Friko決定版インタビュー 「王道の名盤」をめざした高い志、衝撃デビュー作が起こした奇跡の裏側

シカゴ新世代シーンの寛容さとDIY精神

―あなたたちの地元、シカゴの音楽コミュニティについても訊かせてください。ホースガールやライフガードやドゥアール・トゥループなど、シカゴの新世代バンドは横の繋がりが強いようですが、彼らとあなたたちがシェアしているものは何だと思いますか?

ニコ:それに関しては、ただひたすら音楽愛で繋がってて。特に古き良き時代のUK音楽だよね。それは共通してるかも。あとはパワーポップ。みんなすごく親切で温かいんだ。誰でもウェルカムな雰囲気で、年齢層も幅広くて。すごく温かくて、いい感じのコミュニティだよ。

ベイリー:うん、基本みんな友達だしね。しかも、ありとあらゆる年代が音楽好きっていう一点において繋がってる。それって、すごく美しくて尊いことだなって思って。 しかもみんな、めっちゃいい人たち。ものすごい才能もあって。本当に貴重なコミュニティだと思う。

ニコ:シカゴって大都市ではあるんだけど、狭い世界だからね。ちょっとでも他人に対して意地悪だったり、いけすかない態度で接したら、すぐに悪い評判が知れ渡るんで、どうしたって良い人にならざるを得ない(笑)。だから、お互いに自然に思いやる心が生まれるし、それが音楽コミュニティの雰囲気にもそのまま反映されてる。


2022年のデビュー作『Versions of Modern Performance』が日本でも話題になったホースガール。上掲のMVにフリコも出演、ニコが彼女たちの過去曲でエンジニアを務めたことも


昨年デビューEP「Dressed in Trenches」を発表したライフガード。カイ・スレーター(Vo, Gt)は後述するZINE「HALLOGALLO」の首謀者でもある。またメンバーの一人はホースガールのペネロペ・ローウェンスタイン(Vo, Gt)の実兄

―ちなみに、フリコのMVに登場するメンバー以外の人はみんな、シカゴのコミュニティの仲間?

ニコ:そう、あの中に映ってる全員が友達(笑)。まさに身内ノリってやつ。



―仲間たちの共通項だという古き良き時代のUK音楽というのは、具体的にどの辺りを指してるんですか?

ニコ:Hallogallo(フリコなどが属するコミュニティの名前)周辺のバンドでいうなら、ざっくり言うとイギリスのクラシックポップだよね。あるいは、90年代の再ブームのときに出てきたニュートラル・ミルク・ホテルとか、エレファント6界隈のバンドとか、ビートルズ色が全面に出てる感じの。あるいは、リプレイスメンツとか。まあ、リプレイスメンツはアメリカのバンドだけど。

ベイリー:ガイデッド・バイ・ヴォイシズとかも……彼らもアメリカのバンドだっけ?

ニコ:確かそうだったと思うけど……。

―アメリカのバンドですね。ついでに言うと、ニュートラル・ミルク・ホテルも(笑)。

ニコ:そうそう、ニュートラル・ミルク・ホテルはアメリカのバンドだけど、でも昔のイギリスっぽい音っていうか。


HALLOGALLOではシカゴを中心としたDIYアート/音楽シーンの活況を伝えるZINEも刊行。トレードマークは羊。第3号にはフリコ、第8号には名前の由来となったノイ!のミヒャエル・ローターのインタビューを掲載(画像は公式サイトより引用)

―わかります。じゃあ、コミュニティのバンドがいつも演奏してるヴェニューだったり、集まってる場所なりはあったりするんですか?

ニコ:そうだね、徐々に輪が広がってきてるみたいな、DIY的なノリなんだけど。Schubasってパブとか、年齢制限なしで入れるから、そこも貴重なポイントで。

ベイリー:Beat Kitchenなんかも。あそこも年齢制限なしだしね。

ニコ:あと最近だったらMetroも良い! 地元のバンドのライブを中心にやってて。 Thalia Hallも年齢制限なしのイベントをよくやってるし、Empty Bottleもおすすめ。

ベイリー:Sleeping Villageもいいよね。

ニコ:いい!21歳以上じゃないと入れないけど。とりあえず良いハコが山ほどあるよ。


Thalia Hallを会場に、シカゴシーンの活気を収めた2022年のドキュメンタリー「Do You Want Horsegirl or Do You Want the Truth」。当時デビューアルバムを発表したホースガールを筆頭に、ライフガード、フリコ、ポスト・オフィス・ウィンターが出演

―ニューヨークやLAの音楽シーンとの違いって、何か感じます?

ベイリー:シカゴ以外の音楽シーンを経験したことがないからわからないけど、ニューヨークに住んでる友達なんかの話だと、そもそもシーンに入り込むこと自体が難しいっていう話で。横の繋がりがなかなか広がっていかないし、そもそも演奏できる場所を見つけること自体が難しいみたい。その点、シカゴは両手を広げて、「みんなウェルカム!」って感じだもんね。演奏できる場所にも機会にも恵まれてるし、しかも年齢に関係なく開かれてて。それこそ、今言ったSchubasだの、Beat Kitchenだの、まさにそうだし。そういうDIY的なヴェニューがたくさんあって、コロナ前は今よりもっと数があったくらい。コロナが終わって、徐々に復活しつつあるけど。とにかくコミュニティとしての動きが活発で、みんなで音楽を楽しんで盛り上げていこうっていう空気に溢れてるし、気軽に入っていきやすくて。

ニコ:あと、ニューヨークやLAに比べて家賃が圧倒的に安いからね。20代30代の人間がアートや夢を追いかけながら、普通に暮らしていけるんだ。

―もしよければ、聴いておくべきシカゴのバンドをいくつか紹介してください。

ベイリー:フィノム(Finom)ってバンドが日本で今度ライブするんだ、ウィルコのサポートアクトとして。おすすめ!(※ウィルコとのツアーは現在終了、3月13日に長野公演を開催

ニコ:フィノムはものすごく近いところにいるバンド。向こうのほうが少し年上なんだけど、シカゴのアート・ロック界隈ではよく知られた存在で、昔から憧れの先輩って感じ。他にもおすすめしたいバンドがたくさん! 何ならあとでリストにして送るから!

ベイリー:私もそのリスト作りに参加したい!


フリコから後日送られてきたリスト(全22組)の楽曲をまとめたプレイリスト「Chicago's Young Indie Artists, Recommended by Friko」


フィノムはジェフ・トゥウィーディー(ウィルコ)がプロデュースしたニューアルバム『Not God』を5月24日にリリース予定。べイリーが一時期サポートを務めていたが、現在はジェフの息子・スペンサーがドラムを担当

Translated by Ayako Takezawa

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