと思ってまして、普段メタルとかラウドを聴かない方でも楽しめるようなアーティストに参加していただきたいという思いもあったんです。エレクトリック・コールボーイは4つ打ちのEDM系の音が多くて、ウルトラフェス(ULTRA MUSIC FESTIVAL)みたいなところに遊びに来ているような方や、曲を知らない方でもライブが楽しめちゃうようなノリを持っているアーティストだと思っているので、そこに期待しています。


●出演アーティスト解説:ELECTRIC CALLBOY/エレクトリック・コールボーイ

ESKIMO CALLBOY名義から2022年3月に改名。2021年リリースの「Hypa Hypa」が大ヒット、YouTube再生数が数千万回に達する名曲を複数持つに至ったモンスターバンドだ。一般的にはエレクトロニコア(電子音を多用するアゲアゲのメタルコア、日本ではピコリーモとも呼ばれる)に分類され、「Hypa Hypa」のユーモラスなMV(80年代ヘアメタルをよりポップにした感じ)が示すようにパーティーバンド的なノリが前面に出ているのだが、音のほうは完全に能天気なわけでもないのが面白い。仄暗く爽やかなメロディが北欧メタルに通ずる一方で、重厚なインダストリアル感にはドイツ出身ならではの渋みがあって、それらをハイパーポップ以降の強烈な勢いのもと統合する、という配合はこれまでありそうでなかったものだろう。アンドリューW.K.のファンにもラムシュタインのファンにもアピールしうる得難い音楽だ。世界的な人気(単独公演ではアリーナ規模で大合唱が巻き起こる)を鑑みれば今回の来日は非常に貴重な機会。必見だ。(s.h.i.)



Electric Callboy - Hypa Hypa (OFFICIAL VIDEO)




—ポリフィアはどうですか?

KOBAMETAL:ポリフィアさんはペリフェリー(PERIPHERY)とかアニマルズ・アズ・リーダーズ(ANIMALS AS LEADERS)とか、数年前から注目されはじめているジェント系のバンドシーンのなかで登場されたバンドなんですけど、ワタクシの個人的な感覚としてはそのなかでも特にセンスが立っている方々だなと思っていて。もちろん演奏も楽曲も素晴らしいんですけど、特にビジュアルがいいなと(笑)。「ビジュ推し」ってワタクシは皆さんによく言っているんですけど、これすごく大事だと思っていて。例えばブリング・ミー・ザ・ホライズンとかバッド・オーメンズもそうなんですけど、楽曲やアーティストに興味がわく入り口って音楽だけじゃないと思うんですよね。アーティストの持っている雰囲気だったりビジュアルだったり、好きになるにはいろんな要素があると思うんですけど、ポリフィアはそのハードルをいい意味で下げられている。インストのロックミュージックってポピュラーなものではないと思うんですけど、彼らの持つビジュアルや、ミュージックビデオなどのアートワークの感性がすごく今っぽい。簡単に言うとおしゃれな雰囲気がいいなと思いますし、若い人も入りやすいんじゃないかな、と。ライブを見ても若いお客さんがインストの曲に合わせてモッシュしたり、クラウドサーフしてる面白い光景が見られました。いわゆるその手のバンドさんとも違う存在感ですし、音楽的な幅も広いですよね。コラボレーションも積極的に、多様なアーティストさんとやられてたりするところに、いろんなヒントがあるんじゃないかなと感じて興味を持ちました。


●出演アーティスト解説:POLYPHIA/ポリフィア

POLYPHIAは、ANIMALS AS LEADERSやPERIPHERYのようなジェント/プログレッシブメタルコアの系譜にあるインストバンドだが、超絶技巧と優美さを兼ね備えた演奏はYouTubeや各種SNSでジャンルを越えた人気を集めてきた。2022年の傑作『Remember That You Will Die』はそうした音楽活動の集大成で、ネオソウルやエモラップ経由で近年のポピュラー音楽に大幅接近。その上で、アレンジの細部は先述のようなテクニックがなければ発想もできない捻りに満ちていて、クラシックやジャズ由来の知的な美旋律がひけらかし感なく映えている。こうした音楽性が広い層にアピールしたからか、2023年の来日ツアー(残念ながら中止)も2000人キャパを完売。こんなことができるインストバンドは、出身国や音楽ジャンルを問わず稀だろう。なお、ギタリストのティム・ヘンソンとスコット・ルペイジはBABYMETALの「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」に客演している。そうした関係性や相性の良さも含め、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるに違いない。(s.h.i.)



Polyphia - ABC feat. Sophia Black (Official Music Video)




—2016年に初来日してからずっと来日してましたし、日本との絆も強いバンドですよね。

KOBAMETAL:そうですよね。彼らも日本のカルチャーに造詣が深かったり、リスペクトいただいてるようなところもあったりして、いい橋渡しをされてるなという気がしてます。BABYMETALに対してもポジティブな印象を持っていただいてるみたいなので、いいコラボレーションができたらと思っています。

—続いて、ビルムリは?

