安田レイが新作で描いた「愛の形」、10周年を経て刻んだ新たなスタート

─その希望の光が「Ray of Light」(一条の光)ということですね。歌い出しの“The darkness shows me light” というフレーズの視覚的なイメージが鮮烈で、作品の世界にぐいっと引き込まれるような感覚があります。

響はずっと闇の中にいるんですよ。ゴーレムが現れて、日常は奪われていくし、どうしたらゾンビを退治できるのかもわからないし、愛する人は遠くにいるし。そこからシリーズを通して出会いや喪失を重ねていくんですけど、FINALで響を見たときに、すごくたくましくなっているなと思ったんですね。今作では自分よりも大切な娘を守るために戦う響に失礼のないような歌詞にしたくて、「これじゃ足りない。響がミライを思う気持ちはこんなもんじゃない」と思いながら、何回も何回も書き直しました。



─安田さんにはお子さんはいらっしゃいませんよね。そこは想像で補っていった感じでしょうか?

まだ子どもはいないけど、もしいたら自分の命よりも絶対に大事だから、何でもしてしまうだろうな……と想像したのと、去年、大親友が出産したんですよ。その子とミライを重ねて見たので、試写会にお邪魔したとき、涙が止まらなくなっちゃいました。これが愛の形だな、と思って。

前回のインタビューで「語尾フェチ」とおっしゃっていましたが、例えば “どんな明日が待っていようとも” の “も” のところなど、苦しそうにメロディからアウトしていくことで切実さを表現していますよね。

やっちゃうんですよね~。けっこうそこは感覚的なので、後からハモを入れたりするときに大変なんですよ(笑)。自分でやっていることなのに「あれ? わたしこんな複雑な歌い方したのか!」と思って。という現象が今回のEPの中で3回は起きていますね。3回っていうか全曲(笑)。もっと計算して歌えたらいいのになと思うんですけど、やっぱりできないですね。瞬間的に生まれた感覚をそのまま歌に乗せているので。

─1番のいわゆるBメロ、 “正しい事だけ選んでは” 以下の3行も、語尾フェチぶりが発揮されているというか、印象的な歌い方でした。

そうですね……語尾はやっぱり大事にしたいなと思います。語尾でニュアンスが全然変わると思うんですよね。息の残し方とか捨て方とか。そこは感覚ですけど、結局、苦しさをいちばん表現できるのって息だったりすると思うので、そのニュアンスが伝わっていたらうれしいですね。

─この曲でもうひとつ印象的だったのが2番の “ひび割れてる迷図” という言葉です。迷路は英語でメイズ(Maze)だから、ということで漢字に置き換えたバイリンガル的な言葉遊びかと思ったんですが、検索したらパズルやゲームが好きな人たちの間では使われているみたいですね。

そうなんですね! 英語と日本語の意味を重ねたのもありますけど、ここ1、2年くらい、いい音の響きをもっと歌詞に入れていきたいなって思っているんです。ずっと意味ばかりを考えていて音をあまり意識できていなかったけど、韻とか含めて、音が楽しい言葉を自分の曲に入れたいなと思って。それで “迷図” って入れてみたんですけど、スタッフさんからも「これ、どういうこと?」と聞かれました(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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