2024年グラミー賞総括:歴史を塗り替えたテイラー・スウィフトと女性たちの大勝利

女性たちの躍進、予期せぬトラブル

主要3部門にノミネートされた8組のうち7組が女性であった時点から自明の通り、2024年のグラミー賞は女性たちのためにあった。テイラー、SZA、フィービー、ヴィクトリア・モネらの活躍に加え、カロルG(『Mañana Será Bonito』で最優秀ムジカ・アーバナ・アルバム)、レイニー・ウィルソン(『Bell Bottom Country』で最優秀カントリー・アルバム賞)、ココ・ジョーンズ(『ICU』で最優秀R&Bパフォーマンス賞)が初受賞している。



ロック部門とオルタナティブ部門では、ボーイジーニアスとパラモアが大躍進。前者は「Not Strong Enough」で最優秀ロック・パフォーマンス賞と最優秀楽曲賞、「The Record」で最優秀オルタナティブ・アルバム賞を受賞。後者は「This is Why」で最優秀ロック・アルバム賞、同アルバムのタイトル曲で最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス賞を受賞した。カイリー・ミノーグは「Padam Padam」で最優秀ポップ・ダンス・レコーディング賞を獲得。20年ぶりのグラミー受賞を果たした。



しかし、その喜びの全てに覆いかぶさるように(予期せぬロサンゼルスの暴風雨という文字通りの形でも)開演前の雲行きが怪しくなった。クリプト・ドット・コム・アリーナの外では、パレスチナへの支援を呼びかけるデモ隊が集まり、会場内ではキラー・マイクがグラミー賞3部門(最優秀ラップ・アルバム賞、最優秀ラップ・ソング賞、最優秀ラップ・パフォーマンス賞)を受賞した数時間後に拘束された。

グラミー賞中継が始まる数分前、キラー・マイクが手錠をかけられて連行される映像がネット上に飛び交った。彼はアリーナ内で第三者と「肉体的な口論」をしたとされ、手錠をかけられて拘束された。ロサンゼルス市警によると、彼はそのあと軽犯罪法違反で逮捕された。



授賞式ではコメディアンのトレバー・ノアが4年連続で司会を務めた。コメディアンであり、元『ザ・デイリー・ショー』の司会者でもある彼は、真のファンのような切実な語り口と、軽く歌いながらもめったに焦らさないジョークに満ちたモノローグで、彼が音楽界でもっとも頼れる「夜の案内人」となった理由を示した。彼は、メリル・ストリープが自分の席に遅れて慌てふためいたとき、自分のモノローグが偶然にもクラッシュしてしまったことに心から大喜びしているように見えたし、オリヴィア・ロドリゴに対しては、彼女が全国放送で「Vampire」を披露するとき「blood sucker」にどんな言葉で韻を踏むつもりなのかと訝しんだ(訳註:原曲では放送禁止用語の「famef*cker」と続くことをネタにしたジョーク)。

アンドレア・ボチェッリが歌う「My Neck, My Back」のAI生成バージョンについての一幕や(「美しかったが、間違っていた」)、ユニバーサル・ミュージックとTikTokとの間に芽生えつつある確執に対する巧妙な皮肉(「これらのアーティスト全員から金をむしり取るなんて恥を知れ! それはSpotifyの仕事だ」)。ノアはテイラーを笑わせるNFLジョークまで披露し、テイラーが言及されるたびにカメラが観客のフットボール選手に切り替わるようにすると約束した(幸いなことに、会場にはラインバッカーから俳優に転身したテリー・クルーズがいた)。


Translated by Rolling Stone Japan

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