SKY-HIが語る、いまメッセージソングを歌う理由、 「人間的なもの」への希求

最近Shotaに「早く人間になりたい」ってあんまり言わなくなった

ー「Dream Out Loud」の取材で「今の日本のヒット曲にはペシミスティックなものが多いから、そこには抗いたい」ということを話してくれたじゃないですか。

SKY-HI:まだその感じ続いてますもんね。

ーそのモードが「ヒッピー」にも続いてるなと感じたんですけど、実際そのモードが続いているのか、そこから変化があるのか、そのあたりはいかがですか?

SKY-HI:ちょっと違うのが、より楽曲において荷物を下ろしてる感じはありますね。「Dream Out Loud」のときも意識はしてたけど、よりそれが加速されてる気はします。人間っぽい。ホモサピエンスとして生きる上で、そこからより人間らしくなるためのビジョンとか哲学として、夢とか綺麗事があるっていうこと。最近Shotaに「早く人間になりたい」ってあんまり言わなくなったんですよ。前までずっと言ってたんですけど(笑)、最近あんまり言わなくなったから、ひょっとしたら人間に近づいてるのかもしれないです。

ーそれは意識的にそっちに向かってる?それとも、自然とそうなってきてる?

SKY-HI:どっちなんでしょうね。『八面六臂』くらいから日記というか、フリースタイルというか、そういうのの延長で曲を作ってたけど、「ヒッピー」に関しては完全に反射神経で作ってて。『THE DEBUT』の時点で「初期衝動」まで行った上で、去年のツアーの名前が「BOSSDOM」だったのは提示というか、「切り分けないで欲しいな」みたいなことだったんですよ。皮肉なもんで、「アイドルとかラッパーとか切り分けないで欲しい」って言ってずっとやってきて、最近切り分けないでもらうこと増えたなと思ったら、今度は社長とアーティストで切り分けようとしてくるんですよね。なぜ世間はこんなに俺にラベルを付けるんだと思いながら生きている毎日。本当にね、ラベル貼られすぎですよ。閉店直前のスーパーの肉かって(笑)。



ー「BOSSDOM」だったり、Nissyさんとの「SUPER IDOL」だったりは、あえて自分からラベルを貼ることで、もっと本質に目を向けてほしいという提示の部分があったわけですよね。

SKY-HI:アイドルかラッパーかとかも本当にどうでもいいから、「だったらNissyを呼んで俺たちスーパーアイドルって定義でどうかな?」とか、そういう提示を良くしてきたと思うんですけど、「ヒッピー」に関しては「提示」というよりも、自分が求める方向に近いかな。ヒッピーライフを今心が求めてる。流浪的な意味もそうだけど、どっちかっていうと、ピースとかラブとかユニティみたいなものが今の世の中にあってほしいし、自分にも必要だったりしたので、それで条件反射で出てきたのかなって。



ーコンセプチュアルな提示ではなく、ナチュラルな希求だと。

SKY-HI:正直好きなのは前者のほうなんですよ。「BOSSDOM」にしろ「SUPER IDOL」にしろ、コンセプトやギミックを考えるのめちゃくちゃ好きだし、今までの作品の多くだったり、BE:FIRSTの作品だったりも、そういう性癖の詰め合わせみたいなところがあるんです(笑)。でも「ヒッピー」はスタッフから「ひさびさに明るいの聴きたいですね」っていう意見が出て、やってみようと思ったんだけど、すぐにはアイデアが浮かばなくて。それでBE:FIRSTの他の曲を作ったあとのスタジオの残り1時間で、Sakaiさんの部屋の真ん中にマイク立てて作ったんですよ。今回作曲クレジットにやたら人が多いのはそういう理由で、BE:FIRSTの曲をみんなで作った後の残りの時間で、カルロがギター弾いて、鼻歌で俺とDaisukeが歌って、まとめてSakaiさんがビートを作るみたいな、森の音楽家ですよ、マジで。

ーマイクをキャンプファイアー代わりにみんなで囲んで、みたいな。

SKY-HI:そうそう、ゼルダの伝説のオカリナのあの切り株を囲んでみたいな、本当そんなノリで作って、それもヒッピー的ですね(笑)。

ー「ヒッピー」というキーワードが先にあって、それがコーラスの〈Hip-pi-pop-pi-Hippie〉に繋がったのか、先にこのフレーズが生まれて、そこから「ヒッピー」というタイトルを取ったのか、順番的にはどっちが先だったんですか?