KOBAMETAL:このバンドは多分、日本ではほぼ知られてないんではないかなと思います。元アタック・アタック!(ATTACK ATTACK!)っていうバンドのメンバーさんが作ってるソロプロジェクト的なバンドで、作品ごとに形態が変わっていくんです。音楽的にもすごく好きで、さっき言った間口の広さという意味でも、いわゆるラウドメタル的な隠し味が要所要所にありつつ、一聴するとポップスやロック、チル的な要素もある。メタルとはあまり呼べないんですけど、クランチとかクリーントーンなギターを鳴らしながら、弾いてるフレーズが実はメタルコアっぽかったり、チューニングがダウンチューニングだったり。そういうところが遊び心があって面白いです。でも歌メロだけ聴いてるとすごくキャッチーで、メジャーなポップスとかロックに近い。マルーン5とかブルーノ・マーズとか、そういう方々が歌っててもおかしくないような曲っていうところが、今までメタルやラウドに接したことがない人でも入りやすいんじゃないかな、というところで興味を持ちましたね。


●出演アーティスト解説:BILMURI/ビルムリ

初期ATTACK ATTACK!でクリーンボーカルとギターを担当したジョニー・フランクのソロプロジェクト的バンド。ATTACK ATTACK!はエレクトロコアの代表格として一世を風靡したバンドで、ジョニーが参加した2枚のアルバムは、ポップでコミカルな側面がメタルコアファンの間で物議を醸したこともあったが、このジャンルを代表する傑作と見なされている。ビルムリはそうした音楽性も引き継ぎつつ現行ポピュラー音楽の要素を積極的に導入。チルでスウィートな音像にメタル由来のテクニカルなキメが程よく加わるサウンドには、他の「FOX_FEST」出演組ともまた異なる間口の広さがある。100 gecsを優しく真面目にした感じの佇まいはハイパーポップ以降のエレクトロコアにおける一つの到達点と言えるし、ジャーニーやU2のようなメロディアスなロック、またはケニー・Gのようなスムーズジャズが好きな人にアピールしうる美しさもある。こうしたサウンドがライブの場でどう映えるかも興味深いところだ。(s.h.i.)



Bilmuri & Dylan Marlowe - EMPTYHANDED (OFFICIAL MUSIC VIDEO)




—僕も今回初めて知りましたけど、キャッチーで間口が広いアーティストだなと思いました。最後は、METALVERSE(Guest Band:ASTERISM)です。

KOBAMETAL:METALVERSEはBABYMETALとは別軸でスタートさせてる実験的なプロジェクトなんですけど。先ほどもお伝えした、BABYMETALのさらに次の世代で、キャリアを積む上で経験値を高めてほしいなって思いがあって。プラス今回、ASTERISMっていう10代で結成されたバンドが参加していて。ポリフィアとはタイプが少し違いますけど、インストを主体としたメタルバンドで、彼らもすごく面白い音楽性なんですよね。実験的にアニソンのカバーをしたり、歌物の曲もやったり。ギターのHAL-CAさんは、影響を受けたフェイヴァリットギタリストが(LOUDNESSの)高崎晃さんだとか。小学生ぐらいの時からLOUDNESSを聴いてたそうです。世代的には一回りも二回りも上の人たちがリアルタイムだったものが根っこにあって、物心ついた時から日々そういうものがお家で流れていた。そういうエピソードを聞くと、すごく感慨深いというか。我々からするとレジェンドなんですけど、次の次の世代ぐらいの人たちからするとめちゃくちゃ新鮮なものだったりするっていうのが面白いなと思って。実際に出している音も、一回りも二回りもして、ストレートなメタルを演奏してるんですよね。スタンダードなものがまた新しいものになっていきそうだなとも感じて、今回出演いただくことになりました。


●出演アーティスト解説:METALVERSE(Guest Band:ASTERISM)

“多元的なマルチバースプロジェクト”としてスタートしたMETALVERSEは、BABYMETALと音楽的に共通する部分を持ちつつ異なる広がりを示してきた。ディアブロ・スウィング・オーケストラ(Diablo Swing Orchestra)にそのまま通ずる“スウィングメタル”「Crazy J」や、妖艶な歌謡曲をエレクトロコアでブーストしたような「Naked Princess」といった既発曲に加え、ライブではメタルコア+トラップメタルやラテンポップ+テクニカルデスメタル風の曲も披露され、初期BABYMETALのアイドルポップ要素を程よく復活させつつ新境地を拓いている。そのバッキングを今回担当するのがASTERISMで、3人とも20代前半(それでいて結成10年)ながら、オジー・オズボーンやLOUDNESSのような80年代HR/HMから濃厚な影響を受けており、そういった演奏・作曲センスをプログレッシブメタルコア以降の楽曲形式に落とし込むことで素晴らしい成果をあげている。この2組の合体が実際にどういったサウンドをもたらすかは未知数だが、他の4組に勝るとも劣らない個性を期待していいだろう。ぜひ観ておくことをお勧めする。(s.h.i.)



METALVERSE - Naked Princess (OFFICIAL Live Music Video)



ASTERISM - Shooting Star



—METALVERSEは僕も豊洲PITでライブを見させていただいたんですけど、まさに実験中って感じなんですね。

KOBAMETAL:そうですね。毎回毎回形を変えて。豊洲PITの時はトラックを流して5人でダンスをしていて、もはやバンド形態ではない形でのトライアルでしたね。今回はまた180度変わって3ピースのバンドとやるということで、全然違うスペシャルなステージになるんじゃないかな、と感じています。

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