SKY-HIが語る、いまメッセージソングを歌う理由、 「人間的なもの」への希求

SKY-HI(Photo by Takuya Maeda)

SKY-HIが5月からスタートする全国ツアーに先駆けて、新曲「ヒッピー」を発表した。昨年開催されたアリーナツアー「BOSSDOM」や、Nissyとのコラボレーションによる「SUPER IDOL」が、自分も含めた表現者へのラベリングに対するある種のカウンターだったとするなら、台湾のOZIとコラボした「Dream Out Loud」に続いて、ホーンセクションとともに〈やっぱ愛だって キレイゴトがいいよ 夢に花束を〉と「夢」について歌う「ヒッピー」は、SNSにおいて心を痛めるような出来事が相次ぐ現代に対する、とても真摯なメッセージソングだと言えるだろう。「BMSG創業5年目に、40歳までに次のアルバムを作りたい」というSKY-HIに、現在のモードについて語ってもらった。

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ー「ヒッピー」を聴いてまず印象的だったのが、昨年リリースした「Dream Out Loud(feat. OZI)」に続いて「夢」についてストレートに歌っていることで。1月17日にNovel Coreの武道館公演があって、ひとつの夢を叶えたわけじゃないですか。Xでも感想をつぶやいてたと思うんですけど、あの日Novel Coreが武道館公演を成功させたこと、夢を叶えたことが、今の日高さんにとってはどんな意味があったのか、改めて話してもらえますか。

SKY-HI:かねてから夢には叶う叶わないの前にまず叶え方があると思ってて、要は「適性×努力×運」じゃないですか。運は運でしかないから、どんなダメなバッターでも100打席あったら1回は打つわけで、「適性 ×努力」の分量上げていけば上げていくほど、運がよっぽど悪い人でも、割と夢は叶う可能性があるっていうこと自体はわかってて。で、Coreは一番得難い適性の部分はもうクリアしてたから、マネジメントがする作業は正しい方向の努力と、打席数をただ増やすだけだったので、あんまり大変なことには感じなかったんですよね。Coreが「武道館やりたい」って言ったときに、「よし、武道館に向けて行くぞ!」というよりは、「なるほど、なるほど」みたいな。





ーはじめから夢を叶えるための道筋は見えていたと。

SKY-HI:そうなんです。でもやっぱり、盲信は人を壊すので夢っていう言葉そのものを危険に思う一方で、人間の抱える問題の多くの部分を夢(という概念)が解消する可能性があるとも思うんですよね。卑屈になったり、攻撃的になったり、自虐的になったりすることも夢が解消する可能性があるし、特にメンタルヘルス面において、現代人が抱える闇の大半を夢はクリアにする可能性があると思う。少し雑な物言いになりましたが本当にそう思います。だからこそ、夢の叶え方を訴えていったり、実際に夢が叶う瞬間を増やしていったり、BMSGを起業したときに言ってることが口だけにならないように、フロックにならないようにしたい。その根拠をコアが担っちゃってたところがだいぶあるし、担わせちゃってたから、そのプレッシャーで大変だった時期も知ってるし、それに対する申し訳なさも含め、様々な感情がある中で、Core自身が自分の夢を叶えられるアーティストだということを証明して、さらには世の中に対して、夢を見ることの尊さを提示してくれた。自分にとってもCoreにとってもBMSGにとってもそうだけど、現代社会においても意義深い一夜だったなと思いますね。



ー今世の中で問題になってる誹謗中傷でありその類いのものって、その人自身が自己実現できていないからこそ、大きく言えば夢を叶えられていないからこそ、自分の中で解消されない不満が外側に向いてしまうという構造があると思うから、夢を叶えることの素晴らしさを体現することの社会的な意味はすごく大きいと思います。

SKY-HI:おっしゃる通り、自分が言ってる夢って究極の自己実現というか……いや、もっとちっちゃい自己実現でもある気がするな。3キロ痩せるとか、それも夢じゃないですか(笑)。理想の自分を追うという作業だったり、理想の自分を追ってる人を応援する気持ちだったり、そういったものをもってして夢と呼んでいて、これはすごく人を人たらしめる要素だと思ってるというか、文化的な生命体として必要なマインドセットに「夢を見る」みたいなことがすごく大事だなと思っていて。

ーXではNovel Coreの武道館公演に対して、「あの日の少年に、僕のこれまでの人生全てを肯定してもらった気すらしている」と書かれていましたね。

SKY-HI:そういう大仰な言葉を使い過ぎるのも嫌なんですけど、あの日に関しては運命というか必然性を感じましたね。Coreがうちに来てくれたこと、出会う必然性を強く感じる時間でもありました。〈お前の夢は俺の夢〉って「SOBER ROCK(Remix)」で言ってましたけど、その1個の夢が叶ったのは本当に嬉しかったし、Coreとのアーティスト的距離感の近さを考えるとひとしおですね。自分が知ってるCoreって、大人びた高校生というか……「大人びた」っていうのは綺麗に言ってる気もして、ませた高校生というかね。で、俺は俺で小学生のとき、自分が日本で一番頭がいいと思ってましたもんね(笑)。



ーそれはだいぶませた小学生ですね(笑)。

SKY-HI:でも「ませる」と「誠実じゃない」はまた違うわけで、まっすぐともまた違うけど、ゆがんでるわけでもないし、良い具合にひずんでるくらいじゃないですか(笑)。とにかくCoreは一筋縄じゃいかない高校生ではあって、ビッグマウスみたいなこともよく言われてたし、でも特有の青臭さみたいなのはシンパシーを感じる部分でもあって……最終的に武道館のステージでも綺麗事を言うんですよ。その綺麗事を言ってるときのCoreがあんまりにも綺麗だったので、人間があそこまでになったっていうのはすごく……来ちゃったなあ。人生に責任を持った人の姿になってたもんなあ。一笑に付される綺麗事と、今自分が話している絶対必要だなと思っている綺麗事の一番の差は、そこに責任があるかどうか。武道館のときはまだ22歳だったわけですけど、あの年齢でよくそこまでの人になったなと思うし、本当に嬉しかったですね。


Photo by Takuya Maeda

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