SKY-HI:わかんない、同時進行です。曲のほうが順番としては先だったかもしれないけど、とにかくそのぐらい瞬発力でした。今もうすぐ2月でしょ(取材は1月28日)。ぶっちゃけ今年のツアーで何やりたいとか、このタイミングで何もないんですよ。

ー僕も5月からツアーがあるっていうことだけ聞いてて、詳細はまだ知らないんですけど、実際にまだ未定のことが多いと。

SKY-HI:まだ何もないんですよ。「BOSSDOM」は演出面でやりたいことがいろいろあったんですけど、今はマジでなくて。チャリンコに乗って登場しようかなとか、キックボードがいいかなとか、ホントにそれくらい。

ーBMSGとしての様々な動きに対する、ある種の反作用じゃないけど、他は一つ一つをコンセプチュアルに進めてるからこそ、自分の活動に関してはもっと条件反射的に動きたいということだったりもするのかなと。

SKY-HI:そういうことでもあると思います。よりただの人間になろうとしてるというか、そこに抵抗がなくなってきてる感じ。BE:FIRSTの次のドームタイトルは「Mainstream」からのアナグラムみたいな感じで「Masterplan」で、それは実はデビュー前から決まってて、3年越しのコンセプトライブを完結させるっていう、くっそ痺れるなと思いながら作ってるんです。だからそういうのは大好きなんですけど、そういうのだけにもなりたくないっていうか……これは感覚的な話になっちゃうんですけど、なんかあるんですよ、自分の中で。コンセプトに寄り過ぎるとそれはそれで違うというか、人間であるがゆえに、そういうコンセプトが効いてくるんだと思うんですよね。それが映画に勝てる唯一の方法というか、ドキュメントをファンタスティックにしていくことにしか興味がなくて、そのドキュメント性の担保を自分で勝手にやってるのはあるかもしれない。

—言ってみれば、人間であるっていうこと自体が壮大なコンセプトというか。

SKY-HI:そうなんですよ。結局頑張ってるとドラマが生まれるんで、Coreも俺ももちろんドラマチックな出来事いっぱいあるけど、それは頑張ってたら勝手に生まれたことで、Coreが頑張ってて、俺が頑張ってたから出会っただけ、みたいな。そもそも人間であることに対してのプライドはすごくあるので、何々星人とかでもないし、そこはすごく大事にしたいんだと思う。だからより人間であるとか、もうちょっと駄目な感じを意識的に出そうとしてるところもあって、今日も撮影のときの格好はスウェットだし、起業時と一番違うのはそこかもしれない。起業時は本気度を示すためにスーツを着続ける必要があって、今もTPOだから、バチンコかっこいいスーツは複数着あったり、「ヒッピー」のビデオでも自前のスーツを着てたりするんですけど、社長としての認知とか、正論を言う機会がどうしても増えたがゆえに、ちゃらんぽらんな感じを担保していきたい。人間味がなくなるのが嫌というよりは、人間であることをちゃんとアピールしていきたいっていうのはすごいありそうですね。

ーたぶん今話してくれた感覚は『THE DEBUT』にもあった気がするけど、それがさらに進んでるのかもしれないですね。「ヒッピー」っていうのも、いろんなラベルであり、物質的なものを削ぎ落として、人間回帰する感覚を表している気がするし。

SKY-HI:このままだと幼児化までいきます。おしゃぶりをくわえますよ(笑)。



ー「ヒッピー」では最初のヴァースで過去を振り返っていて、次のヴァースだと痛みや孤独は消えないっていうことを歌ってると思うんですけど、こういうリリックも条件反射的に出てきたもの?

SKY-HI:周りの人に言ってることの気もするし、愚痴の気もするし、一筆書きの悪いところで、混ざっちゃったんですよ。今までは混ざると「ビリジアンじゃないとダメだ」みたいな、「藍色でもスカイブルーでもなくて」みたいな書き方をしてて、改行ひとつとっても5万回チェックするみたいなことをやってたんだけど、「混ざっちゃったけど、まあいいか」みたいなことをだいぶ許容してます。それがこの先どういうふうに転ぶのかはマジでわかんない。ちょっと先に構築性高いアルバムを作りたいなっていうのはずっと思ってて、おりに触れ言ってしまってる気がするんですけど、2年後とかに、40歳になる前に、そういうアルバムを作りたくて、その前にいろいろやっておきたいんですよね。今回明るい曲が書けたから、次あたりラブソングをひさしぶりに作りたいなとか、珍しく思いました。edhiii boiの「青い春」が良すぎて、キュンキュンきちゃって、ラブソングを書きたい気持ちになっちゃったんですよね。


Photo by Takuya Maeda

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